
フィギュアスケート四大陸選手権2025レビュー・男子シングル編
【大躍進中のカザフスタンの20歳が初優勝】
韓国・ソウルで開催されたフィギュアスケートの四大陸選手権。2月20日にショートプログラム(SP)、22日にフリーが行なわれた男子シングルは、今季大躍進中の20歳、ミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)が初優勝を果たした。
シャイドロフは、SP首位で迎えたフリーでは冒頭のトリプルアクセル+1オイラー+4回転サルコウの大技をみごとに決め、4回転4本の構成をノーミスで滑って今季世界4位の285.10点とした。
SPは4位発進だったチャ・ジュンファン(韓国)も、フリーでは4回転トーループが2回転になるミスのほかは完璧に滑って265.02点で2位。3月に開催される世界選手権のメダル争いに加わってきそうな勢いを見せている。
だが一方の日本勢は、友野一希(第一住建グループ)の4位が最高で、2016年以来、8大会ぶり(※2021年はコロナ禍のため中止)にメダルを逃す残念な結果になった。
|
|
なかでも2023年大会に次ぐ2度目の優勝を期待された三浦佳生(オリエンタルバイオ/明治大)が万全な状態で出場できなかったことが大きい。
【ケガを抱えながら挑んだ三浦佳生】
今季初戦のGPシリーズ・スケートアメリカでは278.67点を出していた三浦。昨年12月の全日本選手権は8位に終わって世界選手権代表は逃したが、復調も期待されて四大陸代表には選出された。だが、全日本のあとに左太もも肉離れを再発して1月の冬季ワールドユニバーシティゲームズを欠場した。
三浦は今回の四大陸について「ケガしたところは痛くないとはいえ、ジャンプの練習も(大会の)1週間前からだし、足の筋肉量も落ちて細くなっているので、まずは慎重にやりながら頑張りたいです」と状況を説明。出場の目標は「来季へ向けて世界ランキングポイントを少しでも多く獲得しておきたい」というものだった。
しかし、やはり左足に大きく負担がかかるトーループを跳べないのは痛かった。SPでは、4回転はサルコウだけにして、後半に3回転フリップ+3回転ループを入れて得点を稼ぐ構成。最初の4回転サルコウは「6分間練習ではいい練習ができていなかったから、着氷できたときには少し驚きました」と言うように、軸が斜めになったがなんとか耐えた。
次のトリプルアクセルはしっかりと決め、キャメルスピンも勢いのある滑りで立て直したように見えたが、後半の連続ジャンプは3回転フリップで着氷を少し乱し、余裕がない状態で付けた3回転ループはダウングレードで転倒。78.80点の5位発進となってしまった。
|
|
それでもSP3位の友野と4位のチャとはそれぞれ1.04点差と0.44点差で、2位のジミー・マ(アメリカ)とも4.12点差。三浦は、フリーの4回転をサルコウ2本にする予定だったが、ノーミスなら表彰台圏内まで盛り返せる得点差だった。
試合前は、「ケガもあるので高い結果は望めないと思います」と話し、SP後もフリーに向けて「試合を楽しみながらいい演技ができればいい」と話していただけに、リラックスした気持ちで臨めば表彰台の可能性もあるように思えた。
【筋肉を取り戻し、心構えを鍛えたい】
だが、そのフリーでは最初の4回転サルコウ+3回転トーループはしっかり決めながらも、次の4回転サルコウを転倒。トリプルを狙ったアクセルはダブルになった。さらにトリプルアクセルからの3連続ジャンプは単発になり、ミスが続いた。
それでも後半には執念を感じさせた。3回転フリップでステップアウトしながら最後の2回転サルコウはカウントされなかったが、オイラーを入れて3連続ジャンプにしようとトライし、最後の3回転ループにもダブルアクセルをつけてコンビネーションジャンプを3本にするリカバリーを見せた。
演技後は精も根も尽き果てたように、疲労しきった表情を見せた三浦。得点は151.68点で、合計は230.48点。総合順位は6位に落としたが、三浦はこう語って前を向いた。
|
|
「多くのことを学べたと思うし、本当に貴重な経験でした。来季は五輪シーズンなのでここにいることに本当に意味を感じている。今後は筋肉を取り戻し、もっと冷静になれるように心構えを鍛えていきたいです」
【上位2選手に見習うべき心身のタフさ】
一方、2022年大会以来2度目の表彰台の可能性もあった友野は、「ジャンプの感覚もよくなり、体も動くようになった」と意気込んで臨んだ大会だったが、フリーでは前半にミスが出てしまった。
だが、4回転トーループは2回転トーループをつける連続ジャンプとし、4回転サルコウはステップアウトしながらも1.52点の減点にとどめた。そしてトリプルアクセル2本を含む2本のコンビネーションジャンプと単発のジャンプをきっちり決め、スピンとステップもレベル4と取りこぼさない滑りだった。
友野の合計242.08点。チャに逆転されて4位で表彰台は逃したが、フリーの162.24点とも合計得点は、自身のシーズンベストという結果だった。
合計234.93点で5位になった壷井達也は、代表に選出されている世界選手権へ向け、力試しの大会だったが、「いつもより緊張していて、大会までのスタミナが長く続かなかったように感じます」と、初の大舞台の厳しさを味わった。
優勝したシャイドロフと2位のチャは、冬季アジア大会から中6日での連戦。中国から韓国と時差がほぼないとはいえ、体と精神のタフさは見習わなくてはいけないものはあるだろう。9年ぶりに表彰台を逃した以上に、それが日本勢の課題となってくるはずだ。