画像提供:マイナビニュース鉄道総合研究所(鉄道総研)とJR東日本は25日、中央本線の日野〜豊田間にて、超電導送電による営業列車への電力供給実証試験を3月から開始すると発表した。中央本線の下り線に超電導き電システムを接続し、日野駅から八王子方面へ向かう営業列車に超電導ケーブルで電気を送る。
鉄道総研は2007年から超電導き電システムの開発に取り組んでおり、これまで研究所内で車両走行試験を行ったほか、中央本線沿いの日野土木実験所内に超電導き電システムを試験敷設し、送電試験を進めてきた。具体的には、夜間帯に車庫回線へ接続して補機電力に送電する試験(2017年度)、夜間帯の営業回線へ接続し、試験列車(1編成)に駆動電力を送電する試験(2019年度)を段階的に実施。それぞれにおける電圧降下抑制などの機能を確認するとともに、営業線での運用に適したシステムへの改良を進めてきたという。
今回の実証試験は、営業ダイヤに応じた複数の営業列車を動かす際に必要な電力の供給や、ブレーキをかけたときに生じる電力(回生電力)を含む複合した電力を超電導ケーブルで送るなど、機能の実証を目的とした試験を行い、超電導き電システムの課題を抽出するとしている。
超電導き電システムは、ある一定の温度以下で電気抵抗がゼロとなる超電導材料を素材に用いた超電導ケーブルと、その冷却装置から構成され、変電所から送り出した電力の損失を抑制して車両へ送ることが可能だという。変電所から物理的に離れるほど電圧が下がってしまう「電圧降下」を抑制することもでき、エネルギー損失の削減や回生電力の有効活用が期待できるほか、将来的には鉄道路線沿いに設置されている変電所の集約化を図ることができるとしている。(佐々木康弘)