画像提供:マイナビニュース国際オリンピック委員会(IOC)は2025年2月20日、TCLとの2032年までのワールドワイド・オリンピックパートナーシップを発表しました。TCLは家庭用オーディオ・ビジュアル機器と家電製品のカテゴリーで、オリンピック・パラリンピックの公式パートナーとなります。
2008年の夏季オリンピックには「ウォーターキューブ」、2022年の冬季オリンピックでは「アイスキューブ」として競技会が行われた会場で行われた発表会と調印式が行われました。
○■IOCとTCL、ワールドワイド・オリンピックパートナーシップ発表
今回のパートナーシップについてIOCのトーマス・バッハ会長は次のようにコメントしました。
「IOCは、テレビおよび家庭用品業界の世界的リーダーであるTCL社との新たなパートナーシップを発表できることをうれしく思います。TCLは、世界中のスポーツを支援してきた長い歴史があり、オリンピックは最も偉大で、最も感動的な世界的スポーツの舞台であることから、偉大さを鼓舞するという野心を新たな高みへと導こうとしています」(バッハ会長)
TCLの創業者兼会長である李東生氏は次のようにコメントしました。
「ワールドワイド・オリンピック/パラリンピック・パートナーになれたことを光栄に思います。世界をリードするテクノロジー・ブランドとして、TCLは常に『Inspire Greatness(偉大さを鼓舞する)』に努めてきました。オリンピックは世界中の何十億という人々に感動を与えます。このパートナーシップを通じて、TCLの多様なイノベーションはオリンピックを支援し、世界中の視聴者に卓越した体験を提供します。TCLは今後も企業の社会的責任を果たし、オリンピックの持続可能な開発目標を支援し、より良い未来を創造していきます」(李東生会長)
○■40年近くにわたってパートナーを務めたパナソニックから“世代交代”
オリンピックのパートナーシップは4段階に分かれており、最高位の「ワールドワイド・オリンピックパートナー」はIOCと直接契約します。開催国の組織委員会と契約する「ゴールドパートナー」や「オフィシャルパートナー」、「オフィシャルサポーター」などと違い、1業種1社に限定するのが原則です。
テレビなどの映像・音響機器は1987年からパナソニックがワールドワイド・オリンピックパートナーを務めており、2017年には家電製品なども対象に加わりました。2024年末をもってパナソニックがワールドワイド・オリンピックパートナーを降りたため、今回のパートナーシップにつながったというわけです。
TCLは2009年にCBA(中国バスケットボール協会)とバスケットボール中国代表チームのオフィシャルパートナーになったのを皮切りに、2016年にはNBA(米バスケットボール協会)のミネソタ・ティンバーウルブスの公式テレビとして採用。2018年にはFIBA(国際バスケットボール連盟)とのグローバルパートナーシップを締結し、2023年にはTCLアメリカがNFL(米アメリカンフットボールリーグ)の公式パートナーになるなど、幅広くスポーツ支援を行っています。
Counterpoint Researchの調べによると、2024年第3四半期の世界テレビ出荷台数シェアは1位がサムスン電子(約15%)、2位がハイセンス(約12%)、3位がTCL(約12%)となっています。BCNの調べによると、日本国内のテレビ出荷台数シェアは1位がハイセンス傘下のTVSレグザ(約25.4%)、2位がシャープ(約20.6%)、3位がハイセンス(約15.7%)、4位がTCL(約9.7%)、5位がソニー(約9.6%)、6位がパナソニック(約8.8%)と続きます。グローバル市場のみならず、日本市場においても中国メーカーが大きな存在感を示していることがよく分かります。
ワールドワイド・オリンピックパートナーになることでどれだけブランド価値が高まるのかについては、さまざまな議論があります。巨額のスポンサー料が売り上げやブランド価値の向上につながらないと判断したパナソニックに対し、TCLはそこに大きな価値を見いだしたのでしょう。
TCLは日本においてテレビ以外の製品をほとんど展開していませんが、海外では生活家電を含めて幅広いカテゴリーの製品を製造販売しています。テレビが売れてブランド認知度が上がったあかつきには、家電製品も日本で販売されるようになるのかもしれません。
安蔵靖志 あんぞうやすし IT・家電ジャーナリスト 家電製品総合アドバイザー、スマートマスター。AllAbout デジタル・家電ガイド。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、テレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。 この著者の記事一覧はこちら(安蔵靖志)