1988年組の坂本勇人・田中将大 名球会選手たちの「37歳シーズン」を振り返る

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2025年02月27日 17:46  ベースボールキング

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 2025年春、坂本勇人と田中将大のプロ19年目のシーズンが始まった。

 ともに高卒ドラフト1位でのプロ入り。いわば彼らは大豊作の1988年生まれの“ハンカチ世代”(懐かしい)において、世代のトップランナーでもあった。少年時代、昆陽里タイガースに所属していた坂本は小学4年生から両打ちに挑戦するも、6年生になり、同じチームの捕手・田中が右打席から校舎の2階まで打球を飛ばすのを目の当たりにして、負けたくないと右打ちに専念することを決めたという。あれから30年近くが経ち、彼らの野球人生は再び巨人軍で交差することになる。

 昨季の坂本は109試合で打率.238、7本塁打、34打点、OPS.613とレギュラー定着後自己ワーストの成績に終わった。遊撃での出場はなく、守備機会はすべて三塁手。自軍は4年ぶりのリーグ優勝を飾るも、「岡本和真・吉川尚輝のチーム」へと世代交代を強く印象付けるペナントレースだった。そして田中も昨季は1軍でわずか1登板。プロ入り以来初めて勝ち星なしに終わり、オフには楽天を去ることを自ら決意し、自由契約となり巨人へ移籍した。

 坂本は88年12月生まれ、田中は88年11月生まれで今季がともに36歳から37歳になるシーズンである。気がつけば、彼らも大ベテランの領域に突入しつつあるわけだが、今回は過去の名球会入り選手たちの「37歳シーズン」の成績を振り返ってみよう(所属球団は37歳当時)。時代も違えばタイプも異なる選手たちでも、そこから「37歳のリアル」が見えてくるはずだ。


◆ 名球会入り選手たちの「37歳シーズン」

王貞治(1977年・巨人)130試合 打率.324・50本塁打・124打点
落合博満(1990年・中日)131試合 打率.290・34本塁打・102打点
金本知憲(2005年・阪神)146試合 打率.327・40本塁打・125打点

 いきなりレジェンドクラスの大打者3人。77年9月3日に世界新記録の通算756号を放った王は、フル出場で自身3度目の50本塁打を記録。124打点で二冠を獲得しており、驚異のOPS.1.183という球界最強スラッガーぶりは健在だった。90年の落合も本塁打と打点の二冠王に輝き、最高出塁率(.416)も獲得。史上初の両リーグ本塁打王を達成している。05年の金本は連続フルイニング出場を継続しながら自身初の40発の大台到達。125打点もキャリアハイである。凄い、皆37歳にして全盛期バリバリ。この企画の意味を根本から揺るがす衰え知らずの打棒だ。彼らは規格外すぎてあまり参考にならないから…というエクスキューズで次の遊撃手枠にいこう。

野村謙二郎(2003年・広島)94試合・打率.274・5本塁打・32打点
石井琢朗(2007年・横浜)108試合 打率.275・2本塁打・13打点
宮本慎也(2007年・ヤクルト)131試合 打率.300・5本塁打・39打点
松井稼頭央(2012年・楽天)106試合 打率.266・9本塁打・43打点
鳥谷敬(2018年・阪神)121試合 打率.232・1本塁打・22打点

 坂本と同じくキャリアのほとんどを遊撃手として過ごした一流選手たちも、年齢には勝てず故障も多くなり、それぞれ出場機会を減らしたり、別ポジションでの起用が増えている。若い頃は俊足で鳴らした元盗塁王の選手も、野村が3盗塁、主に遊撃で出場していた石井も6盗塁とさすがに脚力の衰えは隠せないが、そんな中で松井の14盗塁が光る。しかし、37歳でショートを守り、打率3割をクリアした宮本でさえ、翌年途中から三塁転向。鳥谷は38歳の翌19年限りで阪神を退団した。


◆ 巨人所属時に2000安打を記録した大打者も…

長嶋茂雄(1973年・巨人)127試合 打率.269・20本塁打・76打点
清原和博(2004年・巨人)40試合 打率.228・12本塁打・27打点
小笠原道大(2010年・巨人)137試合 打率・308・34本塁打・90打点
阿部慎之助(2016年・巨人)91試合 打率.310・12本塁打・52打点

 巨人所属時に2000安打を放った先輩たちの多くも、それぞれ全盛期から大きく成績を落とした。川上哲治監督からミスターへの引退勧告。堀内恒夫監督と番長・清原の確執(ハイタッチ拒否事件は翌年)……と2000安打を記録した大打者の晩年は監督からしても扱いが難しいのも事実だ。そんな中、ガッツ小笠原は巨人移籍後4年連続で打率3割・30本塁打・90打点をクリアしたが、翌11年に統一球の影響もあり、わずか5本塁打に終わった。そして、自身の37歳時は捕手復帰を目指すも肩の故障に泣き、主に一塁手として91試合の出場だった阿部監督が、指揮官となりベテラン坂本をどう起用するのか注目である。

 なお、MLB所属選手になるが、参考までにシアトル・マリナーズのイチローが、最後の年間200安打を放ったのは2010年の37歳シーズンである。


◆ 現役投手のNPB勝利ランキング上位3名の37歳シーズン

 近年はハードルが上がっている投手の通算200勝。21世紀に入ってからの達成者は工藤公康、山本昌。そして日米通算の野茂英雄、黒田博樹、ダルビッシュ有も含めてわずか5名しかいない。彼らメジャー組は、37歳シーズンをNPBでプレーしていない(黒田の広島復帰は2015年の40歳シーズン)。

工藤公康(2000年・巨人)21試合 12勝5敗 防御率3.11
山本昌(2002年・中日)21試合 7勝6敗 防御率3.96

 工藤は巨人移籍1年目で長嶋巨人の日本一に貢献した。ちなみに巨人在籍時の2004年8月17日のヤクルト戦(東京ドーム)で200勝を達成。この試合、工藤は自らのバットでプロ初アーチを放った。山本昌の37歳シーズンは不調で中継ぎ登板も8試合あったが、翌03年から引退までに通算68勝を積み上げている。参考までに現役投手のNPB勝利ランキング上位3名の37歳シーズンも見てみよう。

石川雅規(2017年・ヤクルト)23試合 4勝14敗 防御率5.11
岸孝之(2021年・楽天)25試合 9勝10敗 防御率3.44
涌井秀章(2023年・中日)21試合 5勝13敗 防御率3.97

 現在通算186勝の石川は37歳シーズンに大きく負け越すも、18年7勝6敗、19年8勝6敗と30代後半で盛り返した。通算165勝の岸は37歳シーズンに3年ぶりに規定投球回に到達。通算162勝の涌井は中日移籍1年目で自己ワーストの13敗を喫するも、年間21試合に先発登板している。

 もう若い頃のようにはいかない。だが、まだ終わったわけではない。そんな37歳の男たちのリアル———。36歳から37歳になる今季、坂本は通算2500安打まであと85本、田中は日米通算200勝まであと3勝で迎える。振り返れば1997年の開幕第3戦、右肘手術から661日ぶりの復帰登板の桑田真澄と巨人移籍後初アーチを放った清原和博の“KKコンビ″がともに本拠地のお立ち台に上がった。あの夜は、清原がファンに巨人の一員として迎え入れられた儀式のようでもあった。果たして、2025年の東京ドームで、坂本・田中のお立ち台共演が見られるのだろうか。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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