表彰式廃止の理由/テストより10キロ遅い/LMGT3の音量制限etc.【WECカタール水曜Topics】

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2025年02月27日 18:10  AUTOSPORT web

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007号車アストンマーティン・ヴァルキリー(アストンマーティンTHORチーム) 2025年WEC第1戦カタール
 2月26日、WEC世界耐久選手権2025年シーズンが中東のカタールで開幕した。今年もシーズンのオープニング・イベントを務める『カタール1812km』のレースウイーク初日は、各90分のフリープラクティスが行われ、初回は51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)が、2回目は12号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・ハーツ・チーム・JOTA)がそれぞれトップタイムを記録している。

 そんなWEC開幕戦の舞台となっているルサイル・インターナショナル・サーキットのパドックから、主要トピックをお届けする。

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 キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAのアレックス・リン(12号車キャデラック)が金曜のFP2でマークしたベストタイム1分39秒601は、先週のプロローグ・テストで20号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームWRT)のロビン・フラインスによって記録された1分38秒971というタイムには及ばなかった。

 プロローグに比べてラップタイムが遅い理由のひとつとして風の強いコンディションが挙げられる。水曜日の最高速度は先週の2日間のテストで記録された数値より10km/hほど低かった。

 走行初日のコンディションについて、BMWワークスドライバーのラファエル・マルチェッロはSportscar365に次のように語った。「向かい風だったためストレートスピードがかなり落ちた。直線では約10km/h遅くなったと思う。7速ギアはほとんど使わない感じだったよ」

 スピード・トラップ・データによると、マルチェッロの15号車BMW MハイブリッドV8は先週、僚友ドリス・ファントールのドライブにより305.9km/hをマークしてたが、FP1では295.9km/hに留まった。ちなみに51号車フェラーリはプロローグで312.1km/hを記録。FP1では300km/hちょうどだった。

 キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAは今年、アメリカのライセンスで走行している。これはチームのハイパーカーエントリーがイギリス国旗からアメリカ国旗に切り替えられたことを意味する。キャデラックの広報担当者はSportscar365に対し、この変更はアメリカのメーカーとメインスポンサーでアメリカに本社を置くハーツを念頭に置いて行われたと認めた。

■以前は全車に掲出も、すでに義務ではない

 ハート・オブ・レーシング・チーム(HoR)が走らせるヴァルキリーのペアもフロントフェンダーにアメリカ国旗を掲げているが、カタール1812kmのエントリーリストを確認するとアストンマーティンTHORチームはイギリスのライセンスでレースを行っている。この新しいWECチームはシルバーストン近郊のワークショップで運営されており、マルチマチックのジョージ・ハワード・チャペルが指揮を執っている。

 FIA国際自動車連盟のスポークスマンはSportscar365に対し、マシンにライセンス国の国旗を掲げることはもはや義務ではないと明言した。

 HoRのチーム代表であるイアン・ジェームスは、チームには3台のヴァルキリー・レースカーに加えて2台の完全なスペアカーがあり、デビューイヤーである今年はWECとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のイベントにそれぞれ1台のスペアカーが配備されていることを認めた。

 ジェームスはSportscar365に次のように語った。「完全に準備が整うことは決してないが、スペアパーツやサポートを準備するために最善を尽くしたと感じている。その点については満足している」

 同チームは、来月のIMSA第2戦セブリング12時間レースにフルシーズンドライバーのロス・ガンとロマン・デ・アンジェリスとともに出場する3人目のドライバーをまだ発表していない。アレックス・リベラスとトム・ギャンブルはセブリングで最近行われたIMSA公式テストでヴァルキリーをドライブしたが、ギャンブルはチームのアストンマーティン・バンテージAMR GT3エボによるGTDエントリーにすでに名を連ねている。

 WEC主催者のLMEMの広報担当者は今シーズン、FIAワールドカップ・フォー・チームではレース後の暫定表彰式が行われないことをSportscar365に確認した。これは今季のエントリー台数が昨年の計4台から、83号車フェラーリ(AFコルセ)と99号車ポルシェ963(プロトン・コンペティション)の2台に減少したためだ。

 ニール・ジャニは、99号車ポルシェのラインアップに、ニコ・ピノとニコ・バローネというふたりの新人を迎えることに何の不安もないと語った。スイス人ドライバーは「ニコ(・ピノ)のことは2023年から知っていた。(ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズを戦う)デュケーヌのLMP2で一緒に素晴らしいシーズンを過ごした」とSportscar365に語った。

「彼はデイトナでも素晴らしい仕事をした。ポルシェ963での最初のスティントでは、ケビン・エストーレを従えながら2番手を走っていたので、これ以上のプレッシャーはなかっただろう! 彼はきっとうまくやっていけると確信している」

■2024年開幕戦の再現は望み薄

 プジョーの広報担当者は、ピノはもはやステランティスのジュニアドライバーではないことをSportscar365に確認した。

 プジョーは今月新しいCEO(最高経営責任者)を迎え、引退したリンダ・ジャクソンの後任としてアラン・ファベイがその役職を引き継ぐ。このことでWECチームに何か変化があったかとSportscar365に問われたテクニカルディレクターのオリビエ・ジャンソニは、「今のところ変化はない。プジョーは引き続きこのプロジェクトに全力で取り組んでおり、ブランドから多大な支援を受けている」と答えた。

 ジャンソニは、昨年のルサイルでプジョーがリアウイングのない旧型9X8の最後のレースで見せた好走は、今年の見通しとは「無関係」と評した。「クルマは空力的に大きく異なり、タイヤも異なるので、多かれ少なかれ関係ないと思う」と同氏は語った。「メーカー間のランキングが昨年と大きく異なっていても驚きはない」

 同様に、ポルシェLMDhファクトリーディレクターのウルス・クラトルは、ハイパーカークラスでの競争が激化しているため、カタールでふたたびポルシェが表彰台を独占する可能性は低いと述べた。彼はSportscar365に次のように語っている。「昨年ここで直面した競争よりも、状況ははるかに激しい。もうここでワン・ツー・スリーを占めることは期待していない。もしそれができれば私たちは受け入れるが、それが実現するかどうかは疑問だ」

 クラトルは、プロローグで6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)を襲ったエンジントラブルは「理解された問題」であり、今週はいずれの963にも同様の「ドラマはない」と確認した。問題が起きたパワープラントは日曜日にドイツに空輸され、ヴァイザッハで完全な分析が行われた。そこでは現地で予想された理論が正しいことが証明された。

 ポルシェとBMWがIMSA開幕戦デイトナ24時間のレース前に懸念していた、LMDhパワートレインの仕様に関する問題は結局、杞憂に終わったかたちとなったが、クラトルによると「微調整」が行われたという。同氏は、ハイブリッドパートナーと協力して解決策を探った結果、ハイブリッドやバッテリーシステムの仕様変更はなかったと認めた。「問題に対処できたと確信している」

 またクラトルは、ポルシェがル・マン24時間に投じるポルシェ・ペンスキーの3台目をドライブする第3ドライバーの決定について、「舞台裏で進展があった」と述べながらも詳細は明かさなかった。「それほど長くは掛からないが、サードドライバーを決めなければならない」と彼は語った。

 Sportscar365では、フォーミュラEチャンピオンのパスカル・ウェーレインが、ニック・タンディとフェリペ・ナッセに続く最有力候補であると理解している。

■前年から決まっていた音量低減のルール

 83号車フェラーリを走らせるAFコルセは今シーズン、チームWRTから移籍してきたヨナス・バンパハテンベーケという新しいレースエンジニアを迎えた。ロバート・クビサは新しいエンジニアについて次のように語っている。「WRT(LMP2)でレースをしていた頃から彼のことはよく知っているが、彼はいつも姉妹車の仕事をしていた」

 バンパハテンベーケは以前、ホルヘ・セガーズの後任としてDTMドイツ・ツーリングカー選手権でAFコルセと仕事をし、2021年には今年レッドブルF1ドライバーとなったリアム・ローソンのクルマを担当していた。

 ACOフランス西部自動車クラブで競技ディレクターを務めるティエリー・ブーベは、LMGT3クラスの音量抑制は昨年新設された同クラスの当初のレギュレーションで導入され、2025年シーズンに向けてレベルを下げることが定められていたことを明らかにした。

 ブーベは次のように述べた。「騒音レベルはこれまでも問題となってきたが、トラックではますます問題になっている。スパ・フランコルシャンのようなコースでは、騒音レベルを超過できる日数に限りがあるため、その点に配慮したいと考えていた。耐久委員会もその点に配慮するよう求めていた」

 また同氏は、次世代のLMP2カーには騒音低減策が講じられると述べた。「LMP3についても検討した」とブーベは付け加えている。

『カタール1812km』の最終プラクティスは27日木曜12時(日本時間18時)から行われる。予選は17時(日本時間23時)開始予定だ。日没は現地17時33分で、LMGT3のハイパーポールの終了後から17時40分に始まるハイパーカー予選のインターバルの間となっている。

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