【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】ちょっとチクッとしますよ

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2025年02月27日 18:20  OVO [オーヴォ]

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【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】医療者からの声かけ〜ちょっとチクッとしますよ

2025年2月26日=2,152
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算

▽骨を強くする注射

 2024年11月の腰骨・第1腰椎骨折から4カ月近くたった。痛みはだいぶ減ったとは言えゼロとはならず、まだまだ続いている。当然「よろい」装着の毎日だ。抗がん剤治療中のがん患者であるゆえ、外へ出て日光に浴びながら運動など夢のまた夢。骨はもろくもなっている上に治りも良くはないんだろう。仕方ない。何はともあれ、これまでの検査では、がんの骨転移はなさそう、これだけで十分ありがたい。うれしい。

 あっそうそう今回の件で、骨密度も年齢に比べて下回っていることが判明した。という訳で骨を強くする注射を受けている。肩近くの二の腕に打つ皮下注射で、月に一度。これが痛い。何がって・・・懐と皮膚が。

▽懐が痛い

 まず懐、もちろんこれは銭の話。なんせ1本2万5千円ほどする。これを2本打つ。計5万円なり。国民健康保険のわたくしは3割負担のため、月に1万5千円が普段のがん診療代(治療費、検査費など)に上乗せされている。つまり、いま話題になっている高額療養費制度の恩恵に浴するひとりだ。今年2025年8月以降はどうなるのかドキドキしながら、いまを生きている。どうなることやら。おいらが決められるものでもなく心配してもキリがない。キリのないことは・・・ほっとくに限る。それでもお上の皆さん、温情ある沙汰を切に何とぞよろしくお願い申し上げます。

▽皮膚が痛い

 次に皮膚。これが痛いのなんのって。皮膚に打つ皮下注射は静脈に入れる血管注射とは違って通常、その量が少ない。血管の中ほどには入らないから。だいたい一回あたり1ml未満だろうか。ところがわが救世主であるこの皮下注射は、容量オーバーの1本1.17ml。それが2本もある。

 左右の二の腕を医療スタッフに差し出す。ここで、

「ちょっとチクッとしますよぉ」

 今から行くぞってまさにその時、医療スタッフが温かく声をかけてくれる。確かにこれで患者が体験する痛みは少なからず和らげられているんやろう。うん、そう信じたい。私も医療者としてこんな場面には必ず相手に掛けていた言葉だ。でも患者の立場になると、やっぱり痛いものは痛い。それも「ちょっと」どころやない、かなり痛い。


▽声がけの検証

 ここでふと思った。患者に声をかける、かけないで与える痛みに差が生じるのか。さらに言えば、声をかける場合、言葉の中身で違いは出るのか。

例えば、
(1) ちょっとチクッとしますよぉ、ちょっと痛いですよぉ
 できれば口調も柔らかく丁寧で、さらにあったかく
(2) むちゃくちゃ痛いですよぉ
 前もって最大限の覚悟をさせておけば、痛みを軽く感じるようになるのでは
(3) 何も言わず言葉を一切かけず
 沈着冷静と言えば聞こえはいい。たとえ仏頂面と受取られようとも

 これらは何も注射の際に限らない。臨床現場で行われるさまざまな医療行為にも当てはめられよう。研究テーマとしてやってみようか・・・いやいや今度生まれ変わったらにしよう。いまはがんを生きることで精いっぱいやから。

 わがユーチューブらいぶ配信、こちらもしぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、どこかでお気づきの際にはお付き合いくださいな。ご登録も大歓迎。

 応援してもらえると生きる力になります。引き続きごひいきのほど何とぞよろしくお願い申し上げまぁす。

(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)

おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、2022年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。

このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

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