岩手県大船渡市の山林火災は発生から丸1日たった27日も延焼し、終息のめどは立たない。現場付近は14年前の東日本大震災の津波でも甚大な被害が出た。生活再建に取り組んできた住民は再び、大規模な災害に見舞われ、先行きの見通せない事態に不安や戸惑いを隠せずにいる。
「何も考える余裕はなく、このままでは駄目だと思った」。避難所となった大船渡市立越喜来(おきらい)小に身を寄せた女性(82)は、恐怖に震えながら自宅から避難した状況をこう振り返った。
山あいに立つ自宅の茶の間からは杉山が見える。26日午後、そこから煙が上がり、白かった煙は瞬く間に黒くなり、炎が見えた。炎の赤色と煙の白色が交互に茶の間を照らし、長男の運転する車で避難した。
山林火災が確認された同市内の赤崎町と三陸町綾里(りょうり)は震災で85人が犠牲となり、建物被害は約1250棟に上った。女性の自宅は三陸町綾里の石浜地区にあり、津波で大規模半壊となった。家業だった漁業は資材が流され、廃業。夫とは5年ほど前に死別し、60代の長男と2人で生活を再建してきた中、山林火災で被災したという。
女性が人づてに聞いた限りでは、自宅は外観上、原形をとどめているようだ。ただ、住み続けられるかは分からない。「やっと普通並みの生活になったと思ったのに……参ってしまう」とため息をもらした。
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避難所では、テレビニュースで付近の映像が流れると、住民らが食い入るように画面を見つめていた。ここで一夜を明かした保育士の女性(50)は「一睡もできなかった。娘の同級生の家は焼けてしまった」と疲れ切った様子で話した。【釣田祐喜、奥田伸一】
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