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妻の死をきっかけに、親子で予防医療のクリニックを開こうと歩み出した男性がいる。金属切削加工などを手がける会社社長の仲西大さん(50)は4月から駒沢大(東京都世田谷区)の学生として、放射線技師の国家資格取得を目指す。都内の医大で医師を目指す娘2人とともに「病気で家族を亡くす人が一人でも減るように」と夢を描く。
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2023年6月25日未明、島根県松江市内の自宅で目を覚ますと、妻のゆかりさん=当時(48)=が意識不明で倒れていた。救急車が到着するまで30分にわたり救命措置を続けたが、病院搬送後も心臓が動くことはなかった。
院内での救命措置の最中、都内にいる娘2人と電話をつなぎ、3人で「救命措置をやめてください」と医師に告げた。死因はくも膜下出血。前々日は家族4人で会ったばかりだった。
「予防医療をやりたい」。しばらくして進路選択を迎えた娘が切り出した。娘2人はクリニックの開業を思い描き、マネジメントや運営サポートを経営の知識を持つ仲西さんに依頼した。
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さらに心を動かされたのは「放射線技師を取れる大学に入ってみたら」という娘たちの提案。「母親のように突如として亡くなってしまう人を減らしたい」と親子でクリニック運営を考える娘に共感した。
一念発起し、1日4〜5時間を勉強に充てた。就業前の朝や終業後、時には会合の後など、睡眠時間を削って机に向かった。小論文、面接、数学で審査する社会人特別選抜枠で駒大の医療健康科学部を受験。「娘たちだけでなく、社員も全力でサポートしてくれた」と一回きりの“背水の陣”で臨み、合格を勝ち取った。
学生生活は4年間。関東の取引先が多く、もともと都内と島根の2拠点生活。今後は大学での授業を軸に、空き時間や休日は経営者となる。学生と経営者の二足のわらじを履く。
クリニックは松江市内で30年の開業を目指す。MRIやCT、エコーなど最新鋭の機器をそろえ「検査といって身構えるのではなく、積極的に足を向けてもらえる空間にする」と構想を膨らませる。
経営するコウダイ(松江市)社員の看護師資格の取得も目指す。「妻を亡くしたことは今もとても悲しい。でも『やれ』と背中を押してくれている気がする」と迷いなくまい進していく。
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(まいどなニュース/山陰中央新報)