英エディンバラ大学などに所属する研究者らが発表した論文「Depression and physical multimorbidity: A cohort study of physical health condition accrual in UK Biobank」は、うつ病の既往歴を持つ中高年は、そうでない人と比較して、より多くの長期的な身体疾患を抱え、新たな身体疾患も速いペースで蓄積することが明らかになった研究報告である。
この研究は英国バイオバンク(UKB)の17万2556人のデータ(2006〜2010年に登録があったもの)を分析しており、参加者は40〜71歳の中高年で、平均6.9年間追跡した。研究チームは自己申告、一次医療、入院記録、がん登録、死亡記録を用いて、69種類の長期的な身体疾患を調査した。
分析対象となった参加者のうち、17.8%(3万770人)がうつ病の既往歴を持っていた。ベースライン時点で、うつ病既往歴のある参加者は、ない参加者と比較して、より多くの身体疾患を抱えていた。また追跡期間中、うつ病既往歴のある参加者はそうでない参加者よりも速いペースで新たな身体疾患を蓄積した。
年齢と性別で調整した後も、うつ病既往歴のある参加者はそうでない参加者よりも32%速いペースで身体疾患を蓄積した。さらに、社会人口統計学的特性やベースラインの疾患数、社会的・生活様式因子による調整後でも、うつ病既往歴のある参加者の疾患蓄積率は10%高いままであった。
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ベースライン時点で最も一般的だった身体疾患は、高血圧、アレルギー性および慢性鼻炎、変形性関節症であった。追跡期間中に最も多く発症した新たな身体疾患は、変形性関節症、高血圧、胃食道逆流疾患だった。
この研究は、医学分野の科学雑誌「PLOS Medicine」に2月13日付で掲載された。
Source and Image Credits: Fleetwood KJ, Guthrie B, Jackson CA, Kelly PAT, Mercer SW, Morales DR, et al.(2025)Depression and physical multimorbidity: A cohort study of physical health condition accrual in UK Biobank. PLoS Med 22(2): e1004532. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1004532
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2
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