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女性に多い便秘。生活の質を下げるだけでなく、さまざまな疾患にも関わるので、しっかり対処したい。
「2月から3月は冷えもきつく、季節の変わり目ともあって便通の調子を崩しやすいです」
と話すのは、これまでに7000人以上の栄養相談を行ってきた管理栄養士の加勢田千尋さん。便秘が常態化してしまうと、体内に老廃物をため込みやすくなり、健康に悪影響が出てくる。
「便秘を放置すると免疫力が下がり、肌荒れを含む全身の不調につながります。さらに、イライラしやすくなったり、疲労感を感じることも。そうならないためにも、日々の腸ケアが大切」(加勢田さん、以下同)
冬に太りやすい場合、便秘の影響もあるという。
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「便が排泄されないと、腸内で悪玉菌が増加。この悪玉菌が、食べ物のカロリー消費や代謝といった正常な活動を妨げるため、やせにくく太りやすい体質になってしまうのです」
さらには、全身の不調を引き起こし、怖い病気の原因になることも。
「悪玉菌が便やおならの悪臭のもとになる腐敗物質をつくることで、アンモニアや硫化水素などの有害物質や発がん性物質が発生します。これらの物質が腸から血液に取り込まれ、体中を巡ることで、大腸がんなどのリスクも高まります」
さらに、腸内環境が悪化すると感染症にもかかりやすくなる。
「免疫とは、外から入ってくる異物を追い出したり、退治したりして身体を病気から守るシステムです。腸には腸管免疫と呼ばれる大きな免疫組織がありますが、悪玉菌が優勢になると、この免疫組織の働きが大きく低下します。風邪や感染症、アレルギーといった免疫に関わる病気にもかかりやすくなってしまうので、食事や運動、睡眠など、日々の習慣を少し見直してみて」
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便秘腸には3タイプあるが、例えば腸の動きが悪い人は、毎日短時間でも運動する習慣をつけることで改善。ストレスが原因の場合は、アルコールやコーヒーを避け、入浴して腸の緊張をときほぐし、リラックスする時間をつくると効果的だ。
また、便意を我慢する癖がある人は、朝、トイレに行く時間をつくり、水分をとる習慣を取り入れると効果が出やすい。特に寒い季節は、夏に比べて水分の摂取量が少なくなりがちなので意識的にとることが大切。
「栄養がとれないと、便をつくる材料が不足して便通が滞りやすくなりますし、デスクワークが多かったり運動習慣がないと、腸も活動不足になります。また、便は寝ている間につくられるため、睡眠時間が短いとその時間が減り、便秘につながります」
「朝の習慣」が美腸をつくる!
●コップ1杯の常温の水を飲む
排便のリズムをつくるには、朝、できるだけ腸が動きやすい環境を目指すこと。特に、起きてすぐ水を飲むと、腸が刺激されてトイレに行きたくなる。水は1日1.2リットル以上とるのが目安。健康状態がよいときの便はその8割程度が水分なので1日の食事中から1リットル、体内でつくられる水分が0.3リットル、体内の水分を保つために残りの1.2リットルを水分として摂取するのがおすすめ。冷たい水は腸を冷やしてしまうため、喉が渇いたと感じる前に、なるべく温めた水でこまめに補給を。
●朝食はひと口30回はかんで
便秘改善、腸内環境を整えるために朝食抜きはご法度。腸が便を外に送り出す蠕動は、朝に活発になりやすく、朝食を食べることで腸が刺激され、便を一気に押し出す大蠕動が起こりやすくなる。
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また、かむ回数を多くすれば食べたものが小さくなり、唾液による消化が十分行われるので胃腸の負担が減少。満腹感が得られやすく、食べすぎ防止にもなる。ひと口につき30回を意識しよう。
注意したいのが、小麦製品に多く含まれるグルテン。消化しきれずに腹痛や下痢、頭痛を引き起こすグルテン不耐症や、遅延性のアレルギーで、腸の消化・吸収機能や免疫機能が乱れるもとになる。
●トイレタイム、便座に3分
朝食後、「そんなに行きたくないかな」と思ってもトイレに行く習慣を。出ても出なくても、便座に3分は座るのがおすすめ。これを続けることで脳が「排便の時間だ」と認識し、便座に座れば便意をもよおすようになる。
「みそ汁、温野菜」で冬便秘を退治
●腸が喜ぶ食事をとる
栄養バランスのいい食事をとるには、米を中心とした主食、魚や肉や豆類などのタンパク源となる主菜、野菜を中心とした副菜を意識して。さらに、腸内細菌のエサになる食物繊維や発酵食品を取り入れれば、腸が喜ぶ食事に!
●「まごわやさしい」を意識して
「まごわやさしい」は、身体に必要な栄養を満遍なく摂取できる食事のキーワードで、世界でも健康によいと認められた和食でよく使われる食材の、最初の文字を覚えやすく並べた言葉。ご飯にもよく合うものばかりなので、食事のときにはこれら7品目を満遍なくとれるよう意識して。
そうすると自然に栄養バランスが整い腸をすこやかに整えるメニューに。なお、果物はビタミンCも多いが糖分も多いので、エネルギー消費がしやすい朝に食べるといい。
ま 大豆、あずきなど豆類のこと。タンパク質が豊富
ご ごま、ナッツ、クルミ、アーモンドのこと。不飽和脂肪酸やビタミンEが豊富
わ わかめ、昆布、のりなどのこと。カルシウム、食物繊維が豊富
や 野菜、根菜のこと。β-カロテン、ビタミンC、食物繊維が豊富
さ 魚のこと。タンパク質やオメガ3脂肪酸が豊富
し しいたけ、しめじなどきのこ類のこと。食物繊維が豊富
い じゃがいも、さつまいもなどいも類のこと。食物繊維、炭水化物 が豊富
●野菜は両手のひら2杯以上
野菜は毎食たっぷりとるのが理想。食物繊維は腸内細菌のエサとなるだけでなく、便のカサが増して自然なお通じを促すのにも役立つ。目安は1日350gといわれているが、これは生野菜で手のひら3杯以上の量。食べきれない人も多いので、まずは2杯分を目安に。ゆでたり蒸したりなど加熱すればカサが減って食べやすくなる。みそ汁を具だくさんにするだけでも野菜の食物繊維たっぷりに。
「運動&睡眠」で冷えた腸を復活
●毎日20分の早歩き&簡単エクササイズ
ウォーキングなどの足を使う運動は、自律神経が整って腸の蠕動運動のスイッチが入りやすくなる。効果を出すには、20分程度の少し汗ばむくらいの早歩きで。さらに、腸を動きやすくするエクササイズも日課にすれば効果アップ! 大腸の中で、便の滞りやすい場所は左右の肋骨の下と、同じく左右の腸骨(腰骨)の上。そこをやさしく圧迫すると、便が押し出されやすくなる。
●たっぷり睡眠で快腸&太りにくく
十分な睡眠がとれないと、身体の修復機能が追いつかないことや自律神経の乱れを起こしやすくなることから、腸の消化吸収の働きにも悪影響が。アメリカの研究で、睡眠時間が5時間未満の人は、7時間以上の人に比べて肥満になるリスクが1.6倍になるという報告も。やせやすい身体のためには7時間程度の睡眠時間を確保することを目指して。
教えてくれたのは…加勢田千尋さん●監理栄養士。腸の専門学校「腸の学校」を運営し全国で腸活にまつわる食育セミナーを実施。著書に『10キログラムの減量にたった4か月で成功した管理栄養士が教える「やせ玉」ダイエット』(主婦と生活社)。
取材・文/後藤るつ子