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コンビニ大手のうち、1店舗当たりの売上高である「日販」はセブン-イレブンがダントツで69万円だ。PBを中心とした商品構成が「目的買い」に即しているほか、好立地をすぐにおさえるノウハウを有しているためといわれている。
一方で、日販がともに50万円台中盤で近しいのが、ファミリーマートとローソンだ。両者はセブンが成功を収めた施策を後から追随することもあるほか、ファミマのデジタルサイネージのように独自の取り組みも交えながら「絶対王者」のセブンを超えようとしてきた。本記事では、セブンを超えようとする両チェーンの戦略を解説していく。
●店舗数、日販ともに独走するセブン
“上げ底弁当”やカナダ企業による買収提案など、マイナス面のニュースが続くセブンだが、業界ではダントツだ。国内店舗数は大手のうち唯一2万を超え、追随するファミマ・ローソンは1.5万〜1.6万ほど。都内だけでもセブンが約2900店舗を展開するのに対し、ファミマは約2400店舗でローソンは約1700店舗だ。
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2023年度の日販でも、前述した通りセブンが唯一60万円台で、70万円も射程圏となっている。一部の人気商品を除いてPB商品「セブンプレミアム」が主体の商品構成となっており、消費者から見れば「何が売っているか」分かりやすい。目的買いに即した商品構成が消費者に受けている。食品類の「小容量」が揶揄(やゆ)されることも多いが、味に対する評価は高い。
●PBの影が薄いファミマ、ローソン
セブンプレミアムが有名なのに対し、ファミマ、ローソンのPBは影が薄い。
例えば、ファミマが現在の「ファミマル」に統一したのは2021年。セブンプレミアムが誕生した2007年から10年以上も遅れている。以前は「FamilyMart collection」のほか、総菜や日配品の「お母さん食堂」、高価格帯の「お母さん食堂プレミアム」といったPBが乱立していた。
ローソンは2010年に「ローソンセレクト」として商品を発売。現在は「ローソンオリジナル」になっている。セブンやファミマのPBと異なり、ブランド名とロゴが前面に出ていないのも、影の薄さを助長している。優しさをイメージした商品パッケージのデザインが、分かりにくいと批判されることもあった。
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とはいえ、ファミマであればPBの統一、ローソンも商品ラインアップを強化しており、PB強化で先手を打ったセブンを追随する構図といえる。
●メディア、衣類が特徴のファミマ
ファミマ、ローソンともセブンを追随するだけではなく、もちろん独自の策にも取り組んでいる。ファミマが進めているのが、デジタルサイネージ「FamilyMartVision」だ。レジ上にディスプレイを設置し、リテールメディアとして店舗に来た人向けに放送している。
2020年から展開し、2024年3月時点で約1万店舗に設置。音楽関連コンテンツやメーカー広告のほか、自社製品の販促広告なども放映している。従来のコンビニにはなかった取り組みだが、設置店舗を順調に拡大していることから、相応の効果を発揮しているとみられる。
ちなみにセブンでは、2022年にデジタルサイネージの実証実験を開始した。ファミマの施策を模倣したと思われ、効果が大きければ本格的な展開に至るだろう。
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ファミマの商品面では、衣類を強化する動きがみられる。2021年3月に衣料品ブランド「コンビニエンスウェア」を発売。シャツや下着、靴下などの軽衣料を中心としたラインアップで、各店舗の入口付近に陳列している。2023年末にはスウェットやパーカーなど通常の衣類を投入したが、現在の実店舗を見てみると軽衣料が中心である。通常の衣類は苦戦したようだ。
●「まちかど厨房」「無印」が特徴のローソン
ローソンの取り組みのうち、効率化重視と目されるセブンと一線を画すものが「まちかど厨房」だ。店内で調理した弁当やサンドイッチの販売コーナーであり、300円台のおにぎり、600〜700円台の弁当などを扱っている。ご飯も店舗で炊いており、工場配送の食品より高品質かつ高価格帯であるのが特徴だ。
まちかど厨房は2011年に展開を始め、2024年末時点で約9400店舗が導入。中食需要の高まったコロナ禍で大幅に拡大し、客層は40〜50代の男性が中心だという。昼及び夕方時間帯の利用が多い。外食が1食1000円時代に突入している昨今、ちょっと価格が高くても満足感が高いまちかど厨房は強みといえそうだ。
非食品分野では「無印良品」商品の展開を進めている。2020年に実験販売を開始し、2022年5月から本格導入を始め、すでに1万店舗以上に導入済みだ。化粧水や文房具類の売れ行きが好調で、40〜50代女性の支持を受けている。
ただし、無印とのタッグに関しては以前ファミマが取り組んでいたものの、2019年に終了した経緯がある。セブンが女性向け非食品を強化するような取り組みを行っていないことから、こうした取り組みは日販への影響度が小さいのかもしれない。
ファミマとローソンは、日販が近いとはいえ路線が異なる。ファミマはデジタルサイネージの設置を進める一方、商品面ではPB強化に加え衣料品の販売を進めてきた。セブンも軽衣類を販売しているが、デジタルサイネージの本格導入には至っていない。ローソンは店内調理を強化するほか、ファミマが終了した無印良品とのタッグを組んでおり、いずれもセブンが導入しなさそうな施策だ。
3チェーンの構図としては、PBに強みを持つセブンに対し、ファミマ・ローソンがPBを強化しつつも独自の策で追い付こうとしている形が見える。両チェーンから今後、どのような策が生まれるのか注目したい。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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