iPhoneの使い方が劇的に変わる? 日本語対応した「Apple Intelligence」を試す

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2025年03月01日 06:11  ITmedia Mobile

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Apple Intelligenceが、4月に日本語へ対応する。それに先立ち、iOS 18.4の開発者向けのβ版が公開された

 Appleが独自に開発した生成AIサービスの「Apple Intelligence」が、4月から日本語に対応する。iPhone 16シリーズは「Apple Intelligenceのために設計されたiPhone」とうたっているだけに、ついにその本領を発揮するときが来た。正式サービスの開始に先立ち、Appleは開発者向けβ版の「iOS 18.4」の配信を開始した。対象となるiPhoneにこれをインストールすれば、一足先に日本語版のApple Intelligenceを利用できるようになる。


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 英語では先行提供されてきたApple Intelligenceだが、日本語ではどのようなことが実現するのか。正式バージョンに先立って配信されている開発者向けβ版を使い、その実力を確かめてみた。


 なお、開発者向けβ版は一般公開されているものではないため、スクリーンショットの公開が禁止されているが、本稿では、許可を得た上でこれらを使用している。また、β版のため、機能の詳細が変わる可能性がある点にもご留意いただきたい。


●キーボードなしでも長文を簡単に作成できる「作文ツール」


 これまでも言語設定を切り替えれば利用できたApple Intelligenceだが、日本語を扱う機能では、直接的な恩恵を受けることができなかった。「作文ツール」は、その代表格だ。これは、文字通り生成AIを使って文章を作成したり、文章を書き直したりする機能を指す。長い文章を要約するといった使い方も可能だ。


 使い方は簡単。例えばメールを開き、新規作成画面で一通り文面を書いた後、それを選択すると、メニューに「作文ツール」が表示される。ここで「プロフェッショナル」や「フレンドリー」をタップすると、文体をより専門的にしたり、カジュアルにしたりといった変更を加えることができる。下書き的にざっと文章を書くだけで、よりきちんとした文章に仕上げられるというわけだ。


 また、ChatGPTとの連携で、ゼロから文章を書きあげることも可能だ。メールの新規作成画面でApple Intelligenceのアイコンをタップし、メニューの一番下にある「作文」を選択すると、ChatGPTが起動する。ここでは、「3月5日に開催される新しいスマホの発表会の案内文を書いて。時間は16時から、場所は渋谷」と指定してみた。


 すると、以下の画面のような文章が自動的に生成された。細かい書き直しは必要だが、ゼロからiPhoneでこの文章を作り上げるのはなかなか骨が折れる。作文ツールを使えば、短くどのようなことを書きたいか指定するだけだ。隙間時間にメールを書き上げてしまいたいというときに、重宝する機能といえる。ChatGPTからは、このメールに追加した方がいい項目も提案される。


 作文は、メールへの返信にも利用できる。届いたメールに対して即レスポンスしつつ、文章はきちんと書きたいというときに活用できそうだ。筆者の場合、メールに返信フォームが記載されている発表会の案内などを受け取ることが多々ある。この場合も、「フォームを埋める形で返信を書いて」と頼むとそのようにしてくれるので、コピペの手間が省ける。


 ただし、項目内の一部はダミー的に埋められるだけなので、書き直しも必要になる。ユーザーの情報を学習できれば、より効率的に返信ができるようになるだろう。作文ツールを実際に使ってみると、物理的なキーボードがなく、長文を打つのがおっくうになってしまうiPhoneとは、特に相性がいい機能だと感じた。コミュニケーションを促進する機能という点でも、スマホ向きだ。


 作文ツールは、文字を扱うさまざまなアプリから呼び出すことが可能。筆者の場合、記者会見やインタビューなどのメモを取るのにiPadの「メモ」アプリを利用しているが、その中身をザクっとまとめることもできた。あとからメモを活用する際に、要点だけをサッとつかめる。単に文章を作れるだけでなく、アプリにしっかり組み込まれているため、実用的といえる。


●イラスト生成にも対応、ジェン文字はコミュニケーションを促進する


 Apple Intelligenceが日本語対応したことで、イラストを生成できる「Image Playground」も利用できるようになった。と言っても、この機能はあらかじめ用意されたキーワードを選択したり、写真を読み込ませたりするだけでイラストが作られるため、どちらかといえば言語への依存度が低い。現状でも、設定を英語に切り替え、Apple Intelligenceを有効にすれば、比較的簡単にイラストを作ることが可能だ。


 どのようなイラストが必要かを指定するプロンプトをゼロから書いていくのはなかなか大変だが、Image Playgroundなら、画面に表示されたヒントになるキーワードを組み合わせていくだけ。その意味では、イラスト生成の初心者にもとっつきやすいユーザーインタフェースといえる。生成AIに初めて触れる人を考慮している印象が強い。


 SNSのアイコンに顔写真を使うのは抵抗がある人や、作成したプレゼンテーションに添えるイラストが欲しい人には、役に立つ機能といえる。ただし、先に挙げた作文ツールより出番は少ないような印象も受ける。生成されるイラストのテイストは、アメリカのアニメのようで、バリエーションは少々少ない。


 その意味では、絵文字を生成できる「ジェン文字」の方が、活躍の機会は多くなるかもしれない。絵文字といっても、作れるのは小さな画像。メッセージやメールなどのアプリに張り付けるとちょうどフォント1文字と同じサイズになり、あたかも絵文字を使っているかのようにレイアウトされる。フィーチャーフォン時代に「デコメ絵文字」という画像を絵文字代わりにする機能があったが、あれの生成AI版といえば(昔からのユーザーには)分かりやすいかもしれない。


 ジェン文字は、絵文字キーボードから作成することができる。メッセージやメールなどの画面でキーボードを絵文字に切り替え、画面上部をフリックすると、「Genmoji」というボタンが現れる。ここをタップし、生成したい絵文字の説明を加えるだけだ。試しに、「バルセロナへのフライト」と書いてみたところ、飛行機とバルセロナの旧市街にありそうな建物が組み合わさった絵文字や、ビーチの上を飛行機が飛ぶ絵文字が作られた。


 ただし、あくまで画像のため、ジェン文字を使えるアプリは限られる。例えば、X(旧Twitter)アプリでジェン文字を入力したところ、大きな画像が添付される形になってしまった。Facebookアプリでは、そもそもジェン文字の選択肢が表示されない。メッセージやメールなど、使いどころが限られる点は念頭に置いておきたい。


●より賢くなったSiri、ボイスメモは日本語の文字起こしに対応


 Siriがより賢くなるのも、Apple Intelligenceの恩恵の1つだ。例えば、「明日のバルセロナの天気は?」と聞いたあと、結果が画面上部に表示されている状態で、再びSiriに「明後日は?」と聞くと、文脈を踏まえて翌々日のバルセロナの天気を表示してくれる。株価などでも、同様のことができる。


 複雑な質問をしたときには、それを判断してGoogle検索の結果を表示したり、ChatGPTを呼び出したりするかどうかを聞かれる。また、「○○をChatGPTに聞きたい」といった形で指定することで、意図的にChatGPTでの回答を呼び出すことも可能だ。Apple Intelligenceによって万能になったわけではないものの、より自分の限界をわきまえる“知性”を身に着けたことがうかがえる。


 Apple Intelligenceには含まれていないが、iOS 18.4を適用すると「ボイスメモ」で日本語の文字起こしも可能になる。ボイスメモを立ち上げ、録音ボタンを押したあと画面左下に表示される吹き出しマークをタップすると、文字起こしが始まる。文字起こしはリアルタイムで表示されるため、相手が何を話したかを確認するのにうってつけだ。


 Pixelを筆頭に、Androidスマホでも文字起こしに対応した端末は増えているが、録音したそばからすぐにテキスト化してくれるものはまだまだ少ない。Galaxy AIや、XiaomiのAIも、録音した音声を後からまとめてテキスト化する仕様のため、話されたことをその場で確認するのには向かない。数字などの確認のために、録音しながら文字起こしされたテキストをチラ見し、メモと突合することがあるが、このような使い方をしようとすると、現状ではPixel一択になってしまう。


 iOSのボイスメモがリアルタイムの文字起こしに対応したことで、iPhoneという新たな選択肢が生まれた格好だ。ただし、Pixelの方が、まだ精度には一日の長がある。話者の分離なども行ってくれない。また、iOSの場合、言語の切り替えがボイスメモアプリからできず、端末そのものの言語設定を変更する必要があり、操作が少々面倒。こうした点は、ぜひ今後のアップデートで改善してほしい。


 まだまだ完璧ではないが、Apple Intelligenceが加わったことで、iPhoneの使い方がガラッと変わる可能性もある。特に、これまではユーザーがゼロからやっていた文章作成などを、ある程度iPhoneに肩代わりしてもらえるのは大きいと感じた。ボイスメモの文字起こし対応も、筆者のように会話を録音し、それをあとで活用することが多い人にはうれしいアップデートといえる。正式版のiOS 18.4が配信されることを楽しみに待ちたい。


(製品協力:アップルジャパン)



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