キウイの木に接ぎ木する原口拓也さん=2月8日、福島県大熊町 東京電力福島第1原発事故で一時全町避難を余儀なくされた福島県大熊町で、かつて盛んに栽培されていた特産のキウイフルーツ復活に挑む移住者がいる。大阪府出身の原口拓也さん(24)は、株式会社「ReFruits(リフルーツ)」を設立し、同町で震災後初のキウイ農家となった。事故で失われた特産の復活に向け、来年秋の初出荷を目指している。
原口さんが初めて同町を訪れたのは2021年の秋。新型コロナウイルスの影響で大学の授業がオンラインになったことを機に、各地の農家で住み込みアルバイトをしていた際、知人に紹介されたことがきっかけだった。原発事故で町名を聞いたことがある程度で、縁もゆかりもなかったが、キウイが特産だったと知って興味を持ち、町内で試験栽培を行う団体「おおくまキウイ再生クラブ」に参加した。
その活動の一環で訪れた千葉県で、同町から避難した農家の男性が育てたキウイの味に感動し、「自分もこんなものを作りたい」と決断。23年10月、同クラブの会員だった若手移住者の男性を誘い、2人で起業した。社名には、同町だけでなく、日本の果樹農業を盛り上げたいという願いも込めた。
昨年春、最初の苗木を植えたが、キウイを収穫できるまでは3年かかるとされ、会社の黒字化目標を28年に設定している。「それまでは下積み期間」と考え、自ら福島県外の農家へ研修に赴き、栽培の腕を磨いている。
栽培だけでなく、町内の事業者とも協力してキウイを使った加工食品の製造や販売といった事業拡大も視野に入れているという原口さん。「自分たちの活動をきっかけに、大熊のキウイを自慢に思ってもらえるようにしたい」と力を込めた。