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手にはその人の生活、環境が大きく反映されるもの。今、SNS上で大きな注目を集めているのはある女性木彫り作家の手だ。
【写真】仏像彫刻専攻3年の時に修了制作として制作した阿修羅像
「22歳女の手には見えない」と自身の手の写真を紹介したのは濱里さん(@ne_ne_wood)。
ひび割れたり荒れたりして、若い女性としては少し無骨な印象の濱里さんの手。しかし濱里さんはSNSでたびたび話題になる注目の若手木彫り作家で、この手から数々の作品を生み出してきたのだ。今回の投稿について濱里さんに話を聞いた。
ーー濱里さんが木彫り作家を志した経緯は?
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濱里:木彫り作家を志したのは高校3年生の時です。私は北海道にある工芸を学べる高校に通っていて、そこで木彫りの楽しさや奥深さを知り、夢中になりました。
ーーご自分の手について。
濱里:正直に申しますと、木彫りをしているだけでこの様な手の状態にはなりません。私は幼い頃からアトピー性皮膚炎という皮膚病を患っていて、手に深い皺や黒ずみがあるのはその病が主な原因です。現在も医師から飲み薬と塗り薬を処方してもらって、治療を続けています。ただ彫刻中は塗り薬を塗ると手が滑ったり木に油分が染みたりするのであまり塗れません。刃物を研ぐのにも水を触るので、手がますます乾燥し荒れていきます。
また彫刻以外にも、喫茶店とラーメン屋さんでアルバイトをしており、手に湿疹が出ているにも関わらず我慢して洗い物をしていたのでそれも原因だと思います。手がどうしようもなく荒れていて木彫りに身が入らなかったり、彫刻家の夢を諦めようと思ったことも何度もありましたが、今は好きなことを続けていきたいという気持ちが大きいです。
ーー投稿に大きな反響がありましたね。
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濱里:ここまで肯定的な反応があるとは思っていませんでした。手は長年のコンプレックスで、小さい頃は幼稚園で整列した時に私だけ手を繋いでもらえなかったり、「女の子なのに可哀想」と言われたり辛い思いを沢山してきました。今回のポストに対して「頑張っている手」「働き者の綺麗な手」「美しい」など沢山の肯定的なお声をいただいて非常に驚いています。みなさんの身近で持病を抱えながら頑張っている方にも、同じ様に優しい声をかけてあげてほしいです。
このような話題で注目を集めたのは少し複雑な気持ちですが、多くの方が私の作品に興味を持っていただくきっかけになったのであればうれしいです。手の皺深さと作品の質は全く関係のないことなので、見掛け倒しにならないよう、この手に技術が伴うよう頑張りたいです。
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SNSユーザー達から
「職人の手です 彫刻刀を使うのに力加減が難しいのだなぁ…と思います。」
「手を見せる仕事の方もいれば、手で魅せる仕事の方もいます。 何かを成す為に極めた手は美しいです。」
「すご… 自分の知らない世界で素晴らしいお仕事をされている方がたくさんいらっしゃるのだなと思います。」
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など数々の驚きの声、称賛の声が寄せられた今回の投稿。
先日、京都伝統工芸大学校の卒業修了制作展で京都伝統工芸産業支援センター賞を受賞した濱里さん。卒業後のさらなる飛躍に期待したい。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)