顧客のソフトウェアサービスや製品づくりを支援するSHIFTは、同社の2025年度中(2025年8月期まで)にAIエンジニアの数を、現在の50人程度から500人まで引き上げる。「経営・取り組み方針説明会」で、丹下大社長が発表した。同社が掲げる売上高3000億円達成に向け、AIを活用して生産性を高めていく構えだ。
●丹下社長「OpenAI o1に驚いた」
「AIの徹底活用、AIエージェント化を進めて、さらなるビジネス進化を目指す。SIer(システムインテグレーター)の中でAIネイティブな企業として注目され、実績を出す企業にしていきたい」
説明会の冒頭で丹下社長は、AIへの取り組みを強化していく方針を述べた。同社はAIエンジニアの定義を以下の3階層で考えているという。
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・トップノッチ=大規模言語モデル(LLM)そのものを扱える(究極的には独自言語モデルを開発可能な)レベルのエンジニア
・AIネイティブなAI×サービス連携を実現するバックエンドエンジニア=LLMと連携・協調して、各種サービスを作れるエンジニア
・AI精度を高めるプロンプトエンジニア
その上でAIエンジニア部隊を500人まで引き上げる考えを明らかにした。
AIエージェントについての取り組みも強化していく。現在、AIを全社の実業務で徹底活用することによってAIエージェントで活用しうるユースケースを蓄積しているという。データ連携を進めることで、活用シーンを拡大。同社独自のAIエージェントの実現可能性を高めていく予定だ。
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「実はAIに対しては、今まで懐疑的でした。しかしOpenAI社の最新AIモデル『o1』(オーワン)が出て、その性能に驚いた。今までのAIと比べても精度が非常に高まった。本当に使えるものになったと思っています」(丹下社長)
説明会では、2024年11月まで副社長を務めていた佐々木道夫氏が、SHIFT会長に就任したことも報告した。同氏は2000〜2010年、キーエンスで社長を務めた人物だ。今後はSHIFTの営業をさらに強化していくという。
「私はちょうど6年ほど前に、社外取締役として当社に入りました。そして4年ほど前に、中に入って営業を強化してほしいということで副社長になりました。そのときはまだ売り上げが200億円ぐらいでしたが、いまではその5倍に成長しています」(佐々木氏)
キーエンス時代に社長として売り上げを伸ばすプロジェクトを立ち上げたという同氏は、SHIFTでも辣腕を振るった。具体的に何をしたのか。
「とにかく営業の1日の訪問件数を約3倍に増やしました。お客さまと会わないと機会は生まれません。いろんなKPIもまだ十分とは言えませんが、皆さんフォローできるようになりました。今後は会長職としてトップセールス、いかにポテンシャルのあるお客さまに対して接触回数、接触面積を上げるかが課題です。当社も、それが非常に重要なステージになってきたと考えています」(佐々木氏)
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●生成AIオペレーション品質向上サービスも提供
この日には「生成AIオペレーション品質向上サービス」の提供開始も発表した。RAG(検索拡張生成)の精度向上に向けたデータ整備から生成AIの業務活用、組織定着まで幅広く支援する。
RAGは外部データベースの情報を検索することによって信頼度の高い情報を抽出し、それを活用してLLM(大規模言語モデル)に回答を生成させる仕組みだ。企業や自治体における生成AIの導入は進んでいるものの、導入後の定着に課題が生じている。
生成AIを組織固有の業務やルールに適応させ精度の高い結果を得るためには、業務ドキュメントなどのデータを連携させ、RAGを構築する必要がある。しかし多くの組織では、業務ドキュメントの形式不均一やデータ不足、AIが検索しづらい形式のデータが障壁となり、生成AIの能力を十分に活用できないケースが多い。
SHIFTは、自社でAI製品の開発・運用を手掛け、生成AIの高精度な業務活用とデータ整備に関する知見を蓄積してきた。この問題を解決するため、これまで培ってきたノウハウを生かし、生成AI導入企業におけるRAGの構築と、運用改善に特化したソリューションを提供する。
生成AIオペレーション品質向上サービスは、生成AI導入組織におけるRAGの構築計画から改善までを、SHIFT独自の標準化されたプロセスでサポートするという。これにより、RAGの構築・運用・改善のサイクルを素早く回すことで、組織におけるRAG活用の幅と質を向上させる。
具体的には、適用業務を整理し、人間の判断が必要な作業と生成AIに適用できる作業を洗い出す。次に、生成AIに連携するデータを整備し、RAGを構築する。品質保証事業で培ったドキュメント作成のノウハウを生かし、AIが学習しやすい構造化されたデータやドキュメントを作成するという。
蓄積された出力結果を分析し、ドキュメントやデータの改善を行うことによって、RAGと業務プロセスの精度向上を図る。
先行事例として、国内大手エンターテインメント企業のカスタマーサポート業務で、約110社・4万件のVOC(顧客の声)分析データをもとに、生成AIが学習しやすいメールテンプレートの精査と、フォーマット整備を進め、RAGの精度を向上させた。その結果、メールテンプレートの検索工数削減を実現したという。
SHIFTは「無駄をなくしたスマートな社会の実現」を目指し、ビジネスの構築からシステムの企画、開発、運用、セキュリティやマーケティング領域、DX推進まで、顧客のITにまつわるあらゆるビジネス課題の解決を支援する。
(アイティメディア今野大一)
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