フォルダブルスマホなのに格安価格――そんな相反する要素を兼ね備えたのが、ZTEのnubia Flipシリーズだ。初代モデルは2024年に発売し、2025年1月にはY!mobileがその後継機となる「nubia Flip 2」の販売を開始した。本体価格は上がったものの、ソフトバンクは新たにY!mobile向けの「新トクするサポート(A)」を導入。2年後に下取りに出した場合の実質価格は2万円を下回る。販売方式のサポートはあったものの、そのコストパフォーマンスは健在といえそうだ。
同時に、ZTEはエントリーモデルで一括1円での購入が可能な「nubia S 5G」も開発。こちらもY!mobileが取り扱っている。2024年はオープンマーケット(SIMフリー)のみで使用していた「nubia」ブランドも、ソフトバンク向けに拡大。nubia Flip 2は、テレビCMも開始するなど、マーケティングにも本腰を入れている。基地局などのネットワーク機器に強みがあり、端末はどちらかといえばキャリア向けの専用モデルが多かったZTEが、その戦略を大きく転換している格好だ。
では、同社はコンシューマー市場をどのように開拓していくのか。ZTEジャパンの代表取締役社長を務める周涛(シュー・トゥー)氏と、取締役副社長でモバイルターミナル事業最高責任者を務める黄凱華(コー・ガイカ)氏に話を聞いた。
●価格破壊が成功し、日本の折りたたみスマホのシェアが2位に
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―― nubia Flip 2を発売しました。どのような戦略を考えているのでしょうか。
周氏 nubiaはZTEが自社ブランドとしてコンシューマーに向けて打ち出しているブランドで、弊社にとって重要な取り組みです。昨年(2024年)は「nubia Flip 5G」を出しましたが、nubia Flip 2はその2世代目になります。昨年と比べ、品質面やディスプレイを改善し、AI機能も追加しました。製品のバリエーションに関しては、今後もより豊富にしていきたいと考えています。
ご存じかもしれませんが、nubia Flip 2は日本のメディアにもたくさん取り上げていただけました。イメージキャラクターとして山崎賢人さんと契約し、今年(2025年)からエンドユーザーにより理解してもらえるような活動を大きく増やしています。SNSやOOH(屋外広告)など、いろいろなルートで露出を拡大していく考えです
黄氏 昨年はウオーミングアップの期間だったと捉えていただければと思います。今年は、本格的にブランディングを広げていく取り組みに切り替えています。nubiaは、ハイスペック、ミドルレンジ、ローエンドまで幅広くありますが、今年はまず2機種でお客さまの反応を見させていただき、重点的にアピールしていきます。
―― ウオーミングアップは成功だったということですね。
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黄氏 トレンドに合った商品を日本のマーケットにいかに早く投入していくかに注力しています。販売ボリュームはキャリアがメインになる状況ですが、昨年はY!mobile向けが「Libero Flip」、SIMフリーがnubia Flip 5Gという形で展開しました。結果として、折りたたみスマホのシェアでは2位を取ることができています。昨年は実質で3万9800円という価格を打ち出し、価格破壊でインパクトを狙っていました。
●SIMフリーモデルは準備ができ次第、投入していく
―― 外側ディスプレイが縦長ですが、実際に触ってみると、この形状がフリップ型の正解のようにも思えました。
黄氏 「そのスマホ、異色」というコンセプトの下、差別化を図りたいと思っていました。フリップ型はまだ完全に浸透していないこともあり、斬新感があります。また、性能面ではこの形だと、PayPayなどのアプリも閉じたまま使えます。もちろん、ブラウザを開いたり、音楽を聞いたり、メッセージを受け取ったり、SNSを使ったりもできます。その利便性を出すために、このような形になりました。
―― キャリア向けのボリュームが大きいということですが、なぜオープンマーケットに取り組んでいるのでしょうか。
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周氏 日本のマーケットの特徴ですが、ボリュームとしてはキャリアビジネスが9割以上です。その特性に従うと、キャリアビジネスがメインになります。一方で、競合他社の状況もありますし、SIMフリーが盛り上がるとキャリアにも納入しやすくなります。そのため、SIMフリーマーケットも逃さず、昨年から本格的に展開し始めていますし、今年も継続していく計画があります。
―― そういえば、まだnubia Flip 2はY!mobile向けしかなかったですね。
周氏 タイミングの問題で、先行してY!mobileに投入しました。SIMフリーモデルに関しては、他社と連携しながら、準備ができ次第投入していきます。
●MNPでの実質負担額が2万円未満 ここまで安く作れた背景は?
―― 本体価格に関しては、nubia Flip 2で少し高くなっています。これはなぜでしょうか。
黄氏 2号機は1号機より、いかに性能面を上げるかがテーマでした。耐久性や機能はもちろん、サブディスプレイを大型化し、ほとんどのアプリを閉じたまま使える改善もしています。ヒンジに関しては、30万回テストしたことをアピールしました。フリップ型は耐久性やアフターサービスも問われるからです。
―― とはいえ、Y!mobileで新トクするサポート(A)を使うと、MNPで実質価格が2万円を切ります。
黄氏 1万9680円(税込み)ですからね。2万円を切っているので、1号機と同じぐらいインパクトがあると見ています。販売価格はキャリアが決めることですが、総務省のルールに沿った形で踏み込めている。これはマーケットの中で、強い武器になると考えています。
―― ここまで安く作れる理由はどこにあるのでしょうか。
周氏 コストに関わる部分になりますが、基本的にソフトウェアは自社開発なので、そこでコストの削減ができます。また、グローバルで展開しているので、部材調達も海外と共通化を図れます。特にメインのチップセットメーカーとは戦略的なパートナーシップを組み、よりコストを下げられる構造にしています。
―― 利益を削って意図的にシェアを広げるようなお考えもあるのでしょうか。
周氏 経営の観点もあるのでゼロにはできないですが、必要最小限を確保した上でモノ作りをしています。
●コンシューマー向けモデルはnubiaに一本化している
―― 少し話は変わりますが、もともとnubiaはZTEの子会社で、一時はグループから離れていました。その後、再びZTE傘下になった経緯がありますが、今、このブランドはどういう扱いになっているのでしょうか。
周氏 確かにおっしゃる通り、nubiaというブランドはもともと子会社発でした。一方で、グローバルでは2、3年前からnubiaを本格的にコンシューマーマーケットに向けてのブランドとして展開し始めています。現状、ZTEの中には3つのブランドが存在します。1つはZTEで、これはコンシューマーではなく、法人や企業向けのブランドです。2つ目がnubiaで、コンシューマーに関してはこちらに一本化しています。
もう1つはRedMagicで、これはやや特殊なゲーミングスマホという位置付けです。さらに、nubiaの下にはいくつかのシリーズが存在します。例えば、昨年のMWC Barcelonaで発表された「nubia Music」や、カメラに特化した「nubia Focus」のような機種もあります。RedMagicよりもう少し一般消費者向けのハイエンドモデルとして、「nubia Neo」のようなシリーズも展開しています。
―― 以前はハイエンドにAXON、ミッドレンジにBladeがありましたが、これは出さない方針なのでしょうか。
黄氏 宣言はしていませんが、実質的に終了していきます。ただし、古い機種は一部残っている状態です。
―― 今回、Y!mobile向けもLiberoからnubiaに変更されましたが、これもそのブランド戦略に基づいているのでしょうか。
周氏 昨年からキャリアとも交渉していました。nubiaに切り替えることで、キャリアビジネスとSIMフリーが一本化され、相乗効果を図れます。ただし、日本ではホームルーターもありますが、そういった製品にはnubiaの名前は使っていません。
―― ZTEはグローバルで端末を発売していますが、昨年と同様、nubia Flip 2もまだ海外では発表すらされていません。一般的には逆のことがほとんどだと思いますが、どういった意図があるのでしょうか。
周氏 伝統的に、日本はハイエンドのマーケットです。ZTEとしても、世界をリードしていくマーケットと位置付けているので、トレンドの商品は先に展開しています。nubia Flip 2もグローバル展開していきますが、日本で出ているという事実がそれを推進することにもなります。
―― フリップタイプのスマホは、どちらかと言うと中国市場で勢いがあるようにも見えます。何か市場ごとの違いはありますか。
黄氏 それぞれの国の個性や文化の違いもありますが、Flipは日本での割合が高いですね。中国市場もフリップ型(の浸透)が早いですし、欧州の一部でも流行っています。一方で、東南アジアでは、nubia Musicのような端末が受け入れられやすく、マーケットとして盛り上がっています。ゲーミングスマホも、そうですね。
●“1円スマホ”にもAI機能を搭載、クラウド処理で対応
―― 今回は、AIも売りにしていました。これについて、お話ししていただけますか。
周氏 nubia Flip 2は、「AI for All」というスローガンに従っています。AIというと、ハイエンド機にしか載らないと思われるかもしれませんが、一般消費者でもAIを体験できるよう、コストパフォーマンスの高い端末にも搭載していく方針です。デジタルの世界においてギャップを解消し、より利便性を与えていけるよう努めていきます。
―― ミッドレンジ以下となると、処理をクラウドに任せる形になるのでしょうか。
黄氏 はい。現状では、端末で処理をするとそれなりに高いパフォーマンスを求められます。ですから、(ミッドレンジやエントリーモデルの)nubia Flip 2やnubia S 5Gは、クラウドでAIを動かす技術を使っています。今後の技術の進歩によっては、端末内部で処理できるようになるかもしれませんが、現状はクラウドがメインですね。
―― nubia S 5Gにも載っているのはいいですね。
周氏 nubia S 5Gは一括1円(MNPの場合)なので、手ごろな価格を求めているユーザーに最適な端末です。先ほどお話ししたAI for Allという観点があるので、“1円端末”にもAI機能は搭載していきます。
―― クラウドだと、プライバシーを気にするユーザーもいそうですが、この辺はどうお考えでしょうか。
周氏 もちろん、クラウドも日本市場の法令は順守しています。いかに一般消費者のデータを保護するかは、われわれの使命です。こうしたコンプライアンスに関しては、グローバルでも強化しています。
黄氏 そこには結構なコストもかけています。当然ですが、現地の法令は順守しながら展開していきます。
●ハイエンドモデルの投入はどうなる?
―― 最近、街中でスマホを置いて、ダンスの動画を撮っている若い女性をよく見かけます。恐らくTikTok用だと思いますが、個人的にはnubia Flip 2とも相性がよさそうだと感じています。そういった世代に特化したマーケティングはやっていくのでしょうか。
周氏 SNSでキャンペーンを実施したり、InstagramでもPR活動を行ったりしています。い世代に特化したキャンペーンも、裏で計画中です。
nubia Flip 2は女性とも相性がいいですね。折りたためば小さなカバンに入れられますし、キラキラしていたり、斜めがけできたりと、いろいろなケースもあります。
―― ケースも出していくんですね。
周氏 サードパーティーと一緒に作っているところです。また、現在購入キャンペーンをやっていて、レザーのかわいいケースもプレゼントしています。
―― エントリーモデルが多かった中、nubia Flipシリーズで徐々に上のレンジを攻めています。今後、ハイエンドモデルまで投入していく計画はあるのでしょうか。
周氏 nubia Z70 Ultraというハイエンドモデルは、日本でも出ています。ただ、ちょっとややこしいのですが、現状では販路が異なっています(代理店のFastlane Japanが販売)。パートナーとの協業で日本のマーケットに投入している形ですが、モノとしてはnubiaシリーズです。
黄氏 同じnubiaであることは間違いないので、われわれがやっているマーケティング活動も無駄にはならないと思っています。
―― とはいえ、ZTEジャパン経由でキャリアからも出してほしいですね。ハイエンドながら価格もそこまで高くないので、端末購入プログラムと組み合わせれば買いやすくなりそうな気がしました。
黄氏 その声はぜひ、キャリアさんに届けてください(笑)。
●取材を終えて:ブレずに後継を出し続けてほしい 販路の分散も課題
グローバルで展開している“nubia一本化戦略”に基づき、日本でフリップ型スマホの拡大に本腰を入れたZTE。助走期間だった2024年に対し、2025年はキャリア向けもnubiaにブランドを変更し、テレビCMなどまで使って認知度の拡大を図っている。フリップ型のスマホは若い世代への訴求力があるため、課題であるコストの高さを解決できているnubia Flip 2は、2024年のnubia Flip 5G(Libero Flip)以上に人気が出そうだ。
一方で、nubiaブランドはまだスタートしたばかり。現時点では、知る人ぞ知る存在だ。広告展開を増やせば認知度は上がる可能性もあるが、同じブランドで10年以上スマホを販売している競合も多い。一朝一夕で、そこに追い付くのはなかなか難しい。ここに近道はないため、ブレずに後継機を出し続けることが重要になる。販路が分かれてしまっているため、ラインアップとしてnubiaの全体像を見せられていないのも今後の課題といえる。
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