
3月2日(日)の放送テーマは、「あなたの学びを応援します! 夜間中学」。文部科学省 教育制度改革室長の渡邉浩人さんから、夜間中学の成り立ちや授業内容について伺いました。
(左から)杉浦太陽、渡邉浩人さん、村上佳菜子
◆“夜間中学”はどんな学校?
夜間中学は、定時制高校や夜間大学のように、主に夕方以降の時間帯に授業をおこなう中学校のことで、全国に53校あります(2024年10月時点)。10代から90代まで、年齢や国籍を問わず義務教育を十分に受けられなかった人が通えます。また、渡邉さんは「夜間中学も昼間の中学校と同じ“中学校”で、公立だと授業料は無償です。授業は週5日あり、教えるのは教員免許を持っている先生です。すべての課程を修了すれば中学校卒業となります」と補足します。
過去には「男はつらいよ」シリーズで知られる山田洋次監督の映画「学校」の舞台として夜間中学が取り上げられたほか、今年3月7日(金)から公開される映画「35年目のラブレター」でも登場。この作品は、60歳を超えた男性が夜間中学に通ってイチから文字を学ぶ物語です。
|
|
現在は、働かざるを得ない環境下にあったことで学校に通えなかった比較的高齢の人や、不登校など、さまざまな事情により、十分に学校に通えないまま中学校を卒業した人が通っています。また、日本や本国で義務教育を修了していない外国籍の人も多く、10〜20代の生徒も増えています。
夜間中学の生徒数は全国で1,969人です(2024年5月時点)。ちなみに、2020年の国勢調査によると、小学校にも中学校にも在学したことのない人、小学校を中途退学した人は約9万人、小学校しか卒業していない人は約80万人いることがわかっています。
渡邉さんは、「この数から想像すると、夜間中学への入学を希望する人は全国にもっとたくさんいると思われますし、中学を卒業したけれど、不登校など何らかの理由で実質的に十分な教育を受けられなかったため、改めて中学で学び直したいと思っている方もいらっしゃると思うので、より多くのニーズがあると考えられます」と分析します。
現時点で夜間中学がない県もありますが、国としては、すべての都道府県と指定都市に少なくとも1つ設置することを目指して、各自治体を支援しています。実際に、来年度・再来年度から夜間中学を新たに設置することを表明している自治体も多くあります。
|
|
夜間中学は中学教育を学びたい人の場、学び直しの場ですが、学べることは勉強だけではありません。年齢も国籍も違うさまざまな人とクラスメートになれたり、球技大会や文化祭、修学旅行など、いろんな経験を通して学べることがたくさんあります。
ここで、夜間中学の授業内容を紹介します。ある夜間中学の時間割を例にすると、午後5時以降に登校して、5時25分から5分間ホームルーム。1時間目は国語で、その後30分間は給食の時間になります。2時間目に英語、3時間目に家庭科、4時間目に数学を学び、8時50分からホームルームを10分おこなって、午後9時に下校といった流れです。なお、一部では給食がない学校もあります。
夜間中学に通う生徒は、年齢や国籍だけでなく、生活経験や学力も一人ひとり異なっているため、それぞれの生徒の状況に応じられるように授業が工夫されています。「他国籍の生徒の場合、中学校教育を受けるための日本語学習が必要なときもあるため、日本語指導をおこなう専門家や通訳の人と連携している学校もあります」と渡邉さん。生徒の理解度に応じて、きめ細かく指導できるのは、夜間中学の大きなメリットと言えます。
ここで、実際に夜間中学に通っていた方々のメッセージを紹介します。まずは、札幌市立星友館中学校に通っていた生徒の声です。
「僕は一時期不登校になり、全然中学校に通えていませんでした。今の学力では高校に入るのも不安だと思い、高校以外でいいところはないかと探していたら、父が新聞で夜間中学を見つけてくれて、行ってみる価値はあるかなと思って応募しました。
|
|
その後も“自分を変えたい”という思いから、いろんなことに挑戦し、次第に自分に自信が持てるようにもなってきました。夜間中学に対して不安に思っている人が多いと思いますが、自信を持ってオススメできます」(10代男性)
続いて、京都市立洛友中学校に通っていた、当時18才のネパール人・サルマさんのケースを紹介します。
夜間中学に入学する前、サルマさんは日本語がわからなくて生活に不安を抱えていました。そこで、先生の薦めもあり、コロナ禍で話すことができなくなった給食の時間に校内放送を担当することに。最初は抵抗があったものの、同じネパールの友人と一緒に放送するうちに、課題だったコミュニケーション力が伸びていきました。現在は夜間中学を卒業して高校へ進学し、「ゆくゆくは日本で仕事がしたい」という目標を立てています。
人生において“学ぶこと”に遅すぎることはありません。しかし、“学びたい”と思っていても、どう行動していいか分からない人や、学ぶ権利があるのに、その認識を持てず躊躇している人は全国にたくさんいます。夜間学校についていろんな場面で話題にすることは、そうした方に教育の機会をつなげる手助けにもなります。
最後に、渡邉さんは「文部科学省の夜間中学のホームページでは、全国にある夜間中学の一覧が記載されています。最寄りの学校を見つけて、学校を設置する教育委員会や学校に連絡して、ご相談いただければと思います。夜間中学は学びたいという気持ちを持った方々を待っています!」と話していました。
番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「夜間中学」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。村上は“みんながいつからでも学び直せる!”を注目ポイントに挙げ、「“学びに年齢は関係ない”ということを学びました」と話します。
続いて、杉浦は“夜間中学「学ぶこと」に遅すぎることはないんだ!!”とスケッチブックに書き、「夜間中学についてもっと知りたい方は、文部科学省のホームページをご覧ください」と呼びかけました。

(左から)杉浦太陽、村上佳菜子
----------------------------------------------------
3月2日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2025年3月10日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30〜7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
動画・画像が表示されない場合はこちら