産地復活願い郷里で再開=「大堀相馬焼」窯元の近藤さん―東日本大震災14年、福島・浪江町

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2025年03月04日 07:31  時事通信社

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時事通信社

取材に応じる「陶吉郎窯」窯主の近藤学さん=2024年12月11日、福島県浪江町大堀地区
 東京電力福島第1原発事故後、長らく立ち入りが制限された福島県浪江町で昨年、伝統工芸「大堀相馬焼」の窯元の一つが営業再開を果たした。「ここには夢と希望がある」。周囲はまだ大半が帰還困難区域のままだが、「陶吉郎窯」窯主の近藤学さん(71)は、産地の復活に希望を燃やしている。

 大堀相馬焼は、同町大堀地区で江戸時代から300年以上続く焼き物の総称で、「走り駒」と言われる馬の絵が描かれていることやひび割れ模様などが特徴。

 「もう、俺の代で(大堀地区に)戻るのは無理だな」。原発事故後、仮の住居と工房で操業を続け、避難指示解除を待った近藤さんは、7年が過ぎたころに一度は帰還を諦めた。同県いわき市に本格的な工房を構え、設備も整えて焼き物作りに専念したが、大堀地区のことが頭から離れることはなかった。

 2023年3月、同地区の一部で避難指示が解除されると、近藤さんは、地区に戻ることを決断し、昨年6月に営業再開を果たした。ただ解除された地域は、わずかな範囲にとどまり、原発事故前は20以上あった窯元のうち同地区に戻ったのは、近藤さん1人だった。

 ただ生活拠点を移すのは難しく、毎日いわき市から通う二重生活を余儀なくされている近藤さん。大堀地区での営業再開を「無謀だった」と冗談まじりに話すが、帰還促進には公的支援の必要性を訴える。

 担い手不足やデジタル化の進展など伝統工芸の継承に向け課題は多いが、「夢と希望はこっち(大堀地区)の方がある」と前を向く。産地再興を目指し、窯元養成や人を呼び込むさまざまな企画に取り組んでいる。最近では首都圏からの来客も増えているという。近藤さんは「もう復興したと思っている人もいるがまだまだ。大堀地区や相馬焼のことを忘れないでほしい」と力を込めた。 

陶器を見詰める「陶吉郎窯」窯主の近藤学さん=1月30日、福島県浪江町大堀地区
陶器を見詰める「陶吉郎窯」窯主の近藤学さん=1月30日、福島県浪江町大堀地区
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