銀座で働いたタイ人が驚いた“日本のサービス業の奥深さ”「タイでは注文通りに仕事をすれば合格だけど…」

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2025年03月04日 09:11  日刊SPA!

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日本の下町が大好きなバーテンダーのファビアーさん
インバウンド需要に沸いている日本。観光地はもちろん、大きな都市ではどこに行っても外国人の姿が目に入ってきますが、日本に住み、インフレ&物価高の影響を大きく受けている日本人からすると「日本の何がそんなに良いのか?」と疑問に思ってしまいますよね。
そこで、すこし日本にゆかりのある外国人に「日本の印象」を聞くことで、我々が忘れかけていた日本の素晴らしさに改めて気づくことができるかもしれません。

タイの首都バンコクにあるバー「ロスト・イン・タイスレーション」のオーナー兼ヘッドバーテンダーのスチャダー・ソパラリー(通称ファビアー・39歳)さん。東京の某有名バーで1か月インターンをしたり、その後も日本各地を何度も訪れています。

◆昭和や平成初期の日本に囲まれてタイで育った

ファビアーさんが子どもだった1990年代のタイでは、日本のドラマやアニメ、ポップスが流行していました。

「毎週土曜・日曜の朝はまず『ドラえもん』や『美少女戦士セーラームーン』などで始まり、その後、『TVチャンピオン』や『風雲!たけし城』などが放送され、私たちはテレビにかじりついていました。後で知ったのですが、日本での本放送より数年遅れでタイでは放送されていたんですね。だから私たちは昭和や平成初期の日本にどっぷりハマって育ったんです」

タイが親日国なのは、その影響もあるだろうとファビアーさんは言います。

「それ以外にも、自動車から石鹸、洗剤、殺虫スプレーまで、あらゆる日用品が日本のメーカーの物でしたから、私たちは日本に対して尊敬と憧れの念をずっと持っていましたね」

◆二歩三歩先を考えた顧客へのサービスに驚き!

そんなファビアーさんが初めて日本を訪れたのは2018年。経営学修士号取得の論文リサーチのため、東京・銀座の有名店のインターンとして働きました。

「タイですでにバーテニングの修行を始めていて、ツテがあり、そちらのお店で働かせていただくことになりました。日本のサービス業の“奥の深さ”を実感しましたね。

タイでは注文通りに仕事をすれば合格。でも日本ではお客様の求めることを、二歩三歩先まで考えながら提供しているんです。また距離感も個々のお客様によって変えていくというバーテンダーならではの気配り。本当にたくさんのことを学べた素晴らしい体験でした」

また仕事仲間への思いやりの気持ちにも感動したそうです。

「仕事を終えると、いつも『お疲れ様!』と言ってもらえ、そのたびに充足感がありました。日本では、仕事は単なるお金を稼ぐ手段ではなく、お客さんや仲間、そして自分自身を喜ばせるためのものなのだと思いました。私たち(タイ)とはまったく違ったワーク・カルチャーですね」

◆お洒落な東京を満喫する日々

外国人も多く訪れる有名店でのインターンは1か月間続きました。10代から独学で日本語を勉強していたファビアーさんですが、この期間にブラッシュアップしました。

ファッションやアートにも強い興味があるファビアーさん。インターン中、休みの日には美術館やブティックを見て回ったそうです。

「日本のファッションデザインは他にはないユニークさがありますよね。すごいのは、町のどこを歩いていても“アート”に出会うことです。美しいイルミネーションやレトロな建物、マンホールまでアートですね」

東京のお洒落なカルチャーを100%満喫していたが、都会ならではの人との距離感に少し寂しさを覚え始めていました。

◆柴又の下町人情に“故郷へ帰ったような気分”

そんなファビアーさんの寂しい心を埋めてくれたのが葛飾柴又。そう、あの「男はつらいよ フーテンの寅」の寅さんの町です!

「日本に興味を持ち始めた頃から、日本語についての本を読み漁ったり、映画も観ていました。もちろん寅さんシリーズもです。そこから柴又を知りました。昭和の風情を残す町ですよね。実際に訪れてみると本当に素敵な所でした!みんな気さくで心が暖かいんですよ!」

柴又では上達した日本語を駆使して、たくさんの人と言葉を交わしたといいます。

「私の赤い髪の毛を見たおばさんが『あら、キレイね〜』と言ってくれたり、おせんべいをおまけしてくれたり。あと神社でおみくじを引いたのですが、当然、読むことができなくて困っていたら、『これ大吉!ナンバー1グッドラックね』とおじさんが説明してくれたり」

そういった人々との交流で、ファビアーさんは故郷のタイを思い出したそうです。

「“微笑みの国”と呼ばれるタイでは、やはり、人々が気さくなんです。柴又のように、『ご飯もう食べた?』とか、いろいろ声を掛け合うんですよ」

◆四季と食材に旬がある素晴らしさ

東京だけではなく、日本各地をファビアーさんは訪れました。

「北海道でスキーに挑戦したり、大阪で食い倒れしたり、京都で着物を着たり、神戸で和牛を堪能したり、別府で温泉でくつろいだり、各地それぞれに素晴らしさがありますよね!」

また四季があるのも日本の良さだといいます。

「タイの季節は基本“暑い”か“すごく暑い”です(笑)。日本では四季折々で風景が変わりますから、何十回来ても新しい発見があります。時期に応じて旬の食材がいろいろあるのも、また楽しいですよね」

「日本というとハイテクでお洒落なイメージが強かったのですが、東京にも昔ながらの人情あふれるレトロな町があり、地方にもその土地ならではの良さがあり、まだまだ知らない魅力に溢れていると思いました。日本はとても奥が深いです」

<取材・文/梅本昌男(海外書き人クラブ/タイ在住ライター)>

【梅本昌男(海外書き人クラブ)】
バンコク在住のフリーライター。タイを含めた東南アジア各国で取材、JAL機内誌スカイワードやアゴラなどに執筆。観光からビジネス、エンタテインメントまで幅広く網羅する。NHKラジオなどへの出演も行っている。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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