
今回は、ペットショップの経営やブリーダー(動物や植物の繁殖や飼育、販売を行う職業)の業務を行っている、あるいはこれからしようとしている方が知っておくべき、そして守るべき法規制についてお話したいと思います。
【写真】山に捨てられていた子猫 声が出せず「エアーニャア」の日々
登録
ペットの販売業は、「第一種動物取扱業」に該当します。第一種動物取扱業を営む場合は、その事業所の所在地の都道府県知事(政令指定都市であればその市長)に一定の事項を申請し、登録を受けなければなりません(動物愛護管理法10条。以下単に「法」といいます。)。
なお、ここでいう「ペット」は、哺乳類・鳥類・爬虫類に限られますので、昆虫や魚類の販売は除かれます。
登録の申請書は地方自治体のホームページ等に掲載されていますので、基本的にはその指示どおりに作成すれば問題はありません。ただし、飼養施設を有する場合は少し複雑になり、施設の平面図や付近の見取図を作成する必要があります。この図面には、ケージ、照明設備、給水・排水設備、洗浄設備、消毒設備、廃棄物の集積設備、死体の一時保管場所、餌の保管設備、清掃設備、空調設備、遮光のため又は風雨を遮るための設備、訓練場といった各種設備の配置を明らかにしなければなりません。つまり、開業にあたってはそういった設備をしっかりと備え付けておく必要がある、ということです。
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また、犬猫の販売業を営みたい場合は、ブリーディングを行うかどうかや、健康安全計画の届出も合わせてする必要があります。犬猫については、幼齢の犬猫の健康安全管理体制、飼養・保管・繁殖・展示方法の計画に加え、販売できなくなった犬猫の取扱についても具体的に計画して、申告しなければなりません。
この登録は5年ごとに更新の必要があり、更新を怠ると無効になります(法13条)。
なお、この登録簿は一般の閲覧に供されることとなっています(法15条)。自治体によってはホームページで公開されていますし、公開されていなくても自治体に問い合わせれば登録の有無・内容を教えてもらえます。
販売時の責務
ペット販売をする場合は、ペットの購入者に対して、そのペットの種類、習性、目的等に応じた適正な飼養方法について説明しなければなりません。この説明は、購入者の知識・経験に照らして、必要となる方法・程度に応じて行う必要があります(法8条)。
また、購入者に対してペットを現物確認させる義務と、ペットの対面販売・必要な情報の提供も義務付けられています(法21条の4)。
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具体的な説明義務の内容については、環境省が「ペット動物販売業者用説明マニュアル」を発行していますので、これを参考にするとよいでしょう。
飼養施設や飼養方法等について守るべき基準
第一種動物取扱業者は、動物の健康及び安全を保持するとともに、生活環境の保全上の支障が生ずることを防止するため、その取り扱う動物の管理の方法等に関し環境省令で定める基準を遵守しなければなりません(法21条1項)。これも、犬猫を販売する場合はハードルが高く設定されており、できる限り具体的な基準を定めることが要求されています(同3項)。
また、犬猫を繁殖し、販売する業者は、生後56日を経過しないものを引き渡すことはもちろん、展示することも禁止されています(法22条の5。いわゆる「8週齢規制」)。
その他にも、感染性の疾病の予防の努力義務(法21条の2)、動物を取り扱うことが困難になった場合に適切な措置を講じる努力義務(同21条の3)、一定事項を記載した帳簿の作成・保存義務(同21条の5)、動物取扱責任者の選任及び研修を受講させる義務(同22条)、獣医師等との適切な連携を確保する義務(同22条の3)、終生飼養の確保を図る義務(同22条の4)など、数々の義務が定められています。
マイクロチップ装着義務
犬猫の販売業者は、犬・猫を取得した日もしくは生後90日を経過した日から30日を経過する日(その日までに譲渡する場合は譲渡の日)までに、その犬猫にマイクロチップを装着させなければなりません(法39条の2第1項,39条の5第1項)。また、マイクロチップが装着されている犬猫を取得した犬猫販売業者は登録変更の手続をしなければなりません(法39条の6第1項)。
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このように、ペットの販売をする場合、様々な義務を負うことになります。これらの規制は、ペットの販売・取扱の環境を少しずつ改善していく過程でさだめられてきたものです。ペットという生き物を取り扱うがゆえに負わなければならない責任とも言えます。ペットにとっても購入者にとってもよい取引ができるよう、各種義務を守っていくようにしてください。
◆石井 一旭(いしい・かずあき)弁護士法人SACI・四条烏丸法律事務所パートナー弁護士。近畿一円においてペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。「動物の法と政策研究会」「ペット法学会」会員。
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