画像提供:マイナビニュース東京建物は、再開発組合の一員として、権利者や地域住民と共に「東京駅前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)」を推進。その事業概要と街区名称を発表する記者説明会を開催した。
記者説明会の冒頭、東京駅前八重洲一丁目東B地区市街地再開発組合 理事長の加藤一男氏が登壇し挨拶を行った。「約25年前、私には小さな夢と希望とがありました」と、本事業のスタートを振り返りつつ、夢が目標に変わり、目標が大きくなるにつれて、「相応の困難を伴うことがわかってきました」と、長い時間との戦いを吐露。しかし、「この再開発を、我々の世代で完結したいという強い想いが、その困難を乗り越える糧ともなってきました」と続ける。
そして、数多くの難題に立ち向かいながら、竣工まで後一年となった今、「我々の目標が形となって、これが次の世代への新しいスタートとして、八重洲がさらに発展すること」に期待を寄せ、関係各位への感謝の意を述べて、挨拶を締めくくった。
続いて、東京駅前八重洲一丁目東A地区市街地再開発組合 理事長 兼 特定業務代行者 代行企業 東京建物 代表取締役 社長執行役員の小澤克人氏が登壇して、「東京駅前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)」の概要および街区名称の発表を行った。
最初に小澤氏は、本再開発事業の立地について説明する。八重洲・日本橋・京橋の頭文字から「YNKエリア」と呼ばれるエリアは、「伝統と最先端が溶け合う街で、進化を続けている東京の最前線」。徒歩圏内に鉄道が集積しており、都内主要エリア・地方都市・国際空港を含むあらゆる立地への圧倒的な交通利便性があり、オフィスのプライム立地としてのポテンシャルを有しながら、江戸時代から続くお祭りや食・アート・ものづくりなどの豊かな文化が今もなお継承され、イノベーションを創出しやすい素地があるという特徴を有している。
さらに、首都高地下化をはじめとした日本橋川再生計画やTokyo Sky Corridor計画、羽田空港アクセス線(仮称)による東京駅から羽田空港へのダイレクトアクセス化、つくばエクスプレスと都心部・臨海地域地下鉄構想の東京駅接続に向けた動きなど、さらなる発展が見込まれており、本事業はまさにその玄関口に位置している。
「約25年という長い年月をかけ、立場や事情の異なる250もの関係権利者の方々と議論を重ね、進めてきた国家戦略特区の大規模な開発」であり、2026年竣工予定の本プロジェクトでは、オフィス、医療施設、劇場・カンファレンス施設、バスターミナル、商業施設などが整備された。小澤氏は「国際都市・東京の玄関口に相応しい都市機能の強化と国際競争力の向上に貢献する」と自信を覗かせる。
ここで、本事業の街区名称が「TOFROM YAESU(トフロム ヤエス)」となることを発表。「TOFROM」は英語の「TO」と「FROM」を組み合わせた造語で、「日本中、ひいては世界中のヒト・モノ・コトがここに集まって繋がり、ここから多様な価値が生み出され、発信されていく場所になってほしい」という思いが込められているという。
「TOFROM YAESU」は、A地区の「TOFROM YAESU THE FRONT」とB地区の「TOFROM YAESU TOWER」といった2つの建物によって構成される。建築デザインは、多様な個性が集積する街並みを八重洲らしさと捉え、箱を重ね合わせた「箱積み」のデザインを採用。様々な役割や人々を支え、繋げてきた街の歴史を感じさせるデザインとなっている、
A地区の「TOFROM YAESU THE FRONT」は、地下2階、地上10階建てのオフィス、商業施設で構成。一方、B地区の「TOFROM YAESU TOWER」は、地下4階、地上51階建てのオフィス、医療施設、劇場・カンファレンス施設、バスターミナル、商業施設、住宅などで構成され、八重洲アドレスで最高層を誇る複合施設となる。
本プロジェクトの特徴のひとつが「東京駅との接続性」。「TOFROM YAESU」は、八重洲地下街(ヤエチカ)に直結しており、メインアベニューのほか、大丸側、八重洲通り側と合計3カ所のアクセスが設けられ、充実した地下ネットワークが形成される。
さらに、「TOFROM YAESU TOWER」の地下には、八重洲地下街から同じフロアでアクセスできる「バスターミナル東京八重洲」を設置。合計20バースという国内最大級の高速バスターミナルとなり、交通結節機能の強化にも貢献する。
また、「TOFROM YAESU」では、個性が繋がり、新しきが生まれる、「東京ならでは」を発信する商業施設を整備。江戸から続く八重洲の多様な食文化を継承するとともに、最先端が重なり合いながら、「八重洲ならでは」のにぎわいが溢れ、個性豊かな飲食店舗を中心に約70店舗がオープン予定となっている。また、「TOFROM YAESU TOWER」1階には、屋内広場「檜物町スクエア(ひものちょうスクエア)」を整備。イベント開催や神輿の展示をはじめとした地域の魅力を発信し、まちのにぎわいに貢献する。
劇場・カンファレンス施設は、「TOFROM YAESU TOWER」3〜6階に整備される。約800名の収容が可能な東京駅前初の段床型劇場や、大型の展示会・講演会などを実施できる平土間ホール、各種会議・交流イベントが実施できる会議室などを完備。演劇・ミュージカル・音楽ライブなどの催事を誘致し、東京駅周辺エリアで不足していたエンタテインメントを通じた文化発信拠点を整備するとともに、MICE(国際会議、展示会・イベント、講演会、セミナーなどの催事)を誘致することで、YNKエリアのビジネス交流機能のさらなる拡充に取り組んでいくという。
そのほか、「TOFROM YAESU TOWER」6・7階には、「日本医科大学八重洲健診ステーション」を整備。また、「TOFROM YAESU THE FRONT」の屋上階には、東京駅を眼下に望む「Rooftop Terrace」が設置され、オープンエアの開放感を感じてリフレッシュできるほか、アフターワークではコミュニケーションを促進するスペースとしての利用も想定されている。
オフィスエリアでは、通常のオフィスフロアに加えて、レンタルオフィスやセットアップオフィスなど多様なニーズに応える選択肢を提供。「TOFROM YAESU TOWER」においては、スマートフォンによるタッチ入退館・入退室システムを国内賃貸オフィスでは初めて導入しており、セキュリティの向上とともに、アプリの起動なしでシームレスな入退館を実現する。
○■ウェルビーイングを向上させる多彩なサービス・機能・空間
近年、人材戦略は多くの企業で大きな経営課題と認識されているが、その観点においても「ウェルビーイング」は重要な考え方となっている。国の政策の方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2024」では、中長期のビジョンのひとつとして「誰もが活躍できるウェルビーイングの高い社会の実現」が盛り込まれるなど、日本全体の成長戦略の重要課題の一つとしても位置付けられている。
「TOFROM YAESU」でも、ワーカーが心身ともにリフレッシュすることができる「YAESU SKY LOUNGE」、“心と身体の健康”と“人や社会との繋がり”を創出する「Wab.(ワボ)」をはじめ、ワーカーのウェルビーイングを向上させるサービス・機能・空間が数多く実装される。
「TOFROM YAESU TOWER」41階には、東京湾を一望でき、地上約190mながら多彩な緑に囲まれた心地よい空間で、心身ともにリフレッシュできる「YAESU SKY LOUNGE」を整備。個室空間「RE:TREAT Room (リトリートルーム) powered by Upmind」では、全国の源泉を凝縮抽出・モバイル化するクラフト温泉の特許技術を持つLeFuroと協業し、温泉ミストによる湯治体験が気軽にできる「喫泉室」として利用できるほか、国内最大のマインドフルネスアプリを手掛けるUpmindが監修・運用する瞑想・仮眠プログラムが提供される。
そして、「TOFROM YAESU TOWER」13階には、入居企業のワーカー向けのサポート機能を持つ共用スペースであるウェルビーイングフロア「Wab.」を整備。産地、生産者、素材、調理方法などにこだわったおいしく身体にも良い食を通じて、ワーカーの生き生きとした生活をサポートする食堂・カフェ&バー・ビュッフェカウンターを用意。また、サードプレイスとして多様な過ごし方を選択できるラウンジ空間、コミュニケーションの促進に寄与するイベントキッチンやイベントスペース、緑化やアート・お茶に特化した会議室、脳科学で実証された音楽と映像による刺激で集中・リラックスできる個室ブースも。パウダールームや搾乳室などの機能性と気持ちの再スタートを支援する空間デザインを持つトイレ、季節感を感じられ気分の切り替えを促すエレベーターホールなど、ウェルビーイング向上に資する多彩な取り組みが提供される。
なお、「Wab.」では多様なパートナーとともに「免疫ケアフードメニューの提供」「お茶を通じたワーカーのウェルビーイング向上支援サービス『オフィスで茶の間』の提供」「環境再生型農業により生産された地球にも人にも優しい食材の提供および生産者との繋がりの創出」など、様々なウェルビーイング向上施策が実施される。
竣工を来年であるにも関わらず、すでにオフィスの内定率が60%に達している点について、東京駅前という立地特性や充実した食事環境を有するエリア特性に加えて、小澤氏は「ウェルビーイングを向上させる各施策について、多くの企業から評価されている」との見解を示し、「このまちの持つ豊かな文化を礎に、人間のウェルビーイングにとどまらず、社会や地球のウェルビーイングを同時に実現し、豊かな未来を繋ぐ、新たなまちづくりを、ここ「TOFROM YAESU」から創出してまいります」との意気込みを明かし、発表会を締めくくった。(糸井一臣)