
「ある種の人間らしさというか、人間のエグみ。今までそういう役とは距離があったので。今回の役ができることはうれしかったですね」
と、放送中のドラマ『アポロの歌』に主演している佐藤勝利。手塚治虫さんによる壮大なSF青春ストーリー『アポロの歌』('70年)を現代解釈した物語だ。
荒れた大学生を演じる佐藤勝利
演じているのは荒んだ生活を続ける大学生・近石昭吾。幼少期に受けた虐待のせいで愛を軽蔑し、憎んでいる。
「昭吾は特に母親からの愛をもらえなかったんですが、本来はものすごく愛を求めていると思うんです。そんなトラウマに加え、周りの満たされた人たちを否定することで、自分自身を保っている人間。そこは大事にして演じています。
昭吾への共感ですか? “近いキャラクターです”とは言いづらいな(笑)。でも、口数が少ない役って今まであんまりなくて。今回の昭吾が初めてくらいじゃないかな? 僕も普段、そんなにしゃべる人じゃないから、そういう部分は近いかもしれない。あと僕もわりと疑い深いほうだから、そういう意味では遠くはないかな? 僕って、人を信じていないじゃないですか(笑)」
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と、冗談を飛ばしながら笑顔を見せる。
「複雑な表現も多かったりしますが、伝えたいことは一貫して愛。シンプルですが、愛って大事だし、愛は大事にしないといけない。きっと伝わると思っています」
恋愛観の変化「昔は斜に構えていた」
幼なじみのひろみ(高石あかり)にだけは心を許せていた昭吾。しかし、寄せられた好意を拒絶したはずみで死なせてしまう。そして、現れた不思議な女神に“何度生まれ変わってもひとりの女性を愛し、結ばれる前に死ぬ”という啓示を受けた昭吾は、時空を超えながら実らぬ愛に翻弄され続ける……。
「なかなか現実的にはあり得ない設定ではありますが、でも、結ばれたくても結ばれないということは全然あると思う。その業を背負って、繰り返す。他のキャラクターは変化しても、昭吾だけは最初の記憶があって、地続き。この作品では、より愛を深く知るための業なのかなと思っています」
昨秋に28歳を迎えている。年齢を重ねる中での恋愛観の変化を尋ねると、
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「昔は“嫌いなものが一緒だったらいいな”と、ちょっと斜に構えたことを言っていましたね(笑)。だけど、やっぱり好きなものが一緒のほうがいい。マイナスよりプラスを見るというか。好きなものが一緒なら、おのずと嫌いなものも一緒だろうし。好きな子と一緒に、好きな時間を過ごせることがいちばんいいなと思うようになってきました」
新生timeleszは「自然体で楽しんで」
“タイプロ”ことtimeleszの新メンバーオーディション『timelesz project』(Netflix)の最終審査で、新メンバー5人(橋本将生、寺西拓人、猪俣周杜、篠塚大輝、原嘉孝)がついに決まった。選考中には、普段の佐藤のイメージとは異なる厳しさも話題に。
「やっぱりメンバーが決まったり、グループの形が決まったら、その分、見てる人たちに楽しんでもらえないと。というか、楽しんでもらうために何をするかでしか考えてない。そのためのオーディションという選択肢だったので。そういう意味で、素を見せられたのかなと思っています。
僕個人の目標としては、自然体で楽しんで仕事ができたらいいなと思うし、リラックスしている姿もたくさん見せたい。ただ、力を入れないといけない瞬間は絶対に出てくるから、目標としては逆のことを言っておくのがいいのかなと思います」
新たな佐藤、新たなtimeleszから目が離せない─。
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ドラマで喫煙シーンに挑戦!
撮影で印象的だったシーンについて聞くと、「タバコですね。僕は吸わないので、紙タバコの吸い方がわからなくて。僕のSNSでおなじみの、すでに市民権を得ているスタッフの“こてつ”にタバコ指導に入ってもらって(笑)。あるんですよ、持ち方とかいろいろ。練習しました。新鮮で、カッコいいシーンになっていると思うので、そういうところも見どころですね」
取材・文/池谷百合子