『10歳で性被害にあいました 誰にも相談できない』(ちくま サラ著/KADOKAWA)「幼い子どもの間での性被害」。現実に存在することを誰もが知っていながら、まだまだ理解度の低いこの問題を、漫画という表現で発信する『10歳で性被害にあいました 誰にも相談できない』(KADOKAWA)が話題だ。自身の実体験を元にしつつも、大人となり、親、教師、加害者となった子どもなど様々な観点を得て、「性被害に悩んでいる子どもがなぜ大人に相談できないのか?」について丁寧に描き、考えるきっかけを与えてくれる一作。「一人でも多くの人が価値観をアップデートして、性教育を教えることの大切さが伝われば」と語る著者のちくま サラさんにその想いを聞いた。
■『10歳で性被害にあいました 誰にも相談できない』ちくま サラさんインタビュー
【画像】「なーんだ そんなこと!!」生理について母に相談も笑い飛ばされ…――現在、小学生・未就学児等を対象にした「プライベートゾーン等の啓発キャンペーン」など、子どもたちに自分を守るための知識を持ってもらう活動が近年始まっています。本作で登場する、加害者の児童の親が“スカートめくりとか覗きとか 私が子どもの頃は普通でしたよ?"と言うシーンや、男性教師の態度などを見ると、知識のない大人にも必要な教育ではないか、と思わせられました。現在始められている、子どもたちへの性教育についてのご意見をお聞かせください。
【ちくま サラさん】色々な活動やキャンペーンが広がっているのはとても良いことだと思うのですが、長い目で見たらまだまだスタートラインでしかありません。そして、興味のある人だけが情報を収集している状態なので、興味のない大人は昔の価値観のまま「なんだか知らないけど最近はエロ規制が厳しい」とか「自分自身もちゃんと大人になったし、わざわざ性教育を変える必要はないだろう」という認識であることが問題だと感じています。これには、一人でも多くの人が価値観をアップデートし、周りに広めていくしかないと思います。私も、私の作品を読んでいただくことで少しでも多くの人に性教育を教えることの大切さが伝わればいいなと思っています。
――ひどい体験をした主人公のなるみちゃんですが、大人になり母になりと成長していく中で、人のために声をあげたり、自身の母に思いを寄せ、考えることもしています。そんななるみちゃんはどんな女性でしょうか?
【ちくま サラさん】繊細で正義感が強く、思慮深い。半面、年齢相応な部分もある。小学生当時の私とかぶる部分が多いです。正義感が強いと割を食うことも多く、結果私はスレた大人になってしまいましたが、スレずにまっすぐなまま大人になったらこうなるだろうなと考えた女性です(笑)
――本作の中で、ちくまさん自身の印象に残っているエピソードや一場面を教えていただけますか?
【ちくま サラさん】性被害の事件ももちろん大事なのですが、個人的には親子の関係も大事だと思っていて。特に、「子ども視点で見た親」と、「親視点で見た親」の違いは、私自身が親になっていなかったら絶対に描けないエピソードでした。なるみがみどり(母親)に対して思っていたこと、執着していたことを、最後に手放せたのは、私の中ではとても大切なシーンです。
――ちくまさんが本作で描きたかったことや込めた想いを教えてください。
【ちくま サラさん】最初に元漫画を発信した際に、「煽りではなく純粋に疑問なんですけど、なぜ誰にも相談できなかったのですか?」というコメントを複数いただきました。なので今回はそれをサブタイトルにし、性被害に悩んでいる子どもがなぜ大人に相談できないのか?という部分を特に丁寧に描きました。また、性被害にあったり、性被害を目撃した時に、どう行動すべきかの正解を一発で出すことがいかに難しいかという部分も伝えたかったです。
――最後に本作を手に取る読者のみなさんに向けたメッセージをお願いいたします。
【ちくま サラさん】今までの文章を読んでいただければわかる通り、色々な人物が登場し、大事なシーンもたくさんあります。単純に事件が起きてスカッと解決!という漫画ではありません。頑張って描いたので、ぜひお読みいただき、色々なことを考えるきっかけにしてほしいです。