
「大企業に賃上げが広がれば、自然と中小企業や自営業者にもその波が広がる」と信じられているが、それってホント? ここ数年の春闘では歴代最高水準の回答を得ているのに、実質賃金はいまだマイナス。そんな不思議なニッポンのリアルな賃金事情を全力調査!!【みんなの給与明細 2025年 春闘ど真ん中Ver. Part3】
※本特集に出てくる年収やボーナスは、額面の金額です。また、すべて個人に対する取材によるもので、職種や業界の平均値ではありません。
【アンケート】20〜60代の男性会社員500人に聞いた「働く男たちの給与調査」
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■賃上げがないなら、自分で稼ぐ! 自営業・経営者
●パイン・カボチャ農業(男/40代後半)
<年収>150万円
<冬のボーナス額>なし【前年比】→
<ベアは?>なし
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栽培した野菜や果物はJAに卸すほか、贈答用などの個人販売、あるいは直売所に卸すこともある。全体として薄利な世界である上、新規就農は初期投資がかかるので大変だが、その回収が終わった人は割と稼いでいる印象。
特にパインは普通の農作物と違って栽培に2年かかるので、生育が遅い分、人手がかからず人件費が安く抑えられる。肥料などの経費もほかの作物に比べて低い。そのためほかの作物と比べて利益は大きく、畑さえあればそれなりに稼げる。
副業でタクシードライバーを週2〜3回しており、年間60万〜70万円の副収入を得ている。
●社会保険労務士(男/40代半ば)
<年収>1800万円
<冬のボーナス額>なし【前年比】→
<ベアは?>なし
やはり士業はやり方次第では稼げる仕事だと思う。特に社労士や税理士は顧客企業と長くお付き合いできる資格なのでなおさらだ。自分の場合は介護業界特化型の社労士と、介護のコンサル事業をおよそ半々で手がける複業形式。ただ、24時間365日休みはない。
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印象として、社労士は経営が上手な事務所とそうでない事務所の格差が大きい。開業するまでの修業期間は驚くほど低賃金で雇用され、繁忙期には長時間残業も珍しくないなど、労働関係の法令に精通する社労士なのにブラックな労働環境がはびこっているというのはよく聞く話。
●韓国雑貨のEC運営(男/30代前半)
<年収>450万円
<冬のボーナス額>なし【前年比】→
<ベアは?>なし
M&Aの売り手と買い手をマッチングするサイトを眺めていたら、韓国雑貨のEC企業が目に留まり、それを衝動買いする形で脱サラ、独立。買収価格は200万円だった。しかしこの会社がひどく、これまで素人経営者の間を5度にわたってたらい回しにされてきたいわく付きだった。
以前はただ『アリババ』で仕入れた物を売っているだけの時期もあったが、自分は正直に商売がしたいと思い、実際に韓国まで行ってメーカーと交渉し、代理店契約を結んだ。それでも韓国モノというだけで売れる時代は過ぎ去り、客の好みが細分化。事業の難易度は上がった。
●空手教室運営・柔道整復師(男/30代半ば)
<年収>460万円
<冬のボーナス額>なし【前年比】→
<ベアは?>なし
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まだ道場の収入だけでは食えないので、日中は高齢者施設でパートの仕事をやっている。その後道場で生徒を指導するが、自前の道場を持っていないため、場所の予約や管理の事務作業が意外と面倒。
道場の収入は月謝のほか、昇級審査の受審料、空手用品の販売などがある。たまに勝手に中古の防具を探してくる保護者もいるが、うちではお断りしている。
また、空手には伝統空手だけでなく、フルコンタクトなどさまざまなジャンルが混在している。皆、独自ルールを作ってやっているので、例えば自分が新たな流派を勝手に立ち上げるのも自由。
●飲食店 店長(男/30代前半)
<年収>570万円
<冬のボーナス額>なし【前年比】→
<ベアは?>なし
経営母体は農業企業で、もともとは農園でも働いていたが、その会社がフルーツパーラーをつくると聞き参画。形式上は企業の一事業だが、部門は独立採算制で、自分が店舗の経営をしている。最初は給与ゼロからスタートし、店舗の売り上げ増に従って少しずつ手取りが増えている。
飲食はとにかく人材確保が大変で、熟練バイトが離れないように、積極的に昇給している。
食いぶちとしては十分だが、副業として、ほかの地域で飲食店のコンサルティングもやっている。しかし飲食産業は通年多忙で肉体の負荷も大きいため、なかなかハードだ。
取材/井澤 梓 伊藤将史 佐藤 喬 田口ゆう 友清 哲 西田哲郎 東田俊介 室越龍之介 茂木響平
文/友清 哲 イラスト/服部元信