「双子姉妹」葛西優奈・春香がノルディック複合女子で快挙 オリンピック正式種目採用の夢を胸にさらなる成長を誓う

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2025年03月05日 07:21  webスポルティーバ

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ノルウェーで行なわれているノルディックスキー世界選手権(現地時間:2月27日〜3月8日)の複合女子(マススタート)で、日本の葛西優奈が日本勢初の優勝を果たし、双子の妹・春香(ともに早稲田大)も3位に入り、そろって表彰台に上った。

幼少期からノルディックスキーに打ち込み、互いに切磋琢磨しながら世界のトップクラスの領域に足を踏み入れたが、まだまだ成長過程。主戦場とする複合女子個人、また複合混合団体はまだ五輪の正式種目に未採用だが、ふたりは欧州の強豪国以外の自分たちが頑張ることで、「雪上の夢舞台」実現に近づくという思いも抱えている。

日本でも名が広く知られるようになった今回の快挙を出発点に、これからも高みを目指していく。

【「IOCへのいいアピールにもなっていく」】

 2月27日からノルウェーのトロンハイムで開催されているノルディックスキー世界選手権。27日に行なわれた複合女子マススタートで、世界選手権3回目の出場となる葛西優奈が日本女子として初の優勝を果たし(男子も含めた日本勢の個人優勝は1999年ジャンプ・ノーマルヒルの船木和喜以来)、双子の妹・春香も前回の2023年大会に次ぐ3位でダブル表彰台の快挙を果たした。

 マススタート女子は、先に一斉スタートによる距離5km(クロスカントリー)、後半にジャンプ(ノーマルヒル)1本を行ない、それぞれの記録をポイント化して競う方式。この種目では今年2月7日のワールドカップ(W杯)・エストニア大会で優奈がW杯初優勝を遂げ、春香も2位に入り姉妹でワンツーフィニッシュを果たしており、ふたりはその自信を持って世界選手権を迎えていた。

 最初の距離ではともに先頭集団でレースを進め、優奈はトップのギダ・ウエストボルドハンセン(ノルウェー)に3.6秒差(ジャンプ得点0.9差)の3位につけると、後半のジャンプではわずかな向かい風のなかで96.5mを飛び(ジャンプ3位)優勝。クロスカントリーでは8位だった妹・春香も96.5mを飛び(ジャンプ2位)、5人抜きで表彰台に食い込んだ。

 ふたりはともに、2022年に日本スキー連盟のネクストヒロイン賞を受賞していた有望株で、着実に力をつけた結果と言える。しかし、ノルディック女子複合は非五輪種目。オリンピックでの正式種目化に期待がかけられてきたが、来年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪での採用はなかった。

 その状況を踏まえて、春香は今回の結果の意味を次のように話した。

「マイナー競技なので、今回の表彰台で日本国内の注目度も上げられたらいいなと思います。それに(世界大会で上位を占める)ノルウェーとドイツ、オーストリア以外の私たちが表彰台に上がれたことをきっかけに、もっといろんな国の選手が活躍するようになればIOC(国際オリンピック委員会)へのいいアピールにもなっていくと思います。

 これから、女子コンバインド(複合)もいろんな国が強くなり、表彰台に入れ替わりで上がるのが目標になってくると思います」

 強い思いは、翌28日の複合混合団体でも現れた。

 1国男女各2名、計4名のチーム構成で行なわれるこの種目は、先にジャンプ、その後距離を実施する方式。ジャンプ1本ずつの得点合計を換算したタイム差で後半の距離をスタートし、男子5km・女子2.5kmを走るレース。こちらも現状、五輪種目ではないが、世界選手権では前回大会から採用されている。

 昨季までのW杯や世界選手権ではノルウェー、ドイツ、オーストリアに次ぐ4、5位が定位置となっていた日本代表は、五輪3大会メダリストの渡部暁斗(北野建設SC)、男子W杯総合日本勢トップの山本涼太(長野日野自動車SC)、葛西姉妹で臨んだ。勝負の行方は距離の最終盤までもつれる展開となり、オーストリアにわずか0.2秒及ばず4位。しかし、ジャンプで100mを飛びグループトップ、3走を務めた距離でも力走見せた春香は、納得の様子だった。

「何回もこのメンバーでチームを組んできた中でも、今回は見ている人も面白いし私たちも本当に面白いなと思える試合ができたと思います。五輪採用がないのは強い国が固まっていることが原因だと思うので、最後までどっちが勝つかわからないレースができたのは、五輪(の正式種目になるため)に向けてもいい試合ができたのではないかと思います」

【双子姉妹の切磋琢磨でこれまでも、これからも】

 葛西優奈・春香の双子姉妹は北海道札幌市出身、2004年生まれの21歳。小学生時代からジャンプを始め、中学時代に全日本スキー連盟の女子ノルディック複合強化の合宿に参加して本格的に複合を始めた。高1の時の2020年ユース五輪には優奈はジャンプ、春香は複合で出場したが、最初に頭角を表したのは優奈だった。

 優奈は2021年世界ジュニア複合で個人4位に入り、世界選手権にも出場。2021年12月からW杯に本格参戦すると、2戦目のマススタート、3戦目には「ジャンプ→距離」の順で行なうグンダーセンでともに3位になり、上位に食い込み始めた。

 一方の春香も2022年3月の世界ジュニアで2位になると、初出場したW杯最終戦の2試合はともに2位と一気に飛躍。そして2023年1月のワールドユニバーシティゲームズ(大学生世代の総合競技大会)ではグンダーセンで春香、マススタートで優奈が頂点に立つ形で2種目とも姉妹でワンツーフィニッシュを実現。その後、姉妹は世界の舞台でも競り合う関係になっていく。

 今季のW杯は2月9日までの全12戦で、春香が2位3回、3位4回で総合2位と先行し、優奈は総合4位だったが、2月のマススタートでW杯初勝利を収めた優奈が、その勢いに乗り、世界選手権も制する結果になった。

 ふたりの世界選手権最終戦となった3月2日のグンダーセン(ジャンプ・ノーマルヒル→距離5km)は雨中の状況に苦しみ、最終的には優奈が6位(ジャンプ9位)、春香が7位(ジャンプ7位)という結果に終わったが、今後への手応えをつかむ大会になったようだ。

「ジャンプでもう少しいい位置に付ければ展開も変わったと思いますが、クロカン(距離)も今季は何試合かいい走りができ、どこが自分の弱いところかが徐々に明確になり、今後、どんなトレーニングをしたらいいかがわかってきました。

 来季、また2年後の世界選手権でどんなパフォーマンスができるか楽しみというか、いい刺激になったレースだったと思います」(春香)

「マススタートでは勝ちましたけど、個人的には(後に距離を行なう)グンダーセンでゴールを切った時のほうが『優勝した!』という感じがあると思うので......。そのためには、特にジャンプが重要になってきます。

 ノルウェー勢は最後まで失速しない走りができる強さがあり、彼女たちのようにひとりでも走れ、自分で引っ張っていける力をつけないと金メダルは難しいと思っていますので」(優奈)

 五輪の正式種目ではない現状のなか、ふたりはどのようにモチベーションを維持しているのだろうか。

「優奈と一緒にメダルを持って帰れるのは本当にうれしいですけど、混合団体は本当に悔しい気持ちがいっぱいです。それでも暁斗さんと涼太さんは『メダルは取れなかったけど楽しいレースができた』と言ってくれました。

 徐々にレベルは上がっているので、2年後に向けて一つひとつ積み上げ、次の世界選手権は全種目でメダル取れるように頑張りたい」(春香)

「世界でずっと表彰台に上がり,まだマイナー競技である日本で『こんな競技があるんだよ』と知ってもらうことが五輪(種目になること)につながる第一歩だと思っています。

 五輪種目になると言われていながら、ならなかった時の衝撃は、本当に大きくて『何を目指せばいいんだろう』とまで思ったこともありました。それでも、私たちが(競技を)続けていく意味を、少しでもわかってもらえたらうれしいです。

 でもまだまだチャンスはあると思いますし、自分が出られる時にオリンピックの正式種目になってくれたらうれしいですけど、今後続けてくれる選手のためにもオリンピックがいつか実現するように頑張っていきたいです」(優奈)

 ふたりにとって今回の世界選手権における優勝&ダブル表彰台は、夢に向かう出発点になったと言えることは間違いない。

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