写真 信頼できて心を許せる人が身近にいたとしたら、安心感から頼ってしまうかもしれません。
けれど、柊木真澄さん(仮名・20代後半)は自身の後悔から、「誰かに自分のことを委ねすぎてしまうのは危険だし、やめたほうがいいです」と警告します。
◆お姫様扱いしてくれる最高の彼が「専業主婦」にしてくれた
真澄さんは、中学生の頃から付き合っていた同級生の男性Fさん(20代後半)と結婚。付き合う前からやさしかったFさんが結婚後も変わることなく真澄さんを大事にしてくれたこともあり、幸せに暮らしていました。
「夫は付き合いはじめたときから、『真澄がいてくれるだけでいい』と言ってくれるような人。荷物はすべて持ってくれ、ドアも率先して開けてくれるなど、まるで私をお姫様のように大切に扱ってくれました」
学生の頃から、食事や旅行などのデート代もすべてお小遣いやアルバイト代を削ってFさんが捻出。真澄さんに寂しい思いをさせないようデートの時間も十分に確保しつつ、大手企業へ就職します。
そして観覧車の見える場所で、絵に描いたようなプロポーズを受けたのでした。
「そんな夢みたいな時間は結婚後も続き、夫に勧められるまま専業主婦になりました。
お金に関することはすべて夫に任せ、悠々自適な生活を7年。休日には夫が料理やDIYの腕を振るうのが習慣でしたが、だんだんと休日出勤が増えていったのです」
◆彼がお金を惜しまないのは、自分だけではなかった
そして、女の影がチラつきはじめます。スマホから音が鳴るたびに反応する夫。即座に返信している様子に思わず、「誰?」と尋ねた真澄さんは、予想もしていなかった事実を聞かされることになります。
「夫は、気まずそうな顔で『……ごめん。実は、不倫相手……』と言うのです。一瞬、耳を疑いました。思わず反射的に、『えっ、妻の私に言うこと?』とツッコミを入れたほど。夫が不倫をし、さらにはこんなにアッサリと白状するなんて信じられませんでした」
この時点で、すでに相手の女性にかなり入れ込んでおり、借金まみれですらありました。そのうえ女性のことを詰問すると、むしろ向こうから離婚を切り出されてしまったのです。真澄さんが「2人でやり直そう」と提案もしますが、夫は首を横に振るばかり。
「離婚して不倫相手といっしょになりたいとまで言われてしまいました。そのため、仕方なく離婚することにしたのです。
けれど、結婚後に購入した一軒家には抵当権が設定され、別に500万円以上の借金が発覚。約束してもらえたのは、慰謝料の分割支払いのみでした」
◆専業主婦なのに家事スキルすらも低いままだった
真澄さんは専業主婦として長年暮らしていました。にもかかわらず、掃除や家事についても「無理しなくていい」という夫の言葉どおり、手を抜いてしまっていたのです。
広範囲を念入りに掃除するときには業者を頼み、料理はデパ地下やスーパーの惣菜を活用。空いた時間を満喫してきました。
「ラクで楽しい時間を過ごす代わりに、自分の能力や技術を磨くチャンスを失っていたのです。そのため、私にできることは何もありませんでした。
アルバイトの面接でもハキハキと答えられず、『そういう感じだと、ウチでは無理だね』と言われたこともあります」
真澄さんはそうした体験から、「家事だけでもしっかりやっていれば、ヘルパーや掃除業者への就職もできたかもしれません。それに、お金の流れを把握していれば、もっと早く夫の不倫に気づけたのではないか……」と、後悔を口にします。
◆自立心と虎の子貯金の重要性を痛感
「その後はなんとか、ハローワークで面接の練習を重ね、いまはアルバイトを掛け持ちして暮らしています。
誰かに頼りきってしまうと堕落し、自分の可能性も摘みとってしまうかもしれません。自立心を持って生きること、貯金しておくことは大切だと思いました」
他人に自分のすべてを委ねて生活することは、一見するとラクで幸せそうかもしれません。ただ、誰かにすべてをやってもらうということは、自分は何もしないということ。
自分自身の可能性を潰さないためにも、人に依存せずに自分の足で人生を歩みたいものですね。
<文/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。