上田綺世、遠藤航が途中出場で果たした役割は? チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント開幕

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2025年03月06日 18:41  webスポルティーバ

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 欧州のシーズンが佳境に入ったことを告げるチャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメント1回戦。最大で12人に出場する可能性があった日本人選手は、リーグフェーズ、プレーオフを経て、以下の4人に絞られた。

 上田綺世(フェイエノールト)、遠藤航(リバプール)、伊藤洋輝(バイエルン)、冨安健洋(アーセナル、ただし故障でチームを離脱中)。

 現地時間3月4日に行なわれたそのファーストレグには、このうち上田と遠藤が、いずれも交代選手として試合後半に出場した。

 フェイエノールトがホームに迎えた相手は格上のインテル。2022−23シーズンのファイナリストだ。3−5−2の布陣で守りを固め、失点を抑えながら戦うことでリズムを生み出していく、イタリアの伝統的なスタイルを貫くチームである。ボール支配率を高めながら攻勢を掛けるフェイエノールトに対し、インテルはとりあえず引いて構えた。

 フェイエノールトのサッカーはよく見えた。パスはよく回った。国内リーグでは4位と振るわず、監督交代があったばかりのチームとは思えない、いい感じのサッカーを展開。番狂わせが隠岐そうなムードが漂い始めた時、インテルに先制点が生まれた。得点者はマルクス・テュラム(フランス代表)。ワンチャンスをものにする決定力を見せつける形となったが、それはたフェイエノールトに欠ける点であることが鮮明になった瞬間でもあった。

 フェイエノールトこの冬、エースストライカーのサンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)をミランに売却。上田に出場のチャンスが回ってきたかに見えたが、その上田はプレーオフのミラン戦でケガに見舞われる。この日、先発を飾ったフリアン・カランサ(元U−17アルゼンチン代表)も存在感を発揮できず、時間の経過とともに決め手不足が露わになっていった。

 ケガから復帰し、ベンチ入りメンバーに名を連ねていた上田の投入を期待していた矢先、インテルに追加点が生まれた。スコアラーはラウタロ・マルティネス。テュラムと2トップを組むアルゼンチン代表が、またしてもフェイエノールトのアルゼンチン人FWとの格の違いを見せつけることになった。

【ビッグチャンスを逃した上田】

 ここでフェイエノールトのロビン・ファン・ペルシー新監督は腰を上げた。後半14分、上田をピッチに送り込んだ。すると、すぐチャンスが上田に巡ってきた。

 GKのキックを左ウイング、イブラヒム・オスマン(ガーナ代表)が収め、イゴール・パイション(U−23ブラジル代表)につけると、トップを張る上田はその瞬間、動き出した。シュートのイメージを作り、膨らみを持たせるような動きでラストパスを待った。

 ところがパイションからのパスは直接的で、縦に速すぎた。スタメン選手とピッチに入ったばかりの交代選手と、意思の疎通が図れなかったプレーと言えばそれまでだが、日本人としては、"もう少しいいパスを出してやれよ"と、ブラジル人FWに注文をつけたくなるシーンでもあった。

 直後、インテルにPKが与えられるも、ピオトル・ジエリンスキ(ポーランド代表)のキックは失敗に終わる。3−0になれば試合は終わったのも同然だった。フェイエノールトにはまだツキがある、1点を返せばセカンドレグが楽しみになる――。

 そんなことを考えていた後半25分、上田に絶好のチャンスが巡ってきた。逆襲からオランダ人MFハイス・スマルからきれいな縦パスが、前線をいく上田の足下に送られた。インテルCBステファン・デ・フライ(オランダ代表)と上田は1対1になっていた。スピードに乗っているぶん、上田が有利に見えるマッチアップだった。

 まさに見せ場到来。決めれば名声を高めるビッグチャンスだ。日本人観戦者は前のめりになったはずだ。

 ところが上田は、この勝負に完敗する。足下のボールをデ・フライにきれいに奪われてしまった。せめて、かわしてシュートまで持ち込んでほしかった。ドリブル力、相手の逆を取る術のなさが露呈した瞬間だった。三笘薫(ブライトン)ならいけたのではないか。ない物ねだりと承知しながらも、三笘のチェルシー戦、サウサンプトン戦のスーパーゴールと重ねたくなった。

 試合は0−2で終了。フェイエノールトがアウェーで行なわれるセカンドレグで逆転する可能性は2割あるかないかだろう。だが、ジュゼッペ・メアッツァで得点を奪えばアピールにつながる。欧州を代表する5つ星スタジアムに、上田は爪痕を残してほしいものである。

【アジアからは4人の選手が出場】

 一方、リバプールの遠藤は後半34分という試合が押し詰まった時間での交代となった。パリ・サンジェルマン(PSG)とのアウェー戦。遠藤の出場時間は上田の半分にも満たなかった。ところが0−0で推移していた試合は、そこから動いた。

 PSGが終始、優勢を保ちながら推移していた一戦。何度となく訪れた決定的なピンチをGKアリソン・ベッカー(ブラジル代表)のスーパーセーブで切り抜けてきたリバプールに、突如、チャンスが巡ってきたのは後半42分だった。

 立役者は、遠藤とともに途中交代でピッチに送り込まれたハーヴェイ・エリオット(元U−21イングランド代表)。GKのキックを収めたダルウィン・ヌニェス(ウルグアイ代表)のパスを左足で鮮やかに流し込んだのである。

 遠藤はこの間、何をしたというわけではなかった。右のインサイドハーフとして、つなぎをそつなくこなしたが、結果的には悪い流れを変える役割を果たすことになった。なによりこの重要な試合の、重要な局面で投入されたということに意義がある。出場時間がほとんど与えられなかった1、2カ月前までと比べれば、遠藤の状況は大きく好転している。

 ただしこのPSG戦のリバプールは、内容では大きく劣った。勝利を飾ったことが奇跡のような試合だった。レアル・マドリードとともに優勝候補に挙げられるチームとしては不満が残る内容である。このままでは苦戦必至、前途多難だ。アルネ・スロット監督はチームをどう立て直すつもりなのか。

 バイエルンの伊藤にも、出番が回ってきそうな場面があった。レバークーゼン戦の前半早々、CBキム・ミンジェ(韓国代表)が負傷。治療に時間を費やす間、急ピッチでウォーミングアップに励んだが、結局、キム・ミンジェは回復し、後半44分までプレーすることになった。

 キム・ミンジェがベンチに退く際、代わって入ったのはエリック・ダイヤー(イングランド代表)だった。CBとしての伊藤の序列が高くないことが判明した瞬間だった。もうひとつプレー可能な左SBにしても、この日先発したアルフォンソ・デービス(カナダ代表)とラファエル・ゲレーロ(ポルトガル代表)が立ちはだかっている。出場機会を得ることは、簡単ではなさそうである。

 欧州組の数はおよそ100人とも言われるが、この日、CLの決勝トーナメントにピッチに立った選手はふたりだった。その合計の出場時間も合計42分(追加時間含まず)に終わっている。ちなみに韓国は、先述のキム・ミンジェひとり。ファン・インボム(フェイエノールト)はケガ。イ・ガンイン(PSG)はベンチを温め続けた。アジア人選手としては、インテルのメフディ・タレミ(イラン代表)もフェイエノールト戦のピッチに後半17分から立っている。

 アジア人選手の出世争いにも、目を凝らしたい。

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