
Workman Colorsコレットマーレ桜木町店
Image by: FASHIONSNAP
ワークマンが、Workman Colorsコレットマーレ桜木町店をオープンする。開店の3月7日に先駆けて、メディア向けの内覧会を開催した。トレンド性の強化と、男性客の取り込み強化を掲げる同店の品揃えを通して見えてきたのは、ファッション重視の戦略における課題と、今後の成長に欠かせないワークマンならではの強みだった。
品揃えの約15%をトレンド重視の限定品で構成
同社は、男性客の取り込み強化を主な目的として、これまで「#ワークマン女子」の屋号で展開していた店舗を、「Workman Colors」業態に改名することを1月に発表。コレットマーレ桜木町店は、2020年10月にオープンした#ワークマン女子の1号店で、今回Workman Colorsに改名した初めての店舗となる。改名にあたり、Workman Colors業態の関東初の旗艦店として全面改装オープンした。
店頭で目立つのは、トレンドを意識したというWorkman Colors限定品だ。低価格でトレンド重視のブランドというと「ジーユー(GU)」が思い浮かぶが、ワークマンの広報担当者は、「近年ティーンズに力を入れているジーユーと比べて上の世代、具体的には30代以上がメインターゲットになる」と差別化を図る。基本的にWorkman Colors限定となるトレンド訴求の商品は、クイックレスポンス(QR)を取り入れ、企画から店頭に並ぶまでの期間を約3ヶ月に圧縮しており、Workman Colorsは品揃えの約15%を限定品で構成していくという。ただ単にトレンドを取り入れるだけでなく、UVカットや撥水といったワークマンならではの機能性を付与した商品で、売上を伸ばしていく考えだ。
「アネロ」メーカーとのコラボでバッグブランドをスタート
今回、Workman Colors限定品の目玉として投入するのが、「アネロ(anello)」などを展開するキャロットカンパニーとのコラボレーションによって開発した新バッグブランド「フルクロ(fulcro)」だ。キャロットカンパニーがバッグメーカーとしてこれまで培ってきたノウハウに、ワークマンならではの機能を融合したという。中でも特に意識的に打ち出していくのが、生地や構造、フレームなどに両社のノウハウを結集して作り上げた「たためて自立する」シリーズだ。撥水性の高い生地を用い、ワークマンを象徴するディテールのひとつであるD管や、キャリーバッグと連結可能なベルト、貴重品を入れられるシークレットポケットなど、機能性にこだわったうえ、これまでワークマンのバッグでは用いられていなかった目が細かい生地を使うことでツヤや光沢感を高め、幅広い客層に支持されるデザインに仕上げたという。
ペットボトルのラベルが見えないように深めになっているサイドポケットは、女性のニーズを熟知したキャロットカンパニーならではのアイデア。同社とのコラボは来期以降も継続する予定で、現在は洗濯機で洗えるバッグの企画を進めているという。
さらに、Workman Colorsでは従来のワークマンと一線を画す商品として、美容家電も展開。衣料品同様、ワークマンらしい低価格を強みとして打ち出していくという。
デイリーファッション強化でメンズシェア拡大へ
売り場で目立っていたのはウィメンズ向けの限定品だったが、Workman Colorsの核となるのはメンズだと、広報担当者は話す。トレンド性を重視するウィメンズに対し、メンズではベーシックなデザインの提案を強化していく考えだ。これまでのワークマンでは、ワークを中心にアウトドアやスポーツテイストのアイテムが多かったが、Workman Colorsではデイリーで使いやすいベーシックファッションの打ち出しを進めていくという。
メンズベーシックファッション強化の核となる商品が、「軽くて動きやすい。毎日にちょうどいい服」というキャッチコピーで製作した、「コットンライクストレッチパンツ」と「ウールライクストレッチパンツ」(各1500円)。ストレッチやUVカット、吸水速乾などの基本的な機能を備えつつ、マルチポケットやカラビナループなどのワークウェア由来のディテールを削ぎ落とし、ベーシックなデザインに仕上がっている。
その他のWorkman Colors限定のメンズ商品も、これまでのワークマンのアイテムに比べてシンプルなデザインのものが目立つ。商品のタグには「REGULAR STYLE 普通のシルエット」「WIDE STYLE ゆったりシルエット」などとシルエットが明記されており、試着しなくてもある程度スタイルがイメージできるようになっているのも特徴だ。
一方で、ベーシックファッションの提案がある程度受け入れられた後は、ウィメンズ同様トレンド性の高い商品を投入することも考えているという。実際に現在の店頭でも、カラーボディのアニマル柄やマルチカラーストライプ柄など、これまでのワークマンでは見られなかった特徴的なデザインの商品がいくつか並んでおり、商品名に「モードグラフィックデザイン」と冠したTシャツには名古屋モード学園の学生がデザインしたグラフィックを採用するなど、ファッション性強化の姿勢が伺える。
キッズでは女児向けアイテムを初展開
また、桜木町店で目についたのが、キッズ展開だ。ワークマンとワークマンプラスの店舗ではこれまで、レインウェアなどの機能性に特化したアイテムや、ユニセックスでも着用可能な男児向けアイテムを展開していた。
Workman Colorsでは、それに加えてスカートやフリルデザインのカットソーなど、女児向けデザインのアイテムも展開し、ファッション的な訴求をより強めている。
さらに、これまで顧客からの要望が高かったというキッズシューズも初展開する。現在は「ムーンスター(MOONSTAR)」などのシューズブランドからの仕入れ品を販売しているが、今後は高い機能性を備えたオリジナルアイテムの開発も検討しているという。
キッズでも、大人と同様に機能性が高いアイテムの売れ行きは良く、長年ベストセラーとなっているクライミングパンツは春夏シーズンしか販売していないにも関わらず、大人・キッズ合わせて年間100万着を売り上げる人気だそうだ。
「全方位」で戦うワークマンの今後
先述の通り、Workman Colorsでは、お家芸とも言える機能性ウェアのほか、トレンド性を意識したアイテムも取り揃える。
ただ、トレンド訴求のアイテムに関しては、デザインに改善の余地が感じられることに加え、近年はジーユーをはじめとする低価格ファッションブランドが機能素材を用いたアイテムの展開を増やしており、機能 × ファッションを打ち出すアイテムの競争は今後さらに激しさを増すと考えられる。また、ワークマンが以前から展開していたリカバリーウェアのカテゴリーは、先日東証グロース市場に上場した「テンシャル(TENTIAL)」などの競合も増えている。低価格ファッションという視点では、圧倒的低価格を武器とする「シーイン(SHEIN)」や「ティームー(Temu)」などの中国のEC小売企業も競合となる。
低価格、機能、トレンド、メンズ、ウィメンズ、キッズと、全方位に本格的な訴求を始めたワークマン。今回話を聞いた開発担当者は、「ワークマンらしさがある商品には、ユーザーの支持が集まりやすい」と語った。ワークウェアをベースとした機能性の高さがワークマンの強みであり本質であることが、既に消費者に浸透していることの表れだろう。「ワークマンらしさ」を見失わずに貫き続けることが、ワークマンの今後の成長には欠かせないのではないだろうか。
山田耕史 (Koji Yamada) 1980年神戸市生まれ。関西学院大学社会学部在学中にファッションデザイナーを志し、卒業後にエスモード大阪校、エスモードインターナショナルパリ校でデザインとパターンを学ぶ。ファッション企画会社、ファッション系ITベンチャーを経て、フリーランスとして活動した後、FASHIONSNAPに参加。ファッションを歴史、文化、政治、経済などの視点から分析し、知的好奇心を刺激する記事を執筆することが目標。3人の子どもと過ごす時間が何よりの楽しみ。