浅草・仲見世商店街の「屋根瓦」、戦後80年で初の“全面葺き替え” ピカピカの銅板輝く 浅草寺・本堂の屋根は実は「チタン化」していた

0

2025年03月07日 05:11  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

浅草・仲見世商店街(ゲッティイメージズ)

 国内外からの観光客でごった返す東京・浅草。雷門を抜けると、全長380メートルの仲見世商店街が真っすぐと浅草寺まで続く。この商店街の屋根材が、戦後初となる80年ぶりの全面葺(ふ)き替え工事が実施されることになり、約10カ月をかけてこのほど竣工を迎えた。


【画像8枚】新品ピカピカ! 仲見世商店街の「銅板瓦」、浅草寺・本堂の屋根は実は「チタン化」していた


 13棟、2138平方メートルに及ぶ工事は、交代勤務をしながら24時間体制で行われた。緑青色に染まっていた屋根は新品の銅板瓦に代わった。この瓦も時間がたつにつれ酸化し、緑青の被膜に覆われていく。日に照らされて輝く姿を見ることができるのは今だけだ。


 施工を手掛けたのは、金属屋根を得意とする建設会社カナメ(栃木県宇都宮市)。浅草寺とカナメの関係は2007年、浅草寺本堂の手前に位置する宝蔵門の瓦を「チタン瓦」に葺き替える工事から始まった。


 チタン瓦は従来の土瓦の13分の1の重さでありながら、強度・耐久性に優れ、「いぶし瓦」に近い質感も再現できる。カナメはチタン瓦を、プレス成型屋根としては日本で初めて製品化した企業だ。


 美観を損なわずに軽さ・丈夫さを実現するチタン瓦は、耐震性と景観のどちらも求める浅草寺のニーズに合致し、その後も2010年に本堂、2017年に五重塔の屋根が「チタン化」している。


 くしくも本堂の葺き替えから1年後、東日本大震災が発生した。本堂の屋根にはかつて約8万9000枚の土瓦が使用されており、その重量は2000トンを超えたという。「もしこれらの瓦が地震で崩れ落ちていたら、大変な大惨事になっていました」(浅草寺 執事長 守山雄順氏)


 仲見世商店街の屋根は低く、瓦の落下による危険性も比較的低いことから、これまでと同じ銅板の屋根材を使用することとなった。採用されたカナメの屋根材は、瓦の継ぎ目にあたる「ハゼ」の内部にあえて空間を設けることで、毛細管現象による雨水の侵入を防ぐ構造となっている。また、熱膨張によるゆがみにも耐性があるという。伝統的な資材を使いながら、構造はアップデートした形だ。


 長い歴史を持つ浅草寺周辺の景観を守る上で、建築技術の革新も重要な役割を果たしていた。



    ニュース設定