『メダリスト』声優・春瀬なつみのフィギュアスケート愛がさく裂「生まれ変わったら鈴木明子さんみたいに...」

0

2025年03月07日 07:10  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

声優・春瀬なつみ インタビュー後編(全3回)

 カメラのレンズに向け、小柄な彼女は自然な笑顔を見せる。邪気がなく、意欲に満ち、朗らかだった。人を幸せにする爛漫さというのか。その姿は誰かに重なった。

 フィギュアスケートを題材にした人気アニメ『メダリスト』(テレビ朝日系/原作つるまいかだ・講談社)の主人公、結束いのりだ。

「『いのりちゃんみたい』と言ってもらえることが最近は多くなって、不思議な感じです。人見知りでおどおどするところは似ていると思いますが......」

 春瀬なつみはそう言って、小さく笑う。声優として、結束いのりの声を務める。いのりは、フィギュアスケートに一直線な純真な少女だ。

「演じているなかで、少し寄ってくるのかなというのはありますね。その役に憧れて近づきたい、というか。今までの役にも、たくさんのことを教えられてきました。いのりちゃんを演じることで強くなった部分はあるし、毎日を楽しめる力がついてきました。本人が覚悟と愛を持って、"フィギュアスケートで生きる"と決めていて、それは大人でも難しい。いのりちゃんに勇気をもらい、"私も覚悟を持って生きないと"って思います」

 春瀬にとって、『メダリスト』との出会いは運命的だった。なぜなら、彼女自身のフィギュア愛も尋常ではない。ノービスから選手を見るほどの通で、自身もリンクに通うほどだ。滑ることに人生をかける少女の役は重なった。

 今を時めく声優は、高橋大輔が座長のアイスショー『滑走屋』では応援団長も務める。彼女はフィギュアスケートという競技とどのように出会い、夢中になっていったのかーー。

【五輪の演技を見て滑らずにはいられないって】

ーー2006年トリノ五輪でフィギュアスケートと出会い、高橋大輔さんや浅田真央さんらが活躍した2010年バンクーバー五輪から本格的に虜になったそうですね。

春瀬なつみ(以下同) バンクーバー五輪を見て、滑らずにはいられないって思いました。香川県の実家にいた時で、当時は学生でしたが、スケートリンクに行くのにお小遣いをつぎ込んでいました(笑)。

ーーリンクに通っていたんですか?

(『メダリスト』に登場する)明浦路司先生やいのりちゃんみたいに、最初は習っていたわけではなく、自主練習で。電車でリンクに通っていました。貸し靴の一般滑走で、ひとり黙々と練習していました。とにかくやってみたいって、それだけスケートに魅力を感じたんです。選手になれるとは思っていなかったですけど、"氷の上ってどんな感じ? 体験してみたい!"って。スピンで3回くらい回って......スピンもどきですけどうれしくて。何回も転げながら、あざもいっぱいつくりました(笑)。

ーーその後も続けたんですか?

 地元では2年ほど続けていたんですが、東京に出てからはひとり暮らしで、声優の養成所に通い、生活費も稼がないといけなくて。貧乏だったので、とてもリンクには通えませんでした。だからこそお金をためて、一番安い席を買ってスケートを見に行っていましたね。

【演技を見ている時の私、うるさいです(笑)】

ーーもっとも印象に残っている大会はなんですか?

 2013年、東京・代々木第一体育館で開催されたNHK杯です。私は、地元にいた時からロシアのエレーナ・ラジオノワ選手がすごく好きで。シニアデビューのシーズンに、生で見ることができて感動しました。ノービスやジュニアから選手を応援するのが好きで、その選手がどう成長したか、どんなスケート人生を歩んだのかを感じたいんです。

ーー一人ひとりに物語がありますね。

 家で演技を見ている時の私、うるさいです(笑)。全員応援系で、(ジャンプを)"降りて"って祈ったり、「リカバリーできるよ!」って声に出したり。オリンピックでは"神様、降ろしてください"とかって祈りましたね。

ーーフィギュアスケート愛がすごいです。

 フィギュアスケートと関わる仕事をするには、もっともっと突き詰めたいって思っています。自分のスケートはなかなかうまくならないんですけど(笑)。

ーー最近はリンクでグループレッスンも受けているそうですね。バッククロスも入れられるようになったとか?

 『メダリスト』をきっかけにレッスンを習い始めて、大好きなバッククロスを入れられるようになったんです! ずっとできなかったことができるようになると、"なんで今までできなかったの"とかって思うのがおもしろいですね。でも、体重の移動というかもっとエッジで氷を押さないと、ちゃんとしたバッククロスにはなっていないと思うので、もっと上達したいです。

ーー次の目標は?

 最初の目標だったバッククロスが少しできてきたので、次はスリーターン、モホーク......。でもモホークはできなさすぎて、ずっと手すりとお友だち状態。選手のみなさんはモホークからジャンプを跳ぶので、すごいなって。その次はやっぱりスピンですかね。レイバックが一番好きですけど、難しそう。シットスピンは下半身の筋力が必要。やるからには認定されたいと思うけど......。

【生まれ変わったら鈴木明子さんのような演技を...】

ーー生まれ変わって声優以外の仕事をするなら、結束いのりのようにフィギュアスケーターを目指しそうですね。

 やりたいです、わりと本気で(笑)。やっぱり、子どもの頃からやらないと3回転はできないって聞くので。

ーーどんなスケーターになりたいですか?

 私がなりたいと思うのは、(『メダリスト』の振り付け担当でもある)鈴木明子さんですかね。鈴木さんって"スケートが楽しい"というのを体全体で表現される方だと思うんです。自分が高校生の時、鈴木さんのステップをスロー再生でずっと見ていました。わからないけど、異次元に難しいことはわかりました。難しいことを難しく見せない、踊りの一部にしているのが素敵で。しかも、『キル・ビル』『愛の賛歌』『オペラ座の怪人』とか、めちゃめちゃ幅があります。今回、『メダリスト』でお会いして現役時代の話も聞かせていただき、"こんな話を無料で聞けていいの?"って(笑)。見えない苦労、尋常じゃないプレッシャーがあったのもわかり、リスペクトがさらに深まりました。

ーースケート愛がさく裂しています(笑)。

 もうひとりの憧れは、太田由希奈さん(※2008年現役引退。「氷上のバレリーナ」の異名を取った選手)です。毎月動画で見るほど好きで、腕の動きがすばらしく、腕だけでも物語があります。踊るのが好きな選手で、スピンもレイバックの基本のポジションだけでも、腕の細やかな動きで模様が描かれて......ずっと語れますよ(笑)。

ーーでは最後に、今後10年間の展望は?

 10年後は想像していなくて......。『メダリスト』の前は、10年後に声優をやっているかも不安でした。でも、いのりちゃんが覚悟を持ってやっているんだから、自分も"声優に向いている"って思うことにしたんです。ここで生きる覚悟を決めて、10年後もこの世界でやっていたいですね。

終わり

前編から読む>>

<プロフィール>
春瀬 なつみ Haruse Natsumi 
香川県出身。2014年に声優デビューし、『アイドルマスター』シリーズの龍崎薫役で注目を集める。2025年にスタートした、フィギュアスケートを題材としたアニメ『メダリスト』では、主人公の結束いのり役を務めている。自身もフィギュアスケートの大ファン。マウスプロモーション所属。

    ランキングゲーム・アニメ

    ニュース設定