保育園で熱があったはずなのに、家に帰ると元気で平熱　相次ぐ“お迎え要請”で仕事に支障…「どうしてうちの子だけ？」【小児科医が解説】

地方在住のAさん（32歳）は、2歳の娘を認可保育園に預けながらフルタイムで働く共働きの母親です。ある日、いつも通り娘を保育園に送り、会社に到着して間もなく保育園からの着信が。電話に出ると担任の先生から「娘ちゃん、熱があるので迎えに来てください」と伝えられました。慌てて園へ向かい、娘を引き取ったものの、帰宅後に測ると体温は37.2℃。咳や鼻水の症状もなし。病院へ行っても「特に問題なし」と言われ、薬も処方されませんでした。

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それでも保育園のルールで「解熱後24時間は登園不可」とされており、翌日も仕事を休まざるを得ません。しかも今月は、こうしたお迎え要請は3回目です。前回は鼻水症状があったものの今回は熱もなく、症状もないのに帰されることに疑問を感じ、「どうしてうちの子だけ？」「嫌われてるの？」と不信感が募ります。また頻繁な早退で職場にも迷惑をかけ、このまま仕事を続けられるのか不安が増していくばかりです。

保育園はなぜこのような対応をするのでしょうか。そこで保育園を昨年退職した元園長Bさんに話を聞いたところ、以下のような回答がありました。

保育園では、子どもたちの体調を細かく管理するため、1日に複数回検温を実施しています。私が勤めていた保育園では、登園後すぐ・おやつ前・お昼寝前・お昼寝後など、3〜4回の検温を実施。少し熱が高かった子に関しては、その後1時間ごとに検温していました。

また、服を1枚脱がせる・複数の体温計で測定といった対応をしても、37.5℃以上が続く場合は保護者へ連絡をしていました。これは厚生労働省が作成した「保育所における感染症対策ガイドライン」に基づくもので、一般的に保護者へ連絡する基準となっています。保護者の仕事の都合もあるとは思いますが、集団生活の場である以上、他の園児や保育士への感染を防ぐ必要があるため、丁寧に説明することを心がけていました。

では「保育園では熱があったはずなのに家に帰ってくると熱がない」というケースはよくあることなのでしょうか。小児科医の竹綱庸仁さんに話を聞きました。

ー家と保育園（または他の環境）で体温が異なることは、医学的に起こりうるのでしょうか？ 

子供や大人に限らず、体温が時間帯によって変動することは医学的に自然な現象です。特に子どもは体温調節機能が未熟なため、入眠前や食事の前後、泣いたときなどに一時的に上昇することもあります。一方、家と保育園での体温の違いは、室温や活動量、測定のタイミングなど環境の影響が大きいと考えられます。そのため、この差は医学的な理由よりも環境因子によるものが多いといえますね。

ー保育園では多くの子どもがいる環境のためホコリ（アレルギー）や菌などが影響し、一時的に体温 が上昇するという可能性はありますか？ 

原則的にアレルギー反応で発熱することはほぼありません。ただし、ハウスダスト、ダニなどのアレルギーが原因で喘息発作などを誘発し、せき込みが強くなれば「いきみ」や呼吸筋の疲労などで微熱（37℃後半）が出ることがあります。

ー他に考えられる要因はありますか？ 

体温計測のタイミングが異なれば体温も異なることが一つの原因と考えられます。また他には、体温を測定する方法と体温計の種類が異なっている可能性があります。

手軽に測定できる額の表面で測定する方法や鼓膜温（耳で測定）については、測定の条件により体温計に表示される温度が異なる場合があります。同じ体温計で、同じ環境下で測定した場合には、おおよそ同じ体温を測定できると思いますが、環境や測定者、測定部位が異なると自宅と園で体温の差が出る可能性があることを認識しておく必要があります。

◆竹綱庸仁（たけつな・のぶひと）小児科医　奈良県生駒市にある、たけつな小児科クリニックの院長。「すべては子どもたちのために」をモットーに、一般的な疾患から、てんかんなどの神経疾患、食物アレルギーやぜんそく、日本でも数少ない小児頭痛を専門とするなど幅広い診療を行う。現在は病児保育室バンビを運営する他、言語発達遅延の子どもに言語訓練を行う児童発達支援施設「のびいく」を運営している。今年4月には親と子供が安心して過ごせるカフェ「REPOS」をオープンする傍ら、毎週金曜に「たけつな先生＠小児科」で感染症情報やちょっとした豆知識をYoutubeで配信する、小児科系Youtuberとしても活躍中。

（まいどなニュース特約・長澤 芳子）

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