福島、急速に進むメガソーラー開発=景観被害や土砂流出も―発電所に翻弄の地元住民・東日本大震災14年

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2025年03月07日 07:31  時事通信社

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時事通信社

メガソーラーの造成で削られた山肌=2月2日、福島市
 東京電力福島第1原発事故後、全国で導入が広がった大規模太陽光発電所(メガソーラー)は、同原発のある福島県でも急速に開発が進んだ。一方で、景観被害や土砂流出といった問題も浮上。発電所に翻弄(ほんろう)される住民からは「また苦しむのか」と悲痛な声が上がっている。

 福島市西部に位置し、「百名山」の一つにも数えられる吾妻連峰の一角で2021年11月以降、県の許可を受けてメガソーラー造成のため計約60ヘクタールで森林が伐採されるなど開発が進む。今夏にも発電が開始される計画だが、造成が進むにつれ山肌の露出が増え、市民から景観の悪化や災害の発生を懸念する声が高まった。

 こうした声を受け、福島市は23年8月に「ノーモア・メガソーラー宣言」を出し、24年1月には事業者に対し景観保全や災害対策などを要請したが、同年6月、大雨で土砂が県道に流出する災害が発生した。

 市には多数の苦情が寄せられ「業務に支障を来すほどだった」(担当者)といい、ホームページ(HP)に特設サイトを開設し経緯や対応を掲載したほか、事業者にも厳重注意した。同市では現在、市内の約7割のエリアでメガソーラーの建設を禁止する条例案が提出され、来月の施行を目指している。

 今年2月には、同メガソーラーの事業計画の調査などを目的に設立された市民団体の初会合が開かれ、約140人が参加した。代表を務める東北学院大の松谷基和教授(49)は「事業者の責任主体があいまい。メガソーラー開発が不動産投資のように扱われている」と主張。「景観保全や参入事業者の規制を含めた許可制度の在り方の検討は急務だ」と訴えている。

 事業者側も、緑化に向けた取り組みを前倒しで進めているほか、HPを開設して情報公開にも力を入れているが、住民の不安払拭には至っていない。

 会合に参加した福島市の矢吹武さん(82)は、メガソーラーの建設で変わり果てた吾妻連峰を眺めるたびに心を痛めている。

 「福島県民は原発事故で苦しんだ。ようやく復興が進んできたところに今度はメガソーラー。また発電所で苦しむのか」。 

大雨でメガソーラーの造成地から県道に流れ出した土砂(福島市ホームページより)
大雨でメガソーラーの造成地から県道に流れ出した土砂(福島市ホームページより)
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