「自分たちだけ全て失った」=東電旧経営陣無罪、被害者怒り―原発再稼働へ懸念も・東電強制起訴

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2025年03月07日 07:31  時事通信社

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時事通信社

東京電力福島第1原発=1月27日、福島県
 東京電力旧経営陣の無罪が確定することについて、福島第1原発事故で避難を強いられるなどした被害者からは「自分たちが全て失っただけ」などと憤りの声が上がった。「事故が起きても罪にならないと原発企業が思ってしまう」と、再稼働への影響を懸念する人もいた。

 「無罪はあり得ない」と語気を強めるのは長野県の吉田優生さん(56)。原発事故発生当時は福島県田村市に夫と子どもの計5人で暮らしていた。電源喪失のニュースを見て、子どもと神戸市や山形県、岐阜県などを転々と避難。現在は有機農業作物の宅配などで生計を立てているという。

 津波対策をしなかった旧経営陣を「あまりにも責任感がない」と批判。「誰も責任を取らないという社会を残してはいけない」との思いから刑事裁判の傍聴に足を運ぶこともあった。無罪が確定することに「何だったんだろう。ただ、自分たちが全て失っただけみたい」と言葉を振り絞った。

 福島県郡山市の女性(50)も「最高裁は事故を風化させている」と断じる。同県二本松市在住だったが、放射線量の高さなどを理由に一時、香川県へ避難するなどした。持病が悪化した夫がストレスで子どもにきつく当たるようになり、心身の不調によって長女が入退院を繰り返す事態にも見舞われた。家族の介護や看病に追われる中で、女性自身も「心身ともに疲弊した」と語る。

 「当事者にとっては苦しみが蓄積している」と強調。「自分や家族が同じ目に遭ったらどうなるか想像力を働かせてほしい」と旧経営陣に伝えたいという。

 福島県いわき市の斎藤春光さん(72)は事故発生時、避難したいという思いもあったが、義理の母が体調を崩す懸念との間で心が揺れ動き、悩んだ末にとどまるという苦渋の決断を下した。無罪の判断について「不信感を招きかねない。裁判所の権威が失墜する」と指摘。原発再稼働が進む現状にも「事故をなかったことにしたいんじゃないか」と危ぶんだ。 

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