あらためて説明すると、同作は2017年に始まった音楽原作メディアミックスプロジェクトの映画。過去にTVアニメ2シリーズが制作されている。「イケブクロ・ディビジョン」「ヨコハマ・ディビジョン」「シブヤ・ディビジョン」「シンジュク・ディビジョン」「オオサカ・ディビジョン」「ナゴヤ・ディビジョン」という各地域のメンバーで構成された6チームがラップバトルを繰り広げる内容で、優勝チームが、政権を握る「言の葉党」とファイナルバトルに挑むことになる。つまり本作は楽曲の連なりで構成されていて、その本質は劇映画ではなく、『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』と同じフィルムライブ(フィルムコンサート)である。
このようなインタラクティブシネマの歴史を振り返ると、映画『ヒプノシスマイク』の「映画館で」「その場にいる人たちの多数決」が展開を左右する、というシステムがいかに画期的なことかよくわかる(例外的な存在として1995年に『Mr. Payback: An Interactive Movie』という20分ほどの映画があり、これはCAV収録のレーザーディスクを使ったシステムで、客席に備え付けられたジョイスティックにより、観客が投票する仕組みであった)。
今回は「CtrlMovie」というアプリと、上映装置に付け加えられたハードウェア(Integrated Media Block)が連動するシステムによって可能となった。映画『ヒプノシスマイク』の公式サイトでは、各劇場の各バトルごとに、どのチームがどれぐらい勝ったのかという勝率を示しているが、このデータもアプリを通じて集計されたデータである。
このシステムを使った映画としてこれまでに『Late Shift』(2016)、『Traces of Responsibility』(2024)などが制作されている。2018年、2019年にもこのシステムを使った映画の制作が発表されたようだが、検索した範囲では公開の記録が見つからなかった。開発からそこそこ時間が経っているのに「CtrlMovie」を採用した作品が少ないのは、後述するような理由があるのだろう。