J_News_photo - stock.adobe.com 賃貸物件の初期費用の安さで有名な「レオパレス21」。だがその庶民的なイメージとは裏腹に、同社では壮絶なパワハラが行われているという。元社員らが告発した。
◆経営陣はパワハラを黙殺、被害者には「口封じ」か
「ありえないんですよ、何でわからないんですかあ!」
大手不動産会社「レオパレス21」本社のフロアに、朝昼晩と怒号が響き渡っていた。声の主は同社の執行役員で、財務部長のX氏だ。
財務部勤務の社員によると、このときX氏は机をバンバン叩きながら、大勢の目の前で「私の言うことが聞けないのなら、やめてもらって結構なんです!」と、ある社員をなじっていたという。
「怒鳴られていたのは、延滞金回収や貸倒引当金の算定をしていた社員Aさんです。X氏は彼のやり方が気に食わなかったのか、激しい叱責を数週間にわたり行っていました」
その様子を目の前で見ていた古参の社員は、叱責されたAさんのその後の窮状を話す。
「X氏が来て1か月を過ぎたころ、Aさんは通勤途中や業務中に嘔吐するように。それでもテレワークで業務を続けようと努力していたんですが、Aさんは結局うつ病および適応障害の診断を受け、退社に追い込まれました」
Aさんだけではない。SPA!の取材ではX氏が着任後、わずか1年足らずの間に管理職2人がパワハラで退職したことが確認されている。
◆アメリカ育ち、超大手投資会社を渡り歩いてきたエリート中のエリート
X氏とはどんな人物なのか。元レオパレス21社員は次のように話す。
「彼は’24年3月、コストカッターとして、米投資会社フォートレス・インベストメント・グループ(以下フォートレス)から出向してきた人物です。アメリカ育ちで、ニューヨーク大学を卒業後、モルガン・スタンレーなどの超大手投資会社を渡り歩いてきた生え抜きのエリートです」
しかし、X氏のやり方は到底周りが耐えられるものではなかった。
’24年8月には複数の社員らが、社外と社内のコンプライアンス通報窓口にX氏の行状を記した訴状を送付。それを受けて同委員会が調査を行うと、X氏の所業がさらに明らかになった。
訴状には、1時間以上に及ぶ叱責や「クズ」「アホ」「無能」といった悪口、さらにその後の聞き取りでは複数の管理職が到底こなせない量の納期を求められ、100時間を超える残業を強いられたこともわかった。
とある社員が怒気を込めて話す。
「X氏は、『私が雇われているのはフォートレスだ、会社(レオパレス21)の評価なんて気にしたことがない』と公言するんです。そんな人についていけますか? 経営陣に対しても不信感しか持てません」
◆レオパレス21を買収したフォートレスとの軋轢
ここで、フォートレスとレオパレス21との関係について整理しよう。
フォートレスは経営破綻しそうな企業に投資し、高値で売却するディストレスト投資を得意とし、西武・そごうや宮崎シーガイア、スパリゾートハワイアンズなどを買収したことでも話題になった企業だ。
対してレオパレス21は’18年当時、会社ぐるみで建築基準法違反を隠蔽していた不祥事により倒産寸前まで追い込まれていた。株価も1000円超から100円台まで暴落。
そこでフォートレスが572億円の資金援助を行い、25%以上の株式を取得したことでレオパレス21は倒産を免れた。実質的には買収である。
その後、フォートレスは人事権と決裁権を盾に圧力をかけ始めたという。まず賃貸物件のオーナーとの契約見直しと日本の四大監査法人のひとつに監査を任せるように要求。
監査法人が代わると財務関連の扱いが大きく変わる。移行には通常、数年はかかるが、これを1年あまりに短縮するため執行役員としてX氏が送り込まれたのだった。
◆レオパレス側は「回答を差し控える」とコメント
訴状を出した社員の一人は言う。
「社員の多くは役員会でX氏が降格もしくは解任されると考えていました。レオパレス21の賞罰規定に照らし合わせると、最低でも降格・降給・出勤停止2か月、同社のハラスメントに対する処分の指針でも、降級・降格が適切な処分とされていたからです」
ところがX氏の処分は業務上の指導として行ったので悪気はなく、反省しているとして厳重注意のみ。
一人の社員を数週間、毎日のように長時間叱責するのが「指導」の範囲であるかは、昨今の企業ガバナンス的に疑問が残る。ましてや、レオパレス21は東証プライムの上場企業だ。
◆“次期社長”の保身のために社員を無視
さらに役員会は退職したAさんにすぐさま見舞金の名目で数百万円を支払った。関係者によれば、「裁判を起こされないための措置だ」という。
また報告書はコンプラ委員会の弁護士経由で持ち込まれたが、役員会は弁護士に対し明確な対応を避けている。
社内ではフォートレスの社外取締役から問題を大きくするなと指示されたとの噂が飛び交っている。同社執行部に近い人物はこう吐き捨てた。
「X氏は次期社長と噂されており、役員会の動きもそうとしか思えない。彼らは保身のために社員の訴えを無視するということでしょうか」
SPA!編集部がレオパレス21広報に問い合わせたところ、「ハラスメント行為の可能性があったことを受け調査を進めている」とし、「関係する人物の保護の観点から、これ以上の詳細は差し控えさせていただきます」との回答を得た。
X氏のコメントを求めるも、「週刊SPA!」校了まで(本件第一報は誌面)に返答はなく、フォートレス本社からも、「調査いたします」などという返信が来たのみであった。
一日も早い真相究明と改善が求められる。
◆X氏が行ったとされるパワハラ内容(一部)
•大きな音を立てて机を何度も叩きながら怒鳴る
•(被害者に対し)皆の目の前で「能力がないんですよ」「ありえないんですよおおおお」「私の言う通りにしてください」などとヒステリックに何度も叫ぶ
•人の顔の前に指を出す。顔に向かって指を向ける
•ピチピチのショートパンツと汗臭いシャツで出社。自転車通勤自慢、トレーニング自慢
•深夜でも休日でも構わずにメールをしてくる。金曜日の終業後に仕事の指示や批判を送りつけてくる
•数週間にわたって皆の前で怒鳴られ続けた社員が通勤途中に嘔吐するようになり、退職
(一部社員からレオパレス21のコンプライアンス委員会に送られた告発文書より抜粋、要約)
取材・文/週刊SPA!編集部 写真/産経新聞社
―[元社員が告発![レオパレス21]壮絶パワハラの全容]―