FC東京は今季、変わることができるのか? カギ握るのは新監督の下、適役を与えられた若きふたりのDF

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2025年03月10日 07:30  webスポルティーバ

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 今季のJ1で流行の兆しを見せているのが3バックのフォーメーションだが、ひと口に3バックと言っても、使い方ひとつで守備的にも攻撃的にもなるから面白い。

 守備的になるのか、攻撃的になるのか。それを決める要素のひとつが、3バックを務める選手のキャラクターだ、と言っていいだろう。一歩間違えれば、実質5バックの守備的布陣になりかねない3バックも、その人選次第では動きのある攻撃的なスタイルを実現することも可能になるからだ。

 そこで注目したいのが、今季FC東京で3バックの左右DFを務めるふたり、岡哲平と土肥幹太である。

 岡は身長186cm、土肥は同185cmと、ふたりはともに恵まれた体格ながら、足元のテクニックやフットワークにも長け、機動力を備えたDFだ。守備時には高さや強さを発揮する一方で、攻撃時のビルドアップでは臨機応変に、センターバック的にも、サイドバック的にも、時にはボランチ的にもプレーすることができる。

 大型選手ゆえの動きの重さを感じさせるどころか、サイドライン際で軽やかに縦への突破を図るシーンなどは、実に壮観だ。

 身長180cm台なかばのセンターバックが並ぶ3バックと聞くと、相手の攻撃をはね返すことを重視した、いかにも守備的な布陣を想像しがちだろう。しかし、FC東京の場合はまったくの逆。むしろ彼らの存在が、柔軟な選手配置で攻撃を組み立てるスタイルを可能にしているのである。

 今季のFC東京は、新たに松橋力蔵監督が就任。昨季まで3シーズンにわたってアルビレックス新潟を率い、ボールポゼッション重視の魅力的なサッカーを確立した指揮官の下、彼らはまさに適役を与えられていると言っていいだろう。

 加えて、岡と土肥をFC東京のキーマンたらしめるのは、ふたりがともにアカデミー育ちのホームグロウン(HG)選手であるからだ。

 岡は、FC東京U−18から明治大を経て、昨季加入した大卒2年目の23歳。土肥は、FC東京U−18から直接トップ昇格を果たした高卒3年目の20歳。経歴と年齢こそ違えども、ともに伸び盛りの有望株である点で共通する。

 今季、HG選手の活躍が目立つFC東京では、直近のJ1第5節湘南ベルマーレ戦で先発メンバーに6人、控えメンバーも含めれば10人ものHG選手が名を連ねた。

 自前で育てた選手がトップで活躍する姿を見るのは、サポーターにとってもうれしいことだろうが、先発メンバーの過半数がHG選手というFC東京にあって、岡と土肥は今のチームを象徴する選手だと言えるだろう。

 近年のFC東京を振り返ってみれば、よりボールポゼッションを重視したスタイルへ舵を切ろうと、アルベル監督、ピーター・クラモフスキー監督を相次いでチームに招き入れたものの、目指すサッカーを確立するには至らなかった。

 いずれの指揮官も、前職のJクラブ監督時には、ポゼッションを主体とする"キャラの立った"サッカーを作り上げていたにもかかわらず、だ。

 だからこそ、同様のスタイルを志向する松橋監督が今季からFC東京の指揮を執ることは、興味深い。

 現時点での進捗状況は、松橋監督の言葉を借りれば、「選手を少しくすぐりながらやっているのが現状」とのこと。チームの伝統的なスタイル、すなわち、縦に勢いのある速攻を武器としたイケイケドンドンのサッカーから急激に方向転換を図るのではなく、「形も大事だが、意識や感度(が大事になる)。そういうところも様子を見ながら進めている」という新指揮官は、「あまり自分の考えていることを押しすぎて、針を振りすぎないように」と苦心の様子を語る。

 はたして松橋監督は、歴代監督が実現できなかったサッカーの確立を成し遂げるのか否か。

 そのカギは岡と土肥、ふたりの若きDFが握っていると言っても大げさではないだろう。

 自身の特長を発揮するに最適な環境を得たと言ってもいい、岡と土肥。彼らふたりが自らの武器を生かし、成長を遂げることがFC東京を強くし、ひいては目指すスタイルを確立することにもつながるはずである。

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