食べている“味”を無線送信→遠くにいる人の口腔内で“同じ味”復元 ケーキや目玉焼きで成功 米国チームが発表

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2025年03月10日 08:20  ITmedia NEWS

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歯の模型を使ってデバイスを装着している様子

 米オハイオ州立大学などに所属する研究者らが発表した論文「A sensor-actuator?coupled gustatory interface chemically connecting virtual and real environments for remote tasting」は、物理的に離れた場所にいる人と味を共有するシステムを提案した研究報告だ。一方が食べている味を別の場所にいる一方に無線伝送し、同じ味を再現するアプローチだ。


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 システムは「e-Taste」と呼ばれ、味を感知する「電子舌センサー」と、その情報に基づいて味を再現する「アクチュエーター」の2つの主要部分で構成している。


 まず、電子舌センサーが食べ物や飲み物の化学物質を検出する。検出対象は5つの基本的な味を代表する化学物質で、甘味(グルコース)、酸味(クエン酸)、塩味(塩化ナトリウム)、苦味(塩化マグネシウム)、うま味(グルタミン酸)である。センサーはこれらの化学物質の濃度を測定し、その情報を無線通信で遠隔地にあるアクチュエーターに送信する。


 送信先であるアクチュエーターシステムは、受信した情報に基づいて遠隔地の味覚情報を再現する装置だ。システムの中心は電磁ミニポンプで、コイルに電流が流れると磁場が発生し、それによって磁石が振動。この振動が薄膜を変形させ、水などの基本液体をマイクロ流体チャネルへと押し出すことで口腔内に届けられる。


 チャネル内には味覚物質(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を含んだヒドロゲルが埋め込まれており、液体がこのチャネルを通過する際に味覚物質が液体に溶け出す。これらのチャネルからの液体が混合ゾーンで合流することで、複雑な味の組み合わせを生成できる。液体の流れを制御し、チャネル内での停止時間が長いほど、より多くの味覚物質が液体に溶け込み、濃度が高くなる。


 この仕組みにより、さまざまな味を混合して複雑な味の組み合わせを作り出すことが可能となる。研究チームは実験において、レモネードやケーキ、目玉焼き、魚のスープ、コーヒーなど、異なる食品の特徴的な味をデジタルに再現し、参加者による識別テストを実施した。その結果、参加者たちは86.7%という高い確率で、システムが生成した味から正しく食品の種類を識別することに成功した。


 この研究成果は、科学雑誌「Science Advances」に2月28日付で掲載された。


 Source and Image Credits: Shulin Chen et al. ,A sensor-actuator-coupled gustatory interface chemically connecting virtual and real environments for remote tasting.Sci. Adv.11,eadr4797(2025).DOI:10.1126/sciadv.adr4797


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2



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