好調の「資さんうどん」が都内1号店をオープン。業界首位「丸亀製麺」の脅威になるか

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2025年03月10日 09:11  日刊SPA!

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資さんうどん
うどんチェーン市場で首位を独走する丸亀製麺。
売上は1149億円(2024年3月期)と前年比(+127億円、+12,4%)と成長著しく過去最高を更新中である。店舗数も840店舗(2025年3月末時点)とダントツだ。

1位丸亀製麺と2位のはなまるうどんとでは、出店数で2倍以上、売上で3倍以上と大きな差があるのが現況だ。そういった環境の中、首位の丸亀製麺を脅かす存在になるかもしれないのが、資さんうどんである。

◆すかいらーく傘下に加わり成長を続ける資さんうどん

2024年10月にすかいらーくの傘下に入り、絶大な支援を受けながら全国展開を目指している。24時間営業と多様なニーズに対応した豊富なメニューで行列ができる店だ。

現在、売上約160億円と丸亀製麺からすれば小規模ではあるが、関東に進出した店舗の行列ぶりを見ると、その内に驚異の存在となるはずだ。

九州のソウルフードと異名を持つ、資さんうどんの出店を心待ちにしている人は各地域で多い。すかいらーくは、所有するセントラルキッチンや物流網などサプライチェーンのインフラを活用し、成長速度を早めていくだろう。

今年度内に首都圏を中心に21店舗の資さんを新たに出店する計画で、出店ペースを2026年以降は更に引き上げ、5年以内に200店舗超を目指すという。

店舗数だけを見れば872店舗の丸亀製麺に対し、殆どが大型店で販売面積は大規模ではあるものの、74店舗の資さんうどんとは大きな差があるのが現状だ。

外食売上3位、すかいらーくの傘下に10月加わったばかりで、これから成長業態として期待される資さんうどん。

一方、外食売上7位、トリドール傘下で中核業態である丸亀製麺。双方とも、多業態・多店舗を展開する企業の傘下である点は同じだが、グループ内でのポジショニングと成長フェーズは異なる。今後、うどん市場でのシェア拡大に向けた戦いは熾烈になりそうだ。

◆圧倒的な数字を見せる丸亀製麺

丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスは、売上2320億円(2024年3月期決算)の成長著しい外食企業である。

傘下でコア業態である丸亀製麺は、売上1149億円とグループの約50%を占めており、事業利益も183億円(前年同期比116億円、59%増)と、かなりの伸長度を見せている。事業利益率16,0%は驚異の収益力だ。

直近の業績も好調で、今期(2025年3月期4月〜12月累計)の売上も972億円(前年同期比+12,1%)、事業利益159億円(前年比+15,4%)と増収増益で過去最高を更新中だ。

トリドールは現在、21のブランドを展開しており、適切なポートフォリオマネジメントができるように、モニタリング体制を強化している。

各ブランドを資本効率性、収益性、成長性で把握し、投資に対して優先順位付けすることも怠らない。

◆丸亀製麺の強さは“人”にあり

丸亀製麺のオペレーションはDXに依存せず、人を大切にするトリドールの精神が社内に浸透しており、従業員が経営に参画する体制を構築しているのも強みのひとつだ。

セルフサービスのスタイルではあるものの、単にうどんを提供するだけでなく顧客に感動価値も提供するなど演出力の強化に力を入れている。従業員にもモチベーションの向上に向け、麵職人制度を導入し、労働意欲を喚起に力点を置く。

麺職人の全店配置による品質訴求を徹底しており、2024年2月に全店に麺職人の配置を完了している。資格取得後もそれに満足せず、技術向上のため、日々研鑽を積む社風のようで、こういった強固な人的資源も競争優位の源泉だ。

お客さんも自分が注文した料理の出来上がりを行列に並びながら待っているが、その間、製麺・調理シーンを見て楽しんでいるから待つ間も苦にはならない。

◆店舗改装と商品開発も順調

調理シーンだけでなく、生地熟成庫、小麦粉見本、製麵機の製造シーンなどを見やすく配置されている。

全店に製麺所を設置したうどん店は、他店にない明確な差別的要素になっており、これらが2位以下を引き離す原動力になっているようだ。

テイクアウトなどの新たなオペレーションに対応した改装と、本格的な製麺所の風景を再現した改装を同時に実施し、改装した店舗売上は改装前と比較して、平均15%以上増加しているようだ。

肝心の商品力も、季節ごとのフェア商品をさらに強化しており、人気商品、新作を続々投入しており飽きの来ないようにしている。

丸亀うどん弁当、丸亀シェイクうどん、丸亀うどーなつなどテイクアウト売上も売上構成比12%と好調だ。基本メニューも広げす過ぎず、適切に絞って運営効率を高めており、これが事業利益率16%と高収益の要因だと推察する。

◆客の8割がリピーター。支持を集める資さんうどん

九州を中心に展開し、24年10月にすかいらーくの傘下に入り全国展開を目指す資さんうどん。

2024年度売上は160億円、営業利益6億円で、今はこの規模だが、計画の出店スピードからすれば、リーダー企業である丸亀製麺に対し、脅威な存在になるのは間違いないだろう。

昨年12月に関東1号店として開業した千葉県の店舗は1日当たり売上200万円以上、客数2000人以上が訪れる盛況ぶりで、その勢いそのままで東京都内にも初進出した。

1976年に北九州市で創業した資さんうどんは、顧客の8割はリピート客であるほどお客さんの支持は高い。柔らかくもちもちした麺と手間を惜しまず鯖や昆布・椎茸などから丁寧にとった黄金の出汁が自慢だ。

メニューも100種類以上とバリエーション豊かで丼物もデザート(ぼた餅)なども充実している。また、薬味コーナーではとろろ昆布も食べ放題だ。

◆“ファミレス型うどん店”として差別化を図る

東京1号店の両国店は駐車場がなく、ちょい飲み需要も期待しており、飲み客に対応できるメニュー構成になっている。

うどんだけでは物足りないお客さんに対して、丼物などご飯類を充実させている点は丸亀製麺との明確な差別化だろう。

資さんうどん人気No.1メニューが肉ごぼ天うどん770円(税込)とのことだが、うどんと丼ぶりのセットの組合せもバリエーション豊かで、価格も1,000円以下とリーズナブルで人気だ。

朝食メニューも充実しており、また、飲み客にもおでんや酒の肴も用意されて好評で、朝・昼・夜・深夜の時間帯をフルに活用している店舗政策はさすがだ。

郊外型の広めの店を中心に展開中で、セルフサービス店が多い中、案内、会計以外はフルサービスで対応している。落ち着いた雰囲気で食べられて、家族でまた行きたいと思わせるファミレス型うどん店だ。

ローカルチェーンだった頃から有するお客様から支持される品質やサービスを守り、且つ、磨きながら、うどん市場のシェア拡大を虎視眈々と狙っている。

◆不足する業態はM&Aで補うすかいらーく

すかいらーく本体の2024年12月決算は、売上4,011億円(前年比+463億円)、営業利益242億円(前年比+125億円)、営業利益率6,0%(前年3,3%前年比+2,6%)と増収増益となり好調に推移している。

特に利益率の好調要因は、主要経費の原価率が物価高騰の煽りを受けながらも、約3000店規模の調達でスケールメリットの発揮、10カ所ある自社工場による食材の内製化、物流インフラの活用、適切な粗利ミックスで32,6%(前年、32,4%)と安定的に管理できている点が大きい。

主要財務指標であるROEも8,3%と前年3%から大きく改善し、東証の推奨する8%を達成できている。

すかいらーくは自社で不足する業態は、M&Aを積極的に活用し、スピーディーに傘下に加える経営方針だ。業績が好調な今が、資さんうどん買収の絶好のタイミングだったのだろう。

すかいらーくとしては、資さんうどんが傘下に入ったことで、空白だった領域をカバーできた。多種多様なブランドを傘下に有し、そのブランド・ポートフォリオ管理も徹底している。

◆資さんうどんはすかいらーくの“イチオシ”で間違いない

会長の谷氏が九州に出張する際は必ず行くというくらい惚れ込んだ資さんうどん。

年間売上123億円(23年実績)の資さんうどんの買収金額は240億円とのことだが、事業規模から考えて相当な期待を含めた買収価額だったのだろう。

資さんうどん側も全国展開を考えており、すかいらーくの豊富な経営資源を活用した方が得策だと、お互いの思惑が合致した。

今回、関東進出であれだけ注目され、オープン日の本部スタッフの店舗支援の様子を見ると、よほど資さんうどんに力を入れているのが分かる。関東進出を機に快進撃が始まりそうな気配がする。

すかいらーくは、昨年、売上増大とカニバリ解消を目的に、ガストなど55店舗を業態転換し、売上伸び率146,6%、カニバリ解消が6,6%と結果を出している。

これからも、既存の約3,000店の店舗を活用し、成長ブランドである資さんうどんに業態転換する店が増えそうだ。よりスピーディーな展開を実現しそうで、丸亀製麺も戦々恐々としているのではなかろうか。

<文/中村清志>

【中村清志】
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan

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