ロボタクシー実現への第一歩? 日産の無人運転車両が市街地を走る!

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2025年03月10日 11:10  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
日本で自動運転レベル4の公道走行が解禁されてから2年が経過しようとしているが、今のところ、街で無人走行車を見かける機会はない。実際のところ、自動運転の社会実装は実現可能なのか。日産自動車が横浜市で開催した実証実験に参加し、将来的な無人運転タクシーの実現可能性を探ってきた。


市街地では日本初! ドライバーレス車両が実際に走行



日産は先ごろ、自動運転レベル4の実現に向けた安全性の実証を目的に、横浜市みなとみらい地区で「モビリティサービスに使用する自動運転車両の試乗会」を開催した。



日本では2023年4月の道路交通法改正で自動運転レベル4が解禁となり、各地でドライバーレス車両の実証実験が行われているものの、それらはエリアが限定されていたり、低い速度制限下で行われているケースがほとんど。日産によれば、今回のように市街地を一般交通に混じってドライバーレス自動運転車両が走行する実証実験は日本初のことだという。


日産が実証実験で使用したのは、ミニバン「セレナ」をベースに独自開発している自動運転車両。従来は電気自動車(EV)「リーフ」をベースとする実験車両を使用していたが、セレナベースの車両はカメラ、レーダー、ライダー(LiDAR)を一新。より高性能な車両に進化している。


ハードウェアの構成も変わっている。具体的には自動運転機能に加えて、故障や失陥に対応する冗長システム、個人認証、乗り換え案内、乗降時の安全など無人化に対応する遠隔操作・監視システムなどを新たに搭載した。



例えば冗長システムは、コントロールユニットにステアリングとブレーキユニットを2系統ずつ備え、それぞれが異なる電源系統につながっている。電源系統1にトラブルが起きた場合には、速やかにシステムを電源系統2に切り替えて制御を継続する仕組みだ。



片系統が故障した場合、系統が切り替わったクルマは減速して停車する。この場合もステアリングやブレーキの制御は継続しているため、カーブ中であっても走行軌跡を外れることなく、安全に減速・停車させることが可能とのことだ。

実証実験の仕組み



試乗会は「遠隔型自動運転」というやり方で実施。これは自動運転の実用化に向けた実証実験のために設けられた法規に合わせた手法で、自動運転レベルでいえばレベル2に相当する。



遠隔型自動運転には、遠隔地の運転席において必要な監視、運転操作などを行うという要件がある。そのため日産は、実証実験の実施にあたってグローバル本社内に遠隔監視操作室と遠隔監視室を設け、それぞれに遠隔監視操作者や運行乗降を監視するスタッフを常駐させている。遠隔監視操作者と助手席に乗る保安要員がセーフティドライバーの役割を担うわけだ。


日産が目標とする自動運転レベル4相当の特定自動運行ではなく、遠隔型自動運転による実施になった理由は、「国内事例を見ても、走行場所や速度域など制約の多い特定自動運行は、将来の実用化に向けた実績を積むのに適しているとはいえません。遠隔型自動運転であれば、一般交通の流れのなかでドライバーレスの自動運転車両を混走して走らせるといった制約の少ない実証が可能になると考えました」との説明だった。

自動運転車両に乗車! 乗り心地は?



今回の試乗は、日産グローバル本社からワールドポーターズまで行って戻ってくるというルートで行われた。まずはアプリを使って自動運転車両を予約するところからスタートだ。


自動運転車両の運転席と助手席の後部にはタブレットが備えられていた。シートベルトを締めた後、画面に表示される「GOアイコン」を長押しすれば発車準備完了だ。


公道に出ると一般交通の流れに乗り、実にスムーズな走りを見せてくれる。ブレーキ時や発進時などのペダルの踏み込み量も絶妙で、下手をしたら人よりも運転が上手いかも? と思えるほどだった。聞けば、これは「プロパイロット」などの運転支援技術を作るなかで積み上げてきた知見の賜物だという。



「車線の中を走らせる、カーブを曲がらせるとなった時には、まず、クルマをどう動かしたいかを考え、その動きを実現するハンドル操作はどんな操作なのかを逆算しなければなりません。ブレーキや駆動力、トルクの使い方も同様です。これらの技術はすでに持っているので、あとは環境を認識し、それに合わせてどう運転するのかということを決めてあげれば、人が運転するように滑らかな走りを作ることができます」(日産担当者)


試乗してみた結果としては、すぐにでもドライバーレスの自動運転が実現しそうな印象だったのだが、日産は今後、実用化に向けて3つのフェーズを想定しているという。


フェーズ1は「日常的な自動運転サービス体験の提供」だ。2025年の秋頃には、同じ横浜みなとみらい地区で一般人を対象にドライバーレス走行の開始を予定している。現時点では運転席に保安要員が搭乗する計画で、5台くらいから始め、最終的には20台程度の自動運転車両を走行させたいとのことだった。



周辺住民や観光客など多くの人が利用することは想像に難くないが、日産としては、ここで得られるデータもビッグデータとして集約し、さらなる技術発展につなげていく考えだ。



また、将来的な話として、自動運転レベル4が普及した際には、自動運転車両や遠隔監視システムなどをパッケージ化し、地方自治体やタクシー会社などに提供することも視野に入れているとのこと。無人タクシーの実現に日産が大きな貢献を果たす日も近いかもしれない。



安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら(安藤康之)

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