手に汗握る2cmの戦い 走高跳の女王・B.ブラシッチか地元ヒロイン・A.フリードリヒか 同世代ジャンパーが魅せた名勝負【2009年世界陸上】

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2025年03月10日 12:05  TBS NEWS DIG

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超人たちが34年ぶりに東京へ!今年9月に開幕する「東京2025世界陸上」を前に、これまで歴史に名を刻んだ伝説のアスリートたちを紹介します。今回は2009年世界陸上ベルリン大会の女子走高跳に注目します。ブランカ・ブラシッチ(当時25、クロアチア)、アリアネ・フリードリヒ(当時25、ドイツ)、アンナ・チチェロワ(当時27、ロシア)の3選手が熾烈なメダル争いを繰り広げました。

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同い年のライバルが繰り広げた負けられない戦い

2007年に大阪で行われた世界陸上で芸術的な跳躍を決め金メダルを獲得したブラシッチ。2009年の女王の座も手にするべく突き進むブラシッチに、突然、同い年のライバルが現れました。この年、世界歴代4位の記録(2m06)をマークするなど急成長し、ブラシッチを脅かす存在として脚光を浴びていたのがドイツのアリアネ・フリードリヒでした。そして迎えた2009年世界陸上ベルリン大会。地元の大声援を背に女王の座を狙うフリードリヒと連覇を狙うブラシッチが名勝負を繰り広げました。

女王・連覇か?地元で新女王誕生か!?まさかの伏兵も

決勝は1m87から始めたブラシッチ。ライバルはこの高さをパスしましたが、あえて挑戦しました。静かに跳躍を始め、1回目で見事成功。順調なスタートとなりました。ブラシッチが見つめる目線の先にはフリードリヒがいました。一騎打ちが予想されている女子の走高跳。フリードリヒが登場したのは1m92でした。地元選手ということもあって歓声と手拍子で沸くスタジアムに、「一旦、静まって。静かにして」と要求。静かになったタイミングで跳躍を始め、1m92はクリアし冷静に決勝のスタートを切りました。その後、1m99まで順調にクリアしていったブラシッチとフリードリヒ。一騎打ちになると見られていましたが、思わぬ伏兵が登場しました。ロシアのチチェロワも1m99をクリアし、三つ巴の戦いとなったのです。

2m02に挑むそれぞれのドラマ

最初に跳ぶチチェロワは前回大会の銀メダリスト。2大会連続のメダルに向かって跳んだ2m02はバーに体が当たってしまったものの、バーが落下せず1回目でクリアしました。続いて登場したのはフリードリヒ。大きな声を出し、気合いは十分でしたが1回目は失敗。さらにブラシッチの1回目もなんと失敗となり、唯一1回でクリアしたのはチチェロワだけだったのです。そしてフリードリヒは2回目も失敗。パーカーをかぶり集中している間に、ブラシッチが2回目で成功しました。追い詰められたフリードリヒ、果たして2m02は跳べるのか…。3回目の跳躍準備に入ったフリードリヒはドイツ国旗のネイルが施された人差し指でスタジアムに静寂を求めた後、集中力を高めてスタート。渾身のジャンプでクリアし、雄叫びと共に喜びのポーズを決めました。地元ドイツで金メダルを期待されているフリードリヒの成功に、スタジアムは一瞬で歓喜の声に変わりました。

2m04、女王の貫禄とフリードリヒの決断

バーの高さは2m04に上げられました。1回目は3人とも失敗。チチェロワは過去に1回だけ跳んだことがある高さでしたが、2回目も失敗。そして迎えたフリードリヒの2回目。フリードリヒを後押しするような静けさの中、挑みましたがバーが手に当たってしまい失敗となりました。まだ誰も成功していない2m04。ブラシッチの2回目です。スタジアム内にはすでに手拍子が起こっていましたが、もう1度、自分のタイミングで手拍子を要求します。ディフェンディングチャンピオンのブラシッチが完璧な跳躍でクリア、おなじみのダンスで喜びを表現しました。その後、チチェロワは3回目を失敗し、金メダル争いから脱落。フリードリヒは2m04を回避し、2m06の一発勝負を選択したのです。

2m06、フリードリヒ最後の挑戦

フリードリヒの自己ベストと同じ高さの2m06。跳躍準備に入ったフリードリヒ。右手で握りこぶしを作り、気合いを入れます。その後、目をつぶり集中。そして少し微笑み、人差し指を唇にあて静寂を求めます。2m06に向け、いざスタート。跳び越えたかに見えましたが、その後、無情にもバーが落下し失敗に終わったのです。勝負が決まった後、そこにはすがすがしい笑顔と観客に深くお辞儀をするフリードリヒの姿がありました。一方、2連覇が決まったブラシッチは大喜びでウイニングラン。途中、こみ上げてくる涙と共にグラウンドを走りました。

陸上豆知識 Q.なぜ走高跳は背面跳びなの?

走高跳の主な跳び方は「ベリーロール」「はさみ跳び」「背面跳び」の3種類です。現在、主流になっている跳び方は「背面跳び」。お腹がバーに向いているより、背中がバーに向いている方が手足がバーに当たる確率が低いからです。背面跳びは英語で「Fosbury Flop(フォスベリーフロップ)」と言います。この名前は1968年メキシコ五輪の男子走高跳金メダリストのディック・フォスベリーに由来しています。それまで国際大会で主流だった跳び方は「ベリーロール」だったのですが、フォスベリーはメキシコ五輪で自ら考えた「背面跳び」でオリンピックレコードとなる2m24を跳んで金メダルとなりました。

東京2025世界陸上 棒高跳「この選手に注目!」

【外国人選手】
<女子>
◆ヤロスラワ・マフチク(23、ウクライナ)2m10 ※世界記録
 2023ブダペスト大会・金/パリ五輪・金

※名前の後ろは自己ベスト

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