
わが子の発達状況が心配で、「このまま通常の小学校に通わせてもいいのか」と悩んでいるママは少なくないかもしれません。
文部科学省が2022年に全国の公立の小・中・高等学校を対象に行った「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」。この調査によると、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」児童生徒の割合は、小中学校では8.8%、高校では2.2%でした。これは小中学校の35人クラスでいうと3人程度の計算となります。わが子が含まれても不思議ではない割合ではないでしょうか。
参考:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について|厚生労働省
漠然とした不安があれば、どのような学びの場があるか知ることから始めたいところです。そこで障害児支援事業や障害者就労支援事業を行っているダンウェイ株式会社の高橋陽子さんに詳しくお話を聞きました。
特別支援学校や特別支援学級、その違いは?
――特別支援学校と特別支援学級は、初めて聞くと違いがわかりにくいと思います。まずはこれらについて教えてください。
高橋陽子さん(以下、高橋さん):特別支援学校は障害のあるお子様が通う独立した学校です。重度の障がいや病気など専門的な福祉サポートが手厚くあるのが特徴で、医師から障害を診断されていたり障害者手帳を持っていたりするお子様が主に通います。ただ特別支援学校は数が限られていて各エリアに必ず1校あるわけではないです。
一方の特別支援学級は、公立の小学校や中学校の中にある学級です。学習指導要領に応じて各学年で学習内容が決まっていますが、通常のクラスでは様々な困り感があり難しいお子様もいます。そういう場合に所属するのが特別支援学級で、通常級にも席があることから、「体育はみんなと一緒に受け、その他の教科は特別支援学級で受ける」といった学び方が可能です。また障がいの診断をされていなくても、各自治体の教育委員会が許可をすれば入ることができる場合もあります。近年では早期から発達障がいなどの診断がおりることもあり、特別支援学級の人数は全国的に増えていて、10年前より約2倍以上の子どもが在籍しています。
|
|
――重度の障害があると特別支援学校、軽度なら特別支援学級というイメージでしょうか。
高橋さん:最近は文部科学省が「子どもは地域で育てる」という方針を打ち出していて、重度の障害があるお子様も「地域の公立小学校に入れたい」と考える親御様もいます。教育委員会が認めれば入れる場合もあるので、その流れは年々強まっていると感じています。本人としては幼稚園や保育園からのお友達と同じ小学校に行きたいということもあるでしょうし、親御様も「公立小学校でたくさんの地域の子どもたちと交流させたい」と願うこともありますから、そうしたニーズが叶うのはお子様たちの選択肢が増えていい傾向だと思います。
重度の障がいがあっても公立小学校の特別支援学級に行けることも
――重度の障害があっても特別支援学級で学ぶためにはどんな手順を踏むのでしょうか。
高橋さん:親御様の願いやお子様の状態などを見て、各自治体の教育委員会が一定のガイドラインのもと許可を出し、各学校の現場で必要な配慮やすり合わせを行うという流れが一般的です。各自治体や学校にもよりますが、まずは就学前健診や別の日で相談や面談を行います。次に教育委員会と学校側でその調整ができるかどうか、親御様が求める配慮が可能かどうかなどをすり合わせていくことになります。
たとえば医療的ケアが必要なお子様が特別支援学級に入るとなると、通常の基準以上に先生を配置する「加配」や、現段階では親御様が一定期間付き添うといった対処が必要になることがあります。こういった細かい課題をクリアしていきます。
就職を重視した高校選びに注意?
――ここまでは小学校と中学校におけるお話を聞いてきましたが、高校以降になるとどうなのでしょうか。
高橋さん:高等部がある特別支援学校は多いので、重度の障害のあるお子様も進路の選択肢が広がっていきます。最近では少子化の背景から、通常の高校の空教室を活用して障害のある子どもが学べる特別支援学校の分教室を作っているケースもあります。他のクラスの生徒とも交流ができるメリットも大きく、個人的にもいい傾向だと思います。
一方で「特別支援学校に通わせたくない」とおっしゃる親御様もいます。というのも特別支援学校の高等部を卒業すると、高卒扱いにはならず、「特別支援学校高等部卒」になることが理由の一つです。就職では実質的に中卒扱いになって不利になるのではと思われるようで、高校は特別支援学校ではなく、普通の公立高校や私立高校に通わせようとする親御様もいます。ただそのお子様に合った配慮や学びができなかったりお友達とうまくいかなかったりして、高校に行きにくくなるという話もあります。
|
|
後編へ続く。
取材、文・AKI 編集・編集部 イラスト・Ponko