日大背任事件　元理事ら2被告が無罪主張　東京地裁初公判

　日本大学付属板橋病院の建て替え計画や医療機器の納入を巡り、日大に不当な支払いをさせて損害を与えたとして、いずれも背任罪に問われた日大元理事の井ノ口忠男（67）、医療法人「錦秀会」（大阪市）元理事長の籔本雅巳（64）両被告は10日に東京地裁で開かれた初公判で、起訴内容を否認した。

　起訴状によると、井ノ口元理事は日大付属板橋病院の建て替えで、評価点を改ざんして東京都内の設計事務所を設計業者として選定。2020年8月上旬、設計事務所が日大から前払い金として受け取った2億2000万円を、籔本元理事長が全株式を保有する会社に不正送金したとされる。

　さらに、2人は別の医療コンサル会社社長（背任罪で有罪確定）と共謀。20年12月〜21年5月、板橋病院への医療機器や電子カルテの納入の取引で、業務実体がない籔本元理事長側の会社2社を介在させ、約2億円上乗せしたリース契約を日大に結ばせたとされる。

　事件に関連して、籔本元理事長は、日大元理事長の田中英寿氏（24年1月死去）にリベート（謝礼）を渡していた。

　田中氏は、日大と取引がある別の業者からも同様に謝礼を受け取っていたが、申告しなかったとして、所得税法違反（過少申告）に問われ、22年4月に有罪判決が確定した。

　日大は13年にわたり理事長を務めた田中氏への権力集中が不祥事の原因と認め、外部から新理事長を選び、新体制を発足させた。【安元久美子】