東日本大震災で犠牲になった宮城県南三陸町の職員の名が刻まれた慰霊碑の除幕式に出席した佐藤仁町長(左)=9日午前、同町 東日本大震災の津波で、最後まで防災対策庁舎に残り避難を呼び掛けるなどして犠牲となった職員の名を刻んだ慰霊碑が9日、宮城県南三陸町の役場敷地内に設置された。発生から間もなく14年。除幕式に出席した遺族は「後世に教訓を伝えていってほしい」と話し、冥福を祈った。
慰霊碑は高さ約1.6メートルの御影石製。職員37人の氏名のほか、「あの日を忘れない」との文字と共に、震災の教訓を伝える文が刻まれている。
町の元職員有志でつくる実行委員会が、高台に移転した役場敷地内に慰霊碑の設置を企画。昨年11月から遺族に文書で意向確認したという。
除幕式には佐藤仁町長や遺族ら約150人が出席。震災当時、副町長だった実行委員長の遠藤健治さん(76)は「願わくば、慰霊碑の設置が安全安心なまちづくりの一助になるといい」と強調した。
教育長だった田生誠二さん=当時(69)=を亡くした妻かち子さん(80)は、慰霊碑の前で静かに手を合わせた。「明るく真面目な人で言うことなしだった」と振り返り、「慰霊碑が形になってほっとした」と話した。
採用1年目だった兄井上翼さん=同(23)=が犠牲となった東京都東村山市の会社員井上彩さん(33)は、「役場敷地内に慰霊碑が設置されてよかった。後世に教訓を伝えていってほしい」と訴え、碑に刻まれた兄の名を見詰めた。
旧防災対策庁舎で亡くなった43人のうち、33人が住民に避難を呼び掛けるなど災害対応に当たっていた職員で、同庁舎以外でも6人の職員が犠牲となった。同町の震災復興祈念公園内には、犠牲者名簿を安置する石碑などと共に、同庁舎も残されており、鉄骨だけの姿で津波の脅威を伝え続けている。

東日本大震災で犠牲になった宮城県南三陸町の職員の名が刻まれた慰霊碑に触れる出席者=9日午前、同町