“松坂二世”は聖地で輝けるか?【白球つれづれ】

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2025年03月10日 17:32  ベースボールキング

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対戦カードが決まった第97回選抜高校野球大会の組み合わせ抽選会(C)Kyodo News
白球つれづれ2025・第10回



 まるで漫画の世界のような見出しがスポーツ紙の1面を飾った。



「東大ボコボコ」。天下の東京大学を野球で「ボコボコ」に粉砕したのは高校球界の雄・横浜高校だ。



 今月7日、東京文京区にある東大グラウンドで注目の一戦? が行われた。大学と高校の練習試合はこれまでも行われてきたが、東京六大学の加盟校が、高校生相手に対戦するのは珍しい。しかも、東大からの提案で“ドリームマッチ”は実現した。結果は7回日没コールドながら13−1で横浜高の圧勝に終わった。



 この話題には、もう一つのおまけもつく。当日は第97回選抜高校野球大会(以下、センバツ)の組み合わせ抽選会が大阪で行われている。



 17回目の出場を決めている横浜からは村田浩明監督と阿部葉太主将が出席、二人は大阪から東京まで新幹線を乗り継ぎ、東大戦の15分前にグラウンドに到着したと言う。しかもその阿部選手が一番打者として出場すると、中越三塁打を皮切りに本塁打を含む3安打4打点の大暴れと言うから、漫画でも描き切れないほど濃密な一日となった。



 3月18日に開幕するセンバツ大会。優勝候補の筆頭に挙げられるのが横浜高だ。昨秋に行われた明治神宮大会高校の部で優勝。新チームになってから無敗の15連勝中だから実力は折り紙付きと言える。



 中でも、話題を呼んでいるのが“松坂二世”と呼ばれる1年生エースの織田翔希選手である。大谷翔平の「翔」に、佐々木朗希の「希」の二文字からなる名前も将来の大エースを予感させる。



 北九州出身ながら、松坂大輔に憧れて横浜高に進学した。中学までは軟式野球で頭角を現し、硬式球を握ったのは高校進学後。それでいて187センチの長身から投げ下ろす速球はすでに150キロをマークしている。カーブ、スライダー、チェンジアップも駆使して、明治神宮大会では明徳義塾高を相手に2安打完封。松坂を擁して全国制覇した渡辺元智元同校監督が「1年時の松坂より上」と目を見張るほどの好素材だ。



 まだ、体が成長途上にあり、本格的なウェートトレを行っていないが、それでいてこの完成度。スピードだけに頼らず、本調子でない時は投球術で「勝てるピッチング」を心掛けるクレバーさも併せ持っている。一学年上の奥村頼人投手と「二枚エース」で臨む聖地・甲子園デビュー。一冬越してどんな成長を見せるのか注目が集まる。



 今大会には、織田以外にも、春連覇を目指す健大高崎高の石垣元気や近畿大会覇者の東洋大姫路高・阪下漣ら優勝候補に好投手が名を連ねている。すでに彼らのもとには12球団はもとより、メジャーのスカウトも視察に現れている。織田のドラフトは来年となるが、将来の球界を背負って立つだろう金の卵たちも要チェックだ。



 今年のセンバツは大阪桐蔭や履正社ら強豪ぞろいの大阪勢が選考外となった。実に1927年以来の珍事。これによって横浜、健大高崎ら関東勢の下馬評が高く「東高西低」と見られている。しかし、21世紀枠で初出場する離島の隠岐高や、創部3年目で甲子園行きを決めた沖縄のエナジックスポーツ高なども話題を集めている。また早稲田実対高松商は春第1回大会決勝戦以来101年ぶりの再戦となる。



 横浜高の初戦は大会第2日第2試合で市和歌山と対戦する。「世代最強右腕」と称される織田がどんな怪物ふりを発揮するのか待ち遠しい。



 開幕予定の18日はメジャリーグのドジャースとカブスが東京で開幕ゲームを行う。NPBの開幕も迫って来る。



 文字通りの球春本番。高校生だって負けてはいられない。97回目の春に新たなドラマが待っている。



文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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