福岡市消防学校の初任科生だった男性(当時26歳)が2024年7月、水難救助訓練中に溺死した事故で、事故原因や再発防止策を検証する調査検討委員会(大神朋子委員長)が10日、最終的な見解をまとめた。調査委は、市は各初任科生の泳力に応じた段階的な訓練方法を検討する必要があったと指摘。水深の浅いプールを活用するなど技量に応じた訓練の実施を求めた。
市消防局などによると、救助訓練は同市西区の市民プール(深さ約3・3メートル)で実施。事故が起きたのは立ち泳ぎの訓練中で、消防学校の初任科生52人が参加した。監視役は水中にダイバー2人、水面に8人、プールサイドに8人の計18人を配置。事前の自己申告や実際の泳ぎの能力から、生徒は5班に分けられていた。
立ち泳ぎの訓練は2回に分けて実施され、他の訓練とは異なり、班分けはせずに52人が一斉に取り組んだ。1回目は全員で「10分未満の間」で泳いだ後、プールサイドにつかまり、約2分間の休憩を取った。再び1〜2分間立ち泳ぎを続け、終了の合図があったところで、ダイバーの1人が沈んでいく生徒に気付いた。水中から引き上げられ、救急搬送されたが、8日後に溺水による低酸素脳症で死亡が確認された。
調査委は、立ち泳ぎは「水難救助を行う上で必要な訓練」との見解で一致した一方で、終了後に報道陣に応じた大神委員長は「かなり特異な泳法」との認識を示した。一斉に泳ぎ始めた当時の状況は「一対一ではなく、大勢(の監視役)が大勢(の生徒)を見た部分が事故を招いた原因かもしれないと感じている」と語った。
一斉に始める立ち泳ぎ訓練は、市消防局で少なくとも30年以上、継続して実施されてきたという。担当者はその目的を「自分の泳力を確認することに加え、付随する考え方として、一斉に泳ぐことで訓練の一体感や、そういう気持ちの醸成を図ることが一つの目的だった」と説明した。
|
|
調査委は他に、安全確保のために必要な「バディー(仲間、相棒)制度」や、人数を絞って泳ぐ入水制限の導入について「十分な検討が行われてこなかった」と指摘。事故当時の監視役は全員が水上安全法の資格を有しておらず「指導員の研修体制が確立されていない」と結論づけた。
調査委は今月中に報告書を取りまとめ、市消防局に提出する予定。市消防学校では例年7月に立ち泳ぎ訓練を実施しており、市は報告を受けて今夏以降の実施方法を検討するとしている。【竹林静】
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 THE MAINICHI NEWSPAPERS. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。