米国とカナダの物流の要衝、アンバサダーブリッジに掲げられた両国国旗=8日、加オンタリオ州ウィンザー(AFP時事) 【ニューヨーク時事】カナダ与党・自由党は9日、辞意を表明したトルドー首相の後任となる新党首にカーニー元カナダ銀行(中央銀行)総裁を選出した。トランプ米大統領が高関税政策を武器に不法移民や合成麻薬の流入阻止を迫り、両国関係は急速に悪化。関税対応が焦点となる中、首相に就くカーニー氏は経済への打撃回避に向けて軟着陸を図れるか手腕が問われる。
貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」で自動車産業を中心にサプライチェーン(供給網)構築が一段と進み、北米の相互依存が深まった。だが、トランプ氏は4日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を発動。その後、USMCAの基準に適合した両国からの輸入品への関税適用を4月2日まで免除することを決めた。
カナダは打ち出した対抗措置のうち、未発動の報復関税をひとまず見送ったが、関税をかけ合う貿易戦争が激化し、経済に悪影響が及ぶ懸念はくすぶったまま。カナダでは対米感情が悪化しており、米国産品の不買運動が起きるなど混乱も広がる。
カーニー氏は政界で経験がなく、対応力は未知数だが、「新首相誕生で関税問題が転換点を迎える」(日系証券エコノミスト)可能性はある。金融畑を歩んできたカーニー氏は、2008年のリーマン・ショックを念頭に「さまざまな状況で交渉し、危機の対処法も知っている」と強調。対米強硬姿勢をちらつかせつつも、トランプ氏との対話に前向きな考えも示す。
高関税政策を巡っては、米景気への配慮からトランプ氏が「大幅に緩和する」(米エコノミスト)との観測も浮上する。ただ、同氏は関税や非関税障壁の高い国・地域に同等の関税を課す「相互関税」を4月2日に導入するとみられ、先行き不透明感は依然として強い。