栃木県・高根沢町、「楽しく脱炭素」推進プロジェクトを始動 - ゼロカーボンシティ実現に向けて

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2025年03月11日 10:10  マイナビニュース

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高根沢町(栃木県塩谷郡)は、ゼロカーボンシティ実現に向け、スタジオスポビーおよびNTT東日本 栃木支店の協力の下、住民と地域が「楽しく脱炭素」に取り組む仕組みとして、スタジオスポビーが開発したエコライフアプリ「SPOBY(スポビー)」を導入。ライフスタイルや行動の変容、健康づくりと脱炭素を気軽に両立させる取り組みを2025年1月14日より開始した。


高根沢町では、2022年5月に「ゼロカーボンシティ」宣言を行い、2024年5月には「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」に賛同し、「デコ活宣言」を行っている。「世界的に気候変動が叫ばれている中、やはり脱炭素、CO2排出量を削減しなければならない」と話すのは、高根沢町 環境課 課長の福田光久氏。栃木県下25市町において、町として「ゼロカーボンシティ」宣言を行ったのは高根沢町が一番最初で、「高根沢はどちらかというと農業が中心。たくさんの米農家の方がいらっしゃる中で、このまま気候変動などが続くと、何十年後かには米が取れなくなるかもしれない」という、特に農業面における危機感が「ゼロカーボンシティ」宣言を行う背景となっている。


そして、「脱炭素」に向けた取り組みを行うにあたり、「脱炭素ビジョン」として町内の現況を調査。高根沢町では、自動車による移動・輸送が多いことや、家庭からの排出量が多いことがわかったという。「『脱炭素』と一言で言っても、なかなか町民の方には伝わりにくいところがある」という福田氏は、いかに行動変容に繋げていくかを検討していく中で、NTT東日本よりエコライフアプリ「SPOBY」の導入提案があったという。

○■「SPOBY」を活用して「楽しく脱炭素」



栃木県内自治体では初の導入となる「SPOBY」は、たとえば生ごみのコンポストやマイボトル、廃食油回収、買い物などの乗り物での移動を徒歩、自転車に変えるといった環境に配慮した行動によって抑制されたCO2排出量を脱炭素量として可視化するアプリ。脱炭素量がポイントに変換され、貯まったポイントは、地域の協力店にて様々なサービスと交換できる仕組みとなっている。



2025年1月からスタートした「楽しく脱炭素」推進プロジェクトは、「町民の方が“ポイ活”として楽しみながら脱炭素に取り組んでいただける」ところが大きな特徴になっていると、高根沢町 環境課 リサイクル係 主任主事の小原真由美氏はアピールする。


導入からおよそ1カ月を経た時点で、「栃木県内で初めての導入ということもあり、皆さんご興味を持たれているようで、想定よりも順調に登録者数が増えている」という小原氏。地域の協力店からも予想以上に良い反応があるそうで「環境に配慮した活動を意識はしているものの、実際にどこから手を付けたらよいかがわからないという方も多く、そういった点では、活動のきっかけとしても最適なのではないか」との見解を示す。



高根沢町に「SPOBY」を紹介するのに先立ち、NTT東日本では、加藤公博町長をはじめ、同町の職員を、地域循環型社会の実証フィールドとして、NTT東日本が東京・調布に展開する「NTTe-city Labo」に招待。幅広い分野のソリューションにおいて、特に環境分野に強い関心を示したことが、「SPOBY」の提案に繋がったという。



「ゼロカーボンシティの実現に向けて、具体的な取り組み方法などをお話をさせていただき、ほかの自治体における取り組み事例など様々なソリューションを紹介させていただきました。その中で、高根沢町の課題解決に最適なソリューションとして『SPOBY』をご採用いただくことになった」と、NTT東日本 栃木支店 ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネスグループ 地域基盤ビジネス担当の肥田渉氏は導入の経緯を説明する。


実際、「SPOBY」の導入が決まるまでに、「たとえば、食品残渣を使って発電するバイオマス発電をはじめ、創エネや再エネなどを含めた様々なお話をさせていただいた」という、NTT東日本 栃木支店 ビジネスイノベーション部 まちづくりコーディネート担当 チーフの藤本幸弘氏。「やはり高根沢町では、創エネや再エネよりも、まずは住民の方の行動変容を促すほうがよい」との結論に達したひとつの理由として、同町が実施するエコファミリー制度「たかねざわエコファミリー」との親和性を挙げる。


「たかねざわエコファミリー」は、5〜10くらいのチェックシートに回答することで、「地球にやさしい暮らし」を実践する家庭を認定する制度とのことで、町民への脱炭素に向けた意識付けや行動変容を促すひとつのきっかけとなっていた。



しかし、「チェックシートを提出していただいたご家庭には、町からちょっとしたプレゼントを差し上げるのですが、すべて郵送で行っていたので、それは本当にエコなのかという疑問があった」という小原氏。そういった問題も、「SPOBY」を使うことで電子化が可能となることから、「事務作業の軽減にも繋がるなど、DX化を意識しながらの最適化にも貢献できる」と藤本氏は自信を覗かせる。



順調に登録者数も増加しており、今後の経過にも注目が集まる「SPOBY」だが、福田氏は「脱炭素を意識している方はある程度いらっしゃると思うのですが、実際に行動している方はそれほど多くない」と現状を分析。「そこを変えていくためにも、行動変容のきっかけになる『SPOBY』を、今後も長く続けていきたい」との意向を示す。



一方で、小原氏は地域の協力店の確保が導入時にもっとも苦労した点だと話し、「今後、いかに増やしていくかが大きな課題になっています」と続ける。


○■「脱炭素」に向けた今後の取り組み



現在、高根沢町では庁舎整備が行われており、2028年には新庁舎の完成も予定されている。「当然、新庁舎は脱炭素を取り入れたものになり、それがシンボルとなって、町民の方への大きなアピールになる」と期待を寄せる福田氏。それまでの期間は、環境保全、省エネルギー、省資源、ごみ減量化およびリサイクルなどに関する情報発信を行う。さらに体験しながら環境問題など学べる同町の学習施設「エコ・ハウスたかねざわ」を活用して、「脱炭素による効果の、見える化、そして見せる化をしてきたい」との意気込みを明かす。


また、「SPOBY」の普及のために、イベントなどを積極的に開催していきたいという小原氏は「環境課だけでやるのではなく、産業課などほかの部署とも協力していきたい」との希望を明かすと、「カーボンニュートラルも脱炭素も町全体の問題なので、ほかの課にも同じような視点を持っていただき、協力していかなければならない」と福田氏も町が一体となった協力体制の必要性を訴える。



肥田氏は「SPOBY」のさらなる展開として、「未来を担う子どもたちに、カーボンニュートラルとは何か、脱炭素とは何かということを知ってもらうための“学び場”的なものを創出できれば」と教育面での取り組みに期待を寄せる。



また、藤本氏は、高根沢町だけにとどまらず、栃木県全体の問題として「我々が通信、インフラ業者として養ってきた知見を利用しながら、カーボンニュートラルを推進していくのと同時に、エネルギー分野だけでなく、教育や防災面でも貢献していきたい」との展望を明かした。



「高根沢は農業を中心に繁栄してきた町なので、今後の気候変動によって作付けなどができなくなるのは非常に大きな問題となりますので、今からみんなで考えながら取り組んでいかなければならない」とあらためて脱炭素の重要性を説く福田氏。一方、小原氏は、「脱炭素というと、何か我慢しなければならないとか、堅苦しいといったイメージを持つ方が多いかもしれませんが、自動車に乗らずにちょっと歩いてみようくらいの気軽な気持ちで取り組んでいただける方が増えると良いなと思っています」と締めくくった。(糸井一臣)

このニュースに関するつぶやき

  • 他に考える事有るんじゃないの?脱炭素の名の下に経済停滞させてちゃ意味無いと思うのだがね。
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