伊藤忠グループのBelongは、「iPhone 16e」の発表に伴い、中古スマートフォンの販売サイト「にこスマ」における「iPhone SE」シリーズの販売動向を発表した。携帯電話市場では、「iPhone SE(第3世代)」の新品の在庫がキャリアのオンラインショップでなくなったり、小型スマホを求める声がSNSで一部見られたりするなど、2025年現在もiPhone SEシリーズの需要があることが分かる。
Appleが2017年に発売した「iPhone 8」をベースにした「iPhone SE(第3世代)」は、4.7型の液晶ディスプレイと、指紋認証のTouch ID一体型のホームボタンを搭載するモデルだ。横幅67.3mmということもあり、2025年現在では小型モデルに分類される。
一方、「iPhone 16e」ではディスプレイが6.1型の有機ELに変更され、顔認証のFace IDを搭載する代わりにTouch IDを兼ねたホームボタンは省かれた。端末のサイズも拡大し、幅は67.3mmから71.5mm、高さは138.4mmから146.7mmへと大きくなり、小型スマホとはいえなくなった。
にこスマが3月6日に発表した販売数ランキングでは、型落ちした「iPhone SE(第2世代)」が15カ月連続で1位、AQUOS sense3が前月からさらに順位を上げて2位にランクイン。iPhone 16eの発表直後からiPhone SE(第3世代)やiPhone 13/13 miniの取引数が急増し、発表前後の1週間(2月13日〜19日、2月20日〜26日)で比較するとiPhone SE(第3世代)の128GBモデルは4倍以上に増加した。
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2024年9月に発表の中古スマホ利用実態調査では、中古スマートフォンをメイン端末として利用する10〜60代以上の男女552人に対して、利用しているスマートフォンの機種を質問したところ、iPhone SE(第2世代)の利用率が最も高かった。iPhone SEはなぜここまで人気なのか。iPhone 16eの発売でどのような影響があるのか。Belong コンシューマ事業部門長の大野正稔氏に聞いた。
●iPhone SE人気の陰に小型スマホの存在 中古SEを手にするのはどんな人か
大野氏はiPhone SEの人気の陰には、「iPhone 12 miniとiPhone 13 miniが中古市場で一定の人気がある」ことを挙げる。「iPhone 12 mini」「iPhone 13 mini」は、iPhone SEより一回りコンパクトなサイズで、幅×高さは64.2×131.5mmで、奥行きは12 miniが7.4mm、13 miniが7.65mmだ。
iPhoneのminiは、12と13のシリーズでしか存在しておらず、「iPhone 14」シリーズ以降、Appleのラインアップから外れている。大野氏は「iPhone 13 miniを購入した方が増えたというニュースを拝見したことがあります」とし、「そういった流れと今回も同じようなことが起きていると感じている」と明かす。
iPhone SEについて、大野氏は「ホームボタンが付いており、2025年現在となってはユニークな端末」と振り返り、「ホームボタンがあって、コンパクトなサイズ感で、手頃な価格」と評価。その新品がなくなったことも、「中古市場でiPhone SE人気が高まった要因になっている」と大野氏は分析する。
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中古のiPhone SEが行き着く先は、高機能かつ多機能のハイエンドiPhoneを求めるユーザーではなく、スマートフォンの初心者や高齢者だとみる。「自身のメインスマホとして購入する方もいますが、お子さん用、スマートフォンデビューを果たす祖父母向けに買う方もいます」と大野氏。iPhone SEのサイズ感と使い勝手が、そうした人からの支持を得ているようだ。
さらに、にこスマへの訪問者数と販売数は、「iPhone 16eが発表された週と前週を比較すると、およそ2倍に増えている」そうだ。iPhone SE(第3世代)の方が若干伸びとしては大きいが、iPhone SE(第2世代)とiPhone SE(第3世代)ともにトラフィックが伸びています」としている。これは「期待されていたホームボタン付きのiPhone SE(第4世代)が出ず、結果としてiPhone SEの新品在庫がなくなり、なくなく中古に手を出す人が増えた」(大野氏)のが要因だという。
このSE人気は、iPhone 16eの登場を契機に湧き出たわけではなく、「直近1年ぐらいは続いています」と大野氏は言う。
●中古iPhone SEはどんな用途で使われているのか OSサポートの打ち切りも懸念
実際、iPhone SEはどのような用途で使われているのだろうか。大野氏は「LINEアカウント用途、Uber Eatsなどの副業用途」を挙げた上で、「メイン機のようにたくさんの動画やアプリを入れる必要がないため、(これらの用途であれば)64GBで十分だとおっしゃる方は多いかと思います」と話す。
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「実際にアンケートで調査を行ったところ、メイン機の方がもちろん多いですが、サブ機になるとiPhone SE(第2世代)がより多く加わるイメージです」と大野氏は明かす。ただ、iPhone SEは第2世代も第3世代も人気のあるモデルだが、第3世代は「5G対応を果たしたモデルということもあり、長期利用を期待し、メインスマホとして、2万円前後少し高く支払って購入されている印象」(大野氏)を持っているようだ。
ベースモデルのiPhone 8、7はどうだろうか。「修理サポートやOSのサポートが終了していることから、販売ランキングではiPhone SEよりは下位になっている。2023年の新しいiOS「iOS 17」では、ついにiPhone 8だけでなくFace ID対応の「iPhone X」がアップデートの対象外となった。
「このタイミングからiPhone SEが上位に切り替わった」(大野氏)という。ただ、「iPhone SE(第2世代)もOSのサポートがAppleによって打ち切られるタイミングからiPhone SE(第3世代)への世代交代が始まると思います」と大野氏は補足する。
●iPhone 16eはSEの代替えにならない iPhoneからAndroidに切り替える可能性もなくはない
iPhone 16eもiPhone 8やiPhone SEのように価格が下がれば、中古市場における人気iPhoneのポジションを取れる可能性はあるが、iPhone 16eが「コンパクトさとホームボタンの代替えモデルではない」ことを理由に「しばらくはiPhone SE(第3世代)に対するニーズの高まりは続くのではないか」と大野氏は予測する。
とはいえ、にこスマが2025年3月6日に発表した販売数ランキングでは、iPhone 16eとサイズ感の近いiPhone 13が4位、iPhone 12が6位にランクインしており、大野氏もiPhone SEの在庫が次第になくなってくると、「iPhone 13の低容量が(人気モデルの)メインになってくる」と考える。
さらに、それを契機に「iPhoneからAndroidに切り替える可能性もなくはないと思います」とした上で、「『Google Pixel a』シリーズは2〜3年たてば、iPhone SE(第2世代)と同じ2〜3万円前後に落ち着いてくるケースもあり得ます」とする。「実際、『Xperia 5』の初期のモデルやOPPOの『Reno』シリーズ、『AQUOS R2/R3』はランキングに少しずつ入ってきている認識です」と大野氏は話す。
ただ、ブランド力では圧倒的にiPhoneが強く、「そのまま(リセールバリューに)反映されてしまう部分はある」というが、iPhone SEと同じ価格帯でもスペックとしては少しいいものが買えることがあるため、そういったところ(価格面とスペック面)で検討いただく余地はあると思う」と付け加える。
ブランド力は当然ながら買い取りの金額にも反映される。大野氏は「中古のiPhone SE(第2世代/第3世代)が枯渇すると、取引金額が上がり、買い取り金額も合わせて上がっていく可能性はあります」と、将来の買い取り額の変動を予測したが、具体的にどれくらいの金額になるかについては「今まさに試算中」と述べるにとどめた。
●iPhone SEの人気が高まって枯渇しないようにするためには
iPhone SE人気で懸念されるのがiPhone SEの在庫だ。中古市場でiPhone SEの人気が高まると、在庫が足りなくなる可能性がある。仮に、iPhone SEが買い取りに出されず、家庭に眠り続けたままだと、iPhone SEは中古市場には出回らず枯渇してしまう。Belongでは、消費者がスマートフォンを売りに出す際の抵抗を払拭(ふっしょく)すべく、パートナー各社とのさまざまな取り組みを実施している。
2022年9月には、Amazon.co.jpのスマートフォン商品詳細ページや販売ページからにこスマ買い取りの申請サイトへ直接遷移できるようにした。2023年9月には、メルカリと提携し、新宿マルイ店でスマートフォンの出品サポートを開始。また、「あんしんデータ消去」サービスを導入し、メルカリユーザーがスマートフォンを売却する際に、Belongによるデータ消去を依頼できるようにした。2024年11月には、Back Marketとの協業を発表し、Back Marketのサイト上で中古デバイスの事前査定や買い取りの手続きを行えるようにした。
これらの取り組みによってスマートフォンを買い取りに出す心理的障壁が下がり、中古市場に出回る端末が増えれば、iPhone SEの流通量も増えることが期待される。
今回のインタビュー取材では、iPhone 16eが登場したことに伴い、iPhone SEの人気がさらに高まる一方で、iPhone SEの中でも(第2世代から第3世代への)世代交代が起きる可能性、さらには、安価なAndroidスマートフォンや型落ちしたハイエンドモデルが中古市場で花開く可能性があることが分かった。人気のiPhone SEが今後も多くの人の手に渡るようにするというBelongの動向にも注目したい。
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