Dynabookの新たな事業戦略のキーとなる眼鏡型XRグラス「dynaEdge XR1」を試してきた

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2025年03月11日 14:31  ITmedia PC USER

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 Dynabookは3月10日、生成AIやXRグラスを軸とする新たな事業戦略を発表した。toB向けに業務プロセスの効率化や売り上げ拡大につながるソリューションとして、生成AIを安全に活用できる環境を提供していくという。発表の目玉となったXRグラスの実機を体験する機会も得たので、その模様を紹介しよう。


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●オフィス領域でのソリューション戦略


 Dynabookの熊谷明氏(執行役員 ソリューション事業本部長)は、事業戦略の基本方針として「皆さまが安心して安全な生成AIを活用して頂ける環境を提供することだ」と話す。その柱となるのが「AI PCとXRグラス」「オンプレミス生成AI」「PC LCM(ライフサイクルマネジメント)」だという。


リモートワークを効率化するXRグラス


 NTTと共同開発したというXRグラス「dynaEdge XR1」(ダイナエッジ エックスアールワン)は、PCの画面を拡張し、3画面マルチディスプレイを実現するものだ。


 「新幹線、カフェなど周囲に人がいるような環境でものぞき見されることなく作業を続行できる。狭い空間でも大画面で作業できるので、眼の前の空間がワークスペースになる」(熊谷氏)


 詳細は後述する。


オンプレで使える生成AI環境


  Dynabookは、ローカルでAIを動作させるAIワークステーションやAIサーバの設置といったオンプレミス生成AI環境をソリューションとして提供していく。導入した企業は、クラウドにアップロードしづらい機密情報を活用できる生成AIアプリを作成できるようになる想定で、アプリ開発の伴走支援も手掛ける。


 「日々のワークフローをステップ・バイ・ステップで自動化するアプリ、作業手順や社内規定などについての質問に自動で回答するチャットbotなどをローコードで作成できるようになる。とはいえ、導入したからすぐに作れるというものでもないので、アプリ開発の研修プログラムも用意している」(熊谷氏)


PC LCM(ライフサイクルマネジメント)の運用自動化


 誰がどこで、どのような状態のPCを使っているのか。バッテリーの早期劣化につながるような使い方をしているユーザーがいないかなど、使用状況を可視化したり通知したりして、LCM運用を自動化するソリューションが「PCアセットモニタリングサービス」だ。


 「PCメーカーだからこそ、蓄積したデータを分析して提供できる。これにより、不意の故障や予想外のバッテリー劣化といった事態を防げる。PCライフサイクルを代行するLCMセンターを既存の検見川(千葉県千葉市花見川区)だけでなく、西日本の南茨木(大阪府茨木市)にも設け、7月からの稼働で受け入れ台数を1.5倍に拡大する」(熊谷氏)


●オフィス以外の領域での事業戦略も


 オフィス以外の事業領域にも、AIを活用した支援を提供する。


 その1つが「ARグラス+現場DX」だ。Dynabookが披露したdynaEdge XR1は、眉間の部分にRGBカメラがあり、ユーザーが顔を向けている先にあるものを認識する。また、映像の表示領域であるレンズの上半分も含め、現実空間が透けて見えるので、工場や配送センターなどで部品や商品を間違いなくピッキングするのに役立つ。さらに装着者が見ているものを遠隔地から確認しながら指示を出したり、手順書を横に表示させたりといったこともできる。


 他にはテレマティクスによる「AI安全運転支援」だ。DynabookではこれまでtoB向けにドライブレコーダーを提供してきた。


 単に録画を行うだけでなく、通信機能を活用してNFCによる運転免許証の認証などを行えたが、今後は車両の位置や運転情報などをクラウド上でモニタリングできる「車両運行管理ポータル」や、単体で稼働するエッジAIで危険運転を検知して通知するような仕組みも提供する。


●DynabookのXRグラス「dynaEdge XR1」


 オフィス環境と新事業領域、どちらのソリューション事業戦略でも重要な位置を占めているのが、発表したばかりのdynaEdge XR1(以下、XR1)だ。


 インタフェースにはUSB Type-Cが備わっており、対応するPCと接続してディスプレイを拡張できる。同時発表したXRコントローラー「dynaEdge C1」(ダイナエッジ シーワン。以下、C1)に接続すれば、視界に情報を表示するような機能を単体でも利用できる。


 XR1は、一般的なXRグラスと異なり、光学モジュールが透過型だ。そのため、視界にデジタル情報を重ねて表示できる。


 レンズとレンズの間(眉間部分)には複数のカメラやセンサーが搭載されており、将来はモーショントラッキングに対応するという。


 ビームフォーミングマイクやステレオスピーカーも備わっており、Bluetooth接続したスマートフォンを介した通話も行える。AIに音声で質問するといった使い方も想定する。


 光学モジュールの解像度は片目1920×1080ピクセル、視野角は45度、輝度は最大1000ニトだ。加速度センサー、ジャイロセンサー、コンパスも内蔵している。


 製品には視力矯正のためのインサートレンズ用フレーム、高さ調整のためのノーズパッドが付属する。重量は約89gだ。


 C1は、操作用のボタンとタッチパッドを備えている。加速度センサーとジャイロセンサーも内蔵しており、ボタンだけでなくモーショントラッキングによりカーソルを移動させて操作できる。


 XR1とはUSB Type-Cケーブルで接続する。XR1のバッテリーも兼ねているが、C1を電源に接続すれば、バッテリー残量を気にせず使い続けられる。


 Dynabookの小川岳弘氏(ニューコンセプトコンピューティング統括部 NCCソリューション戦略部部長)は、C1を接続するだけで実現するAIアシスト機能について解説した。


 カメラ機能により、見えている風景をそのまま撮影すること、遠くて見づらい文字などを拡大して表示するといったことも可能で、「身につけられるAIコンピューティングで、生活をよりしやすくなるよう支援するソリューションとなっている」と小川氏は説明した。


 専用アプリケーション「dynaEdge XRワークスペース」をインストールしたPCと接続することで最大3画面の仮想デスクトップをグラス内に表示できるので、セキュリティを確保しつつ新しいワークスタイルを実現できる。


 「XR1だけではできることが限られるが、パーソルクロステクノロジーなどソリューション開発パートナーと協業することで、XR技術とAI技術で新たな未来のソリューションを作り出していきたい」と、小川氏は締めくくった。


●XR1の使用感は?


 会場には、各機能を試すための体験コーナーが設けられていた。例えば、XR1を装着して、大型ディスプレイに表示されているマーライオンに顔を向けると、ビューサーチ機能が働き、マーライオンについて解説するテキストが表示された。


 英文がびっしり印刷されている紙をC1を利用して撮影し、しばらく待つと全体の翻訳を見たり、翻訳から作成した要約を見たりできるドキュメント要約機能、取扱説明書に図とともに記載されているロシア語を、元のテキストと重ねて自国語のテキストを表示するビジュアル翻訳機能は、スマートフォンをかざす動作をするより自然だと感じた。


 エピソテックが提供する「動画・AR手順書システム」では、透過型光学モジュールのメリットをいかんなく発揮している。工場などで機械の操作に不慣れでも、現実空間の機械を見ながら操作手順を見ることができる。


 なお、XR1とC1の受注は既に始まっており、出荷は2025年の春ごろに始めるという。価格はオープンだ。Dynabookは、提供済みの片目レンズARデバイス「インテリジェントビューア AR100」を導入している企業への買い替えを提案する他、新規企業からの引き合いも期待しているという。XR1、C1共に単体販売も可能となっている。



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