羽生結弦さん、震災14年「幸せの輪が日本中、世界中に広まってくれたら」鎮魂と再生の地で祈り

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2025年03月11日 14:46  日刊スポーツ

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日刊スポーツ

7日、演技する羽生結弦さん(撮影・鈴木みどり)

3月11日午後2時46分、東日本大震災の発生から14年が経過した。フィギュアスケート男子の冬季オリンピック(五輪)2連覇王者で、自身も出身の仙台市で自宅が全壊判定を受け、避難所生活を送った羽生結弦さん(30)は、今年も座長公演「notte stellata」を3年連続で開催し「春よ、来い」を舞った。


この1年も被災地に寄り添い、昨年9月は能登半島地震のチャリティー演技会も実施。約4400万円の義援金を届け、同10月にはアイスリンク仙台への寄付額が累計1億円を超えた。


今月7日から3日間の公演は、震災後、宮城県最大の遺体安置所となった利府町のセキスイハイムスーパーアリーナで、狂言師の野村萬斎(58)と「鎮魂」「再生」の祈りを込めて「MANSAIボレロ」で初共演。映画「陰陽師(おんみょうじ)」さながらの、安倍晴明と式神として誕生10年になる「SEIMEI」を昇華させた。【木下淳】


<羽生さんが3日間公演で発信した主なメッセージ>


▼初日 このノッテ・ステラータという言葉には「満天の星」という意味があります。僕が2011年3月11日、いろんなものを、皆さんがいろんなものをなくして壊れてしまった日に、見上げた夜空がとてもキレイで。


別にその星たちから希望をもらったとか、そんな簡単なことは言えないんですが、何となく、とてもキレイだったなという記憶が、僕の中ではすごくすごく大切な思い出になっています。


そんな小っちゃくて、はかなくて、でも何か輝いて見える、そんな星たちに、僕たちここにいるスケーターが1人1人輝きながら、皆さんにとっての星になれるよう演技していきたいと思います。


時に寂しく、時につらく、いろんなことを思い出して悲しくなってしまうことも、あるかもしれません。ただ僕たちは、ここにいて、なくなったものも、今、生きているものも、全てに対して、魂から祈りを込めて滑らせていただきます。どうか今日は最後までよろしくお願いいたします。


みんな3年目のスケーターもたくさんいて、ノッテ・ステラータというショーの意味を深く深く感じながら、思いを込めてリハーサルからずっと滑ってくれました。そんなスケーター、萬斎さんにも改めて拍手をお願いします。


東北人、宮城県民、仙台人としては、3月11日という日が近づけば近づくほどに、何か思い出してしまうことや、悲しい気持ちだとか、そういうものはあります。みなさんそれぞれ3・11というものに対して、故郷から離れてつらい思いをしていたという人もいたり、また、全然関係なくても遠くから見ていて痛い思いをした人もいたと思います。


どんな方々の3・11でも大切に大切にしていただけるとうれしいです。まだまだ苦しんでいる人もいるので、どうか忘れないで、ちょっとでもこれがきっかけとなって支援していただけたら、本当に本当にうれしいです。3月11日のみならず、能登半島、大雪とか、被害に遭ったところがたくさんあります。どんな災害でもいいので、ちょっとでも皆さん、ご支援していただけたら本当に本当にうれしいなと思います。


▼2日目 3・11が近づけば近づくほど、たくさん、つらい思い出や悲しい記憶に出会います。そしてまた、大船渡や能登地方や、本当にいつ起こるか分からない災害に対して、今、つらい思いをされている方々に対して、僕たちはスケートでしかないけれど、何とかちょっとでも希望となれるように、その時のことをちょっとでも忘れられるように、キレイだなと思ってもらえるように、祈り続けます。


ということで、ノッテ・ステラータ2日目、いかがでしたでしょうか。ありがとうございました。まだまだ、こうやって今、たくさんみんなで楽しいこと、幸せなことをたくさんたくさん、みんなで分かち合えたと思いますが、まだまだ苦しい思いをされているかたも、もちろんこの中にもいらっしゃいます。どうか、ちょっとでもいいので、思い出すきっかけだったり、こんな楽しい記憶、幸せな記憶を、今、苦しんでいる方々にも共有できるくらい、たくさんたくさん幸せになって、みんなの幸せの輪が日本中、世界中に広まっていってくれたらうれしいなと、キレイごとのようですが思っております。


僕自身、3・11というものは正直、もう14年近くも前になってしまって、昨日のように思い出せるような気もするし、本当に14年もたってしまったんだな、と記憶が薄れていってしまっているような、何か震災の後の世界に適応してしまっているような、そんな気もします。


能登の地震の後、そして大雨の後、なかなか、元いた時間を懐かしんだり、元いた時間に戻りたいとか、なかなか今の環境に対して苦しい思いをされている方も、心が折れてしまいそうな方もいらっしゃると思います。


どうか、それでも何とか生きて、真っすぐ前を向いて、みんなの力に頼って進んでいれば、きっときっとこうやってまた幸せな日が、幸せを共有できるような日がやってくるんだ、と僕は震災の後、こうやって今幸せだからこそ、改めて思えています。


どうか皆さんのつらい記憶、皆さんのしんどい今、それを楽しんでとは言わないですけど、受け入れて、どうかその先にある、きっときっとその先にある幸せを楽しみに待っていてください。これからも僕たちはそんな皆さんにとっての希望の星になれるよう、きっかけになれるよう、頑張ります。今日は本当にありがとうございました。


▼3日目 みんな生きていると思える幸せが共有できたので、本当に何も言うことはございません。僕から何かを言ってしまうと蛇足になりそうなので、早々に切りますが(笑い)。何より今回(MANSAI)ボレロを含め、1人1人のプログラム、そして萬斎さんとのコラボレーション含めて、全てが祈りと再生であったり、創造であったり、何かここの地から、ここが1度壊れてしまったような、止まってしまったような土地だからこそ、よりいっそう、ここからまた改めて復活していくような、再生していくような、そんな祈りを込めて滑っていきました。


どうか皆さんにとって、ちょっとでも今日という日が希望となりますように。そしてまた会える日を楽しみにしていただくことが、また皆さんにとっての希望となるように、願っております。本当に今日はありがとうございました。

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